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三井記念美術館「ティーカップ・メリーゴーラウンド」─ミントンからスージー・クーパーまで英国ティーウェアの名品がヨーロッパ陶磁展に登場
英国の名窯ミントン(Minton)、ロイヤル・ドルトン(Royal Doulton)、ウエッジウッド(Wedgwood)、スージー・クーパー(Susie Cooper)などの茶器・コーヒー器を含むヨーロッパ陶磁展『岐阜県現代陶芸美術館コレクション ティーカップ・メリーゴーラウンド ヨーロッパ陶磁にみるモダンデザイン100年』が、4月18日(土)から6月21日(日)まで東京・日本橋の三井記念美術館で開催。19世紀半ばから約100年間にわたるモダンデザインの系譜を、ティーカップを軸に紹介します。
英国陶磁と紅茶文化──産業革命が生んだ革新
今回の特別展『ティーカップ・メリーゴーラウンド』は、岐阜県現代陶芸美術館(MoMCA)のコレクションより選りすぐった西洋各国の茶器・コーヒー器を一堂に公開するものです。なかでも英国パートは、紅茶文化と陶磁技術の革新が不可分に結びついてきた英国陶磁史を俯瞰できる内容として注目されます。
産業革命の発祥地である英国では、他のヨーロッパ諸国と異なり、磁器窯はすべて民間によるものでした。硬質磁器の原料となるカオリンが国内で採れなかったことが、逆に技術革新を促し、動物の骨灰を配合したボーン・チャイナという独自素材が生み出されました。銅版転写などの大量生産技術とともに、上流階級だけでなく中流階級へも茶器が広く普及していった背景には、こうした英国ならではの産業史があります。
また、植民地インドでの茶葉生産の成功が喫茶習慣をさらに押し広げたことも、英国の茶器需要を後押ししました。王室御用達の栄誉を受けた窯のなかには「ロイヤル」を冠するものがありますが、これはあくまで名誉称号であり、大陸の王立窯とは性格が異なります。こうした背景を知ることで、展示された茶器一点一点がより深く味わえます。
注目の英国展示作品──ミントン、ロイヤル・ドルトン、スージー・クーパー
英国セクションでは、ロイヤル・ウースター、ウエッジウッド、ミントン、ロイヤル・ドルトン、ムーアクロフト、スージー・クーパーの6窯による茶器・コーヒー器を中心に紹介されます。時代は19世紀後半から20世紀半ばにかけて、英国デザインの多彩な展開を示す名品が揃います。

ミントン/クリストファー・ドレッサー(デザイン)福寿字文茶壺 1870年頃 岐阜県現代陶芸美術館
なかでも注目は、デザイナーの名を冠した作品群です。ミントンのクリストファー・ドレッサー(デザイン)による「福寿字文茶壺」(1870年頃)は、東洋の文字意匠を巧みに取り込んだジャポニスムの好例で、当時の英国デザイナーが日本美術からいかに刺激を受けていたかを物語ります。

スージー・クーパー 花文コーヒーセット「ドレスデン・スプレイ」1935年頃 岐阜県現代陶芸美術館
一方、スージー・クーパーの「花文コーヒーセット《ドレスデン・スプレイ》」(1935年頃)は、アール・デコの洗練と家庭的な温かさを兼ね備え、当時の中流家庭の食卓文化を今に伝えます。

ロイヤル・ドルトン 狐文コーヒーセット 1950年代 岐阜県現代陶芸美術館
ロイヤル・ドルトンの「狐文コーヒーセット」(1950年代)は、英国の乗馬・狩猟文化を意匠に落とし込んだ作品で、英国らしいユーモアと格式が同居しています。

ロイヤル・ウースター 花文ティーポット 1873年 岐阜県現代陶芸美術館
ロイヤル・ウースターの「花文ティーポット」(1873年)とあわせて、ヴィクトリア朝から20世紀にかけての英国陶磁デザインの変遷を体感できます。
その他のヨーロッパ各国の展示
英国に加え、ドイツ(マイセン、KPMベルリン、バウハウス陶器工房)、フランス(セーヴル、エミール・ガレ)、オランダ(ローゼンブルフ)、デンマーク(ロイヤル・コペンハーゲン)、フィンランド(アラビア)、旧ソヴィエト連邦の各窯による作品も展示されます。ヨーロッパ全域の陶磁デザインの流れを俯瞰できる、スケールの大きな展覧会です。
開催概要と土曜講座——専門家解説で理解を深める
会期中には岐阜県現代陶芸美術館の学芸員による土曜講座も予定されています。展覧会をより深く楽しみたい方は、あわせてご参加を検討してみてください。
『岐阜県現代陶芸美術館コレクション ティーカップ・メリーゴーラウンド ヨーロッパ陶磁にみるモダンデザイン100年』
- 会場
- 三井記念美術館(東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階)
- 会期・時間
- 4月18日(土)~6月21日(日)10時~17時(入館は16時30分まで)
- 休館日
- 月曜日(4月27日・5月4日は開館)
- 入館料
- 一般 1,500円/大学・高校生 1,000円/中学生以下 無料
※70歳以上 1,200円(要証明)/団体(20名以上)・リピーター割引あり
※障害者手帳をご提示の方とその介護者1名は無料(ミライロIDも可)
土曜講座
5月16日(土)には、三井記念美術館レクチャールームにて、岐阜県現代陶芸美術館学芸員の立花昭氏による土曜講座「西洋陶磁のモダンデザイン」が開催。陶磁器に関心のある方にとって特に充実した内容となりそうです。参加には事前申し込みが必要ですので、詳細および申し込み方法は三井記念美術館公式サイトをご確認ください。
英国紅茶文化ファン必見——日本橋で味わうボーン・チャイナの世界
英国の紅茶文化に親しむ方にとって、今回の展覧会は単なる美術鑑賞を超えた体験になりえます。日常の紅茶タイムで手にするカップやポットが、いかなる産業史・デザイン史の蓄積の上に成り立っているかを、実物を前に感じ取ることができるからです。ボーン・チャイナというイギリス独自の素材が生まれた必然性、そしてそれが英国の紅茶文化と相互に育まれてきた歴史は、現代の英国茶器を愛でる際の新たな視点を与えてくれるでしょう。
ミントンのジャポニスム作品やスージー・クーパーのモダンデザインなど、英国セクションだけでも見どころは豊富です。ヨーロッパ陶磁の流れを大きく俯瞰しながら、英国ならではのデザイン哲学を見出す機会として、ぜひ足を運んでみてください。
Text by British Culture in Japan編集部
Link
https://www.mitsui-museum.jp/exhibition/next.html
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