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隈研吾がナショナル・ギャラリー新棟コンペで優勝、2030年代開館へ
ロンドンのナショナル・ギャラリー(National Gallery)が、総額7億5,000万ポンドの大規模拡張計画「プロジェクト・ドマーニ(Project Domani)」の新棟(新ウィング)設計コンペの優勝者として、隈研吾アンド・アソシエイツ(日本)とBDP・MICA(ともに英国)の連合チームを選出しました。審査委員会の評価は全会一致で、設計案は「革新的かつ美しく、国際的なギャラリーのコミッションに求められる水準を満たしている」と高く評価されています。
全会一致での選出、審査委員会が「最高得点」を付与

Artist’s impression of the rooftop. Image credit: Kin Creatives
ナショナル・ギャラリー理事長で審査委員会議長を務めるジョン・ブースは、「世界最高峰の建築家6チームによる設計案を審査するという、刺激的で困難な任務を課せられたが、最終的に隈研吾の提案が全会一致で選ばれた」と述べています。審査委員会は設計案を「最高得点」と評価しており、既存のグレード1指定建築物への配慮、レスター・スクエアとトラファルガー・スクエアをつなぐパブリック・レルムの創出、樹木と緑に彩られた屋上庭園の計画が特に評価されました。
外装にはポートランド・ストーンを用いた段状のデザインが採用され、周囲の街並みに馴染みながら自然光を建物内部へ引き込む工夫がなされています。内部の展示室は「シンプルでクリーン」なデザインで、1階はヴォールトとアーチを取り入れたセインズベリー・ウィングとの連続性を意識した構成、上階はより幾何学的なデザインとなっています。なお、今回の選出はスタンドスティル期間(4月7日〜4月16日)終了後に正式確定となります。
隈研吾とは、国立競技場の設計者が世界の舞台へ
隈研吾アンド・アソシエイツ(KKAA)は、建築家・隈研吾が1990年に設立した東京を拠点とする建築・デザイン事務所です。自然素材と周辺環境との対話を重視した設計思想で知られており、東京の国立競技場のほか、スコットランドのV&Aダンディー、リスボンのカルースト・グルベンキアン財団南棟など、世界各地の文化施設で数多くの実績を持ちます。現在は世界5拠点に360名以上のスタッフを擁し、26カ国で150を超えるプロジェクトを手がけています。
隈研吾は今回の選出について「ナショナル・ギャラリーのコレクションは人類の宝であり、その拡張部分を設計することを委ねられた責任を、私たちは最大限の慎重さと謙虚さをもって担っていく」とコメントしています。パートナーを務めるBDPは英国内外60年以上のキャリアを持つ大規模設計事務所で、グーグルのキングス・クロス・キャンパスやアストラゼネカの研究施設設計で知られています。MICAはオックスフォードのアシュモレアン博物館やロンドンのダリッジ・ピクチャー・ギャラリーの改修を手がけた実績を持ちます。
コンペの経緯、フォスター+パートナーズやレンゾ・ピアノら5社を抑える
建築コンペは2025年9月9日(火)の公募開始に65件の応募が集まり、同年12月3日(水)に最終候補6社が発表されました。最終候補にはプリツカー賞受賞者のフォスター+パートナーズ(英国)やレンゾ・ピアノ・ビルディング・ワークショップ(イタリア)も名を連ねており、隈研吾の選出は下馬評を覆す結果とも評されています。最終候補の各チームは以下のとおりです。
- ファルシッド・モウサヴィ・アーキテクチャー+ピアシー&カンパニー(ともに英国)
- フォスター+パートナーズ(英国)+スタジオ・アドリアン・ガルデール(フランス)
- 隈研吾アンド・アソシエイツ(日本)+BDP(英国)+MICA(英国)★優勝
- レンゾ・ピアノ・ビルディング・ワークショップ(イタリア)+アダムソン・アンド・AAI(英国)+ウィリアム・マシューズ・アソシエイツ(英国)
- セルドルフ・アーキテクツ(米国)+パーセル(英国)
- スタジオ・ザイラーン・アーキテクツ(英国)+ドナルド・インソール・アソシエイツほか
ナショナル・ギャラリー館長のサー・ガブリエレ・フィナルディは「隈研吾の建築家としての軌跡は、卓越したデザインの優雅さ、場所と歴史への鋭い感性、そして光と素材の扱いの比類なき美しさを示している」と選出の理由を述べています。新棟はナショナル・ギャラリーのキャンパス内に残る未活用地のセント・ヴィンセント・ハウス跡地に建設される予定で、完成後の展示面積は約1,400平方メートルが新たに加わります。
3億7,500万ポンドを調達済み、開館は2030年代前半の見通し
プロジェクト・ドマーニは目標総額7億5,000万ポンドに対し、すでに3億7,500万ポンドの資金確約を達成しています。内訳はクランクスタート財団(サー・マイケル・モリッツとハリエット・ヘイマン夫妻の慈善財団)から1億5,000万ポンド、ジュリア・ラウジング・トラストから1億5,000万ポンド、ナショナル・ギャラリー・トラストとその他寄付者から7,500万ポンドで、前2件は美術館・ギャラリーへの単独現金寄付として世界最高額クラスとされています。建設費は推定3億5,000万ポンドで、残りは1900年以降の作品収蔵と新棟の運営基金に充てられる予定です。
新棟は1900年以降の近現代絵画を収蔵対象に加えることで、ナショナル・ギャラリーを「西洋絵画の通史を包括的に提示できる世界で唯一の場所」とすることを目指しています。テートとの連携により、20世紀・21世紀の作品の展示・研究・教育プログラムの拡充も計画されています。開館は2030年代前半が見込まれており、設計確定後に詳細スケジュールが発表される予定です。
Cover Photo: Artist’s impression of the entrance. Image credit: Kin Creatives
Text by British Culture in Japan編集部
Link
https://www.nationalgallery.org.uk/
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