フォールズ『エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト・パート2』Interview

現代英国ライヴ・バンドの最高峰と言われる実力を今年のサマソニでも見せつけたフォールズにインタヴュー!!

今年3月にリリースされたアルバム『エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト・パート1』の続編となる『エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト・パート2』を発表したフォールズ。このふたつのアルバムは、共通のテーマ、アートワーク、タイトルをもつ“対”となる作品であり、『パート1』はすでに欧米のメディアで「レディオヘッドの『OKコンピューター』を継承する作品」「モダン・オルタナティヴ・ロックを最高の形で象徴するバンド」と、今年度最重要アルバムのひとつとして大絶賛を浴び、彼らのキャリア最高傑作として確固たる評価を得ています。より強力なリフが全面に押し出され、洗練されたビートと激しいリズムとなった『パート2』に関して、フロントマンのヤニス・フィリッパケス(Vo / G)にインタヴューを敢行! 来年3月の来日公演についても語ってくれました。

 

── パート1とパート2は同時期に録音され、2枚に振り分けられたと聞きました。サブスクリプションサービスが普及した現在では収録分数や曲数に縛られることはありません。それでもあえて2枚に分けて、なおかつリリースの時期をずらしたのはどうしてでしょうか?

 

確かにサブスクリプションだったらあまり縛られないんだけど、制作しているときは、サブスクリプションを念頭に作ってはおらず、とにかくあふれるアイディアをどんどん形にしていったら、どうしても残したい曲が20曲仕上がっていて。不思議と各々の曲がひとつのアルバムの中での立ち位置があるような気がしたんだ。例えば、この曲はどうしてもアルバムの〆の曲にしたい、と思う曲が2曲あったりね。同じアルバムで存在させたい曲、させたくない曲など考えていったら、2枚出すのが自然だったんだ。リリースをずらすことによって、聴く人が量に圧倒されずに楽しんでほしかった。テレビドラマのシーズン2を待つようにね。また、ツアーする中で、ライヴにおいてもPart 1とPart 2があるのは新しい発想だったし、それもあって時期をずらしたんだ。今回はそういう理由だけど、今のサブスクリプション時代は、同時に多くの楽曲をどんどん出せるし、アートワークなどのクリエイティヴを発表できる場が増えてアーティストにとってもいい時代になったと感じているよ。

 

── 聴き手にとっては非常にイマジネイティヴな作品になったと思います。パート1を聴いて、あれこれと思いを巡らし、パート2の展開を想像するというように。それはあなたたちの狙いだったのでしょうか?

 

そう言ってもらえるのが一番うれしいね。もちろん、その意図でリリースしたんだ。画面のハーフスクリーンを見せられて、やっとパート2でフルスクリーンを観るような感じかな。

 

 

── そもそもこの2作の壮大なテーマはどこから生まれてきたものなのでしょうか? 直接的、直接的ではないにしろ、あなたたちにの音楽に影響を与えている映画や本、アートはあったのでしょうか?

 

具体的に、すぐに出てくる作品っていうのはないけど、映画も本もアートもかなりの量をインプットをしているので、自ずと何らかの形でアウトプットに影響しているんじゃないかな。また、この作品に関しては、今の時代の空気、特に乗り越えなくてはならないこの時代特有のチャレンジ─環境問題、社会問題など─に対しての意識が大きかった。でも、テーマや歌詞をみんなで議論しながら作っていったわけではない。歌詞が仕上がったら、それを各国に散らばっているメンバーに見てもらってそこからアイディアを膨らませていくことはもちろんしたけど、歌詞は結構パーソナルなものなんだ。それに対してみんなで話し合うことはあまりないしね。ただ、テーマが見えてきたとき、みんな共感してどんどん楽曲のアイディアを出し合ったよ。

 

── 一方、制作中にベースのウォルターが脱退しました。彼の替わりを迎えずにあなたとエドウィンが分担したそうですが、新たなベーシストを待つのではなく、そのまま続行して録音するという判断はどのようにして下されたのでしょうか? 自分たちが弾いてみて、新たな発見はありましたか?

 

この時期に新しいメンバーを入れるという発想がまずなかった。ひとりのメンバーがいなくなってしまうことは、ある種バンド危機といえるんだけど、それが制作面においては実はよかったんだ。まず、危機を乗り越えるために各々がより強いエネルギーで制作に集中した。みんなが同じ目的に向かって突き進むことが大切な時期だとみな分かっていたから。そして今までの方法をがらりと変えようという気になった。その意識こそが、我々にとっては新しい境地となったね。俺がベースラインを色々考えるというのも新しかったし、コンピューターに打ち込む、という作業も初めてやってみた。今まで同じ部屋で5人でやっていた作業を、バラバラの環境でやってみるということも試みた。5人の意見が4人になるだけでも、構造上に大きな違いが出てくるんだ。

 

 

── これはパート1用の曲、これはパート2用と録音前に明確な線引きがあったのでしょうか? またパート1用の曲を一気に録音してから、パート2に取り掛かったのか。それともバラバラに録っていって、できたものをパート1とパート2に振り分けていったのでしょうか?

 

後者だね、楽曲がある程度あがってから2枚にしようと思ったし、先ほども言ったけど楽曲が主張してくるゆえに家を分けた感じだ。出来上がってみたら同じDNAを持つ楽曲同士を合わせるのが自然に感じて。音楽的にいえばよりダンスなものと、よりロック色が強いものと。前のアルバム制作の時は、アイディアベースで終わっていたもの、あるところまで進めたけど終わりを見なかった曲がたくさんあったけど、今回は意図的に“いいアイディア、いいベースができたらフィニッシュラインまで持っていってみよう”というのがあったんだ。でも単に多くの曲を仕上げたいという気持ちからではなく、とことん向き合う作業をやってみたかった。結果、本当に残したいと思える20曲に出会ったよ。

 

── パート1とパート2の曲は互いに性格上の違いがあるように思います。絶望と希望というように。そうした違いは録音している時のあなたたちの気分にも作用したのではないでしょうか?

 

そうだね、録音している時というよりは制作途中ではそのときの気持ちに大きく影響があったかも。また、その逆もね。その気分だから、その楽曲ができるものだし。同時に、両アルバム通して一つのテーマが入り組んでいて、ぱっきりと分けたつもりではないんだ。

 

── パート1、パート2ともに曲に砂漠が出てきます。荒涼とした光景は聴き手にわかりやすいヴィジョンを与えるのと同時に、いくつかのメタファーにもなりうると思ったのですがいかがでしょう?

 

この曲はジミーが書いたんだけど、意図としては映画のオープニングのような存在にしたかった。荒野の砂漠、というイメージがアルバムの導入にはぴったりだったんだ。特にPart 2のオープニング曲は、前のアルバムの終わりが“炎”だったので、その炎が燃え尽きた後の荒涼としたイメージを最初に持ってきたかった。砂漠というのはすっと映像的なイメージが湧きやすいし、そのイメージが我々のテーマに沿っていたんだ。

 

 

── 今、地球温暖化やBrexitなど、私たちの周りでは解決しなくてはいけない問題が多々あります。この2作はあなたたちなりの考えの表明なのか、それともそうした時代背景によって自然と生み出されたものなのか、どちらでしょうか?

両方だと思う。このアルバムは時代が生み出したアルバムとも言える。政治的に見ても激動の時代で、環境問題をはじめ将来を不安を抱くことが多い。その中で諦めない、うち破くという強い意志を持つ必要性をテーマにした。この作品において影響を直接的に受けたというんじゃないけど、大好きで一番よく聴いたのはザ・スマッシング・パンプキンズの『メロンコリーそして終りのない悲しみ』とナイン・インチ・ネイルズの『ザ・フラジャイル』かな。

 

──来年3月には来日公演も控えています。この2作を聴き終えたあとではイメージする映像や画像と共に完全再現を望みたいところですが、どのようなライヴになりそうでしょうか?

 

また日本でライヴができることがとにかくうれしい。今まさにヴィジュアルをどうするか相談しているところなんだ。期待に応えたいね。サマソニとはもちろん違うセットになるし、よりよいライブになることを目指してがんばろうと思う。また会えることを楽しみにしているよ!

 

Photo : Alex Knowles

 

■Disc info

 

フォールズ
『エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト・パート2』
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
Now on Sale

 

 

フォールズ
『エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト・パート1』
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
Now on Sale

 

 

■Live info
Foals Japan Tour 2020

 

2020年3月3日(火) 愛知・Nagoya CLUB QUATTRO OPEN 18:30 / START 19:30
2020年3月4日(水) 大阪・BIGCAT OPEN 18:30 / START 19:30
2020年3月5日(木) 東京・新木場 STUDIO COAST OPEN 18:30 / START 19:30

 

■Link
https://www.sonymusic.co.jp/artist/foals/

 

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