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デンビー・ポタリーが管財人を選任、217年の歴史を持つ英国陶器ブランドが経営危機
ダービーシャー州を拠点に217年の歴史を誇る陶器ブランド、デンビー・ポタリー(Denby Pottery)が、3月31日(火)に管財人を正式に選任しました。エネルギーコストの高騰や労働コストの上昇、消費者需要の低迷が重なり、約600人の雇用が危機にさらされています。
217年の歴史を持つ陶器ブランド、管財人選任に至るまでの経緯
デンビー・ポタリーは1809年、ダービーシャー州リプリー近郊に創業した英国を代表するストーンウェア(炻器)メーカーです。ディナーセットからベイクウェア、調理鍋に至るまで幅広い家庭用陶器を製造し、現在も日本をはじめ、韓国・米国・中国・カナダ・アイルランドを含む30か国以上に輸出を行っています。
財務状況の悪化は近年加速しており、2024年12月期の税引き後損失は前年の310万ポンドから556万ポンドへと拡大しました。エネルギーコスト(特にガス価格)の高騰、雇用コストの増加、高級ホームウェア市場における消費者需要の軟化が重なり、経営を圧迫してきました。
同社は3月11日(水)、管財人選任の意向通知(Notice of Intention to Appoint Administrators)を提出。これは債権者からの法的請求を最長10営業日にわたって自動的に停止させ、投資家・買収先の探索や事業再編を落ち着いて検討するための法的措置です。その後、期限延長が認められ、4月8日(水)まで猶予が与えられており、現在も投資パートナーの確保に向けた交渉が続いています。
「管財人選任」とは何か──即廃業ではない英国の再建手続き
英国の「アドミニストレーション(Administration)」は、日本でいう民事再生手続きに近い制度です。支払い不能状態に陥った、またはそのおそれがある企業に対し、独立した専門家(管財人)が経営権を引き継ぎ、事業の売却・再建・清算の可能性を順番に探ります。即時の廃業や清算を意味するものではなく、デンビーは管財人選任後も直営店・オンラインショップでの通常営業を継続しています。
管財人はまず「①事業をそのまま存続させる買収先・投資家の確保」を最優先とし、それが困難な場合に「②資産の有利な処分による債権者への返済最大化」、最終手段として「③清算」へと進みます。つまり今のデンビーは、管財人のもとで買収先の交渉が続く「再生か売却かを探る法的保護期間」の中にあるといえます。
FRPアドバイザリーが管財人に就任、現在も営業継続中
3月31日(火)、デンビーはFRPアドバイザリー(FRP Advisory)を管財人として正式に選任したことを発表しました。同様に、デンビー傘下でストーク・オン・トレントを拠点とするバーリー(Burleigh)ブランドを製造するバージェス・アンド・リー(Burgess & Leigh)も同日付で管財人選任の手続きに入っています。
管財人選任後も、デンビーのオンラインショップおよび直営店舗での販売は通常通り継続されています。また、韓国・米国・中国の海外子会社は現時点で管財手続きの対象外となっており、引き続き通常営業を行っています。FRPアドバイザリーは事業の一部または全部の売却に向けて関係者との協議を継続しています。
#SaveDenbyキャンペーンと政府への訴え
管財人選任が迫るなか、デンビーは公式サイトに「#SaveDenby」ページを設け、SNSでのシェア・コメント・陳情・購買を通じたサポートを呼びかけました。同社はこのキャンペーンが「前例のない関与」を生み出したと述べており、英国国内外から多くの支持が寄せられました。
最高経営責任者のセバスチャン・ラゼルは「できることはすべてやっている」と述べながらも、「ハッピーエンドにならないかもしれない」と厳しい現実を認めました。また同社は英国政府に対し、エネルギーコスト支援制度「ブリティッシュ・インダストリー・スーパーチャージャー(British Industry Supercharger)」の対象を現在の鉄鋼・ガラス業界から陶磁器セクターへ拡大するよう求めています。デンビー工場が立地するアンバー・バレー選出のリンジー・ファーンズワース労働党議員も雇用と産業の保護を求めて政府との折衝を続けています。
英国陶磁器産業が抱える構造的な課題
デンビーが直面している状況は、英国陶磁器産業が広く共有する構造的問題を反映しています。ガス依存度の高い焼成工程を持つ陶磁器メーカーは、近年のエネルギー価格高騰に特に脆弱です。英国政府が導入したブリティッシュ・インダストリー・スーパーチャージャーは一部の重工業を対象としていますが、陶磁器・セラミクスセクターは現時点で適用外となっており、業界全体から改善を求める声が上がっています。
デンビーはかつて、2009年にも経営危機に直面し、リストラクチャリングの専門会社ヒルコ(Hilco)の支援で再建を果たした経緯があります。今回は投資パートナーの確保が間に合わなかった形となりましたが、FRPアドバイザリーのもとで売却先の交渉が継続されており、ブランドとしての存続の可能性はゼロではありません。
日本市場への影響と今後の見通し
デンビーの製品は日本でも百貨店やオンラインショップを通じて流通しており、英国ホームウェアファンの間で根強い人気を誇ります。管財人選任後も英国・海外向けの通常営業は継続されているため、現時点での購入に直ちに支障が生じる状況ではありませんが、今後の売却交渉の行方によっては供給体制に影響が出る可能性もあります。
Cover Photo: © Jonathan Clitheroe / geograph.org.uk / CC BY-SA 2.0
Text by British Culture in Japan編集部
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