ミシュラン2ツ星シェフが語る日本の食とホスピタリティ|ナイル・キーティング氏インタビュー

Niall Keating

英国を始めとする各国のミシュランの星付きレストランで研鑽を積み、30歳になる前にミシュランの2ツ星を獲得したシェフとして著名なナイル・キーティング氏が来日。ケミ・ベイデノック英国ビジネス貿易相兼女性・平等担当相を迎えての駐日英国大使館でのディナーを手がけ、魚料理に福島産のスズキを、乾杯には福島産の日本酒を用いたメニューを提供しました。まさに英国を代表するシェフのひとりであるナイル氏に今回の来日、またストーク・オン・トレントにオープンした氏のレストランについて話を聞きました。

Niall Keating

──何度か日本を訪れていますが、新たな発見や気付きというのはありますか?

そうですね、必ずしも学ぶということではなく、日本の食べ物やおもてなしの文化について理解するということでしょうか。最高レベルの味やサービスを提供するお店でなくても、極めて高いレベルにあります。日本を訪れるたびに、そう感じますね。3、4年ぶりに訪れても、その印象は変わることはないです。でも、英国やフランス、ベルギー、アメリカでは、そういうことはまずありません。日本では、久しぶりに戻ってきても前回とまったく同じように、愛情たっぷりのおもてなしで迎えてくれるんです。

それから、食べ物や農産物、出来上がったものに対して抱く尊敬の念というのは、明らかにホスピタリティ全体と密接な関係があると言えます。色々なテクニックや文化の違いを挙げればきりがありませんが、それは特別なことではなくて、食とホスピタリティの文化全体に通じることなのです。

──ケミ・ベイデノック英国ビジネス貿易相兼女性・平等担当相を迎えて、駐日英国大使館の大使公邸で行われたディナーでは大使館のエグゼクティヴ・シェフのフレデリック・ウォルター氏と共にメニューを作り上げましたが、どのようなテーマで調理されたのでしょうか。

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今回の料理はすべて私のレストラン「Lunar」のものです。フレデリックと彼のチームにレシピやメニューなどをあらかじめ知らせていたので、ありがたいことに私が公邸に到着したときには下ごしらえが終わっていました。料理のメイン・テーマは日本だけでなく、ヨーロッパをはじめ、私が以前働いていたレストランで使われていたすべての要素を料理に落とし込み、日本のファンタスティックな素材を使うということでした。英国の農産物と日本の農産物はまったく違うんです。

──その違いとは?

基本的に、英国の食材は良いものが多いのですが、バラエティには富んでいないんです。日本のように季節に関係なく野菜が揃っている環境ではなく、絶えず旬のものを使うことになりますね。例えば夏はトマトとアスパラガス。クリスマスには芽キャベツと七面鳥というように。「Lunar」では季節のものを中心にメニューを組み立てていますが、自分たちで狩りをすることもあります。レストランにはドライエイジング用の冷蔵庫があって、鹿肉や牛肉、子羊、豚肉、鳥類を一頭丸ごと吊るすことができます。その中で肉質が良いものを中心にメニューを考えていくんです。

──その「Lunar」は、ストーク・オン・トレントにあるウェッジウッドの創始者ジョサイア・ウェッジウッドの業績を記念して作られた「ワールド・オブ・ウェッジウッド」に併設されています。あなたの地元で新たなレストランをオープンさせたのはどうしてでしょうか?

やはり家族がいるということが大きいですね。あとはもちろん、ウェッジウッドと一緒に新たなレストランをオープンできるというのも理由のひとつでした。食器はウェッジウッドのものを用いていますが、互いにアイデアを出し合って食器もデザインしています。そうしたこともレストランが描き出すストーリーの一部なんです。隣の工場に入って、お皿を作っている人や粘土を投げている人と話してデザインを考えたり、そうして2週間後くらいに、ふたつか3つのお皿が出来上がる。こうした関係はとてもいいと思いませんか?

──料理の世界でもサステナブルがキーワードになって久しいですが、「Lunar」では何か取り組んでいることはありますか?

レストランはすべてアップサイクルのものを使用しています。例えば、バーエリアはすべて古い鉄の屋根材で作られていたり、テーブルの椅子もオークションなどで手に入れたものを使っていて統一されていません。今はプラスチックの無駄遣いで政府から罰金を取られるような時代ですので、レストランから半径10マイル以内の農場から直接野菜を運び、牧場で金属製のミルクポットに牛乳を入れてもらっています。大きなバンで野菜やペットボトルの牛乳が運ばれてくるということはありません。すべて地元の食材でまかなっているんです。

──ストーク・オン・トレントは日本の旅行者にも人気の観光地です。「Lunar」にもぜひ訪れてもらいたいと思います。

狩猟で獲れたキジや鹿肉をぜひ味わってほしいですね。魚に関しては、内陸にある地域ですので半径10マイル以内とはいきません。コーンウォールから8時間かけて、その日に獲れた魚が運ばれてくるんです。「ワールド・オブ・ウェッジウッド」は歴史ある広大な建物で博物館もありますので、ぜひ日本のみなさんに来てもらいたいですね。

Link

https://www.lunarwedgwood.com/

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