ブラック・カントリー・ニュー・ロード東京公演レポート|青葉市子を迎えた愛と熱狂のツアーファイナル

ブラック・カントリー・ニュー・ロード ツアー最終日東京公演のライブレポート

ブラック・カントリー・ニュー・ロードが2度目となる単独ジャパンツアーのファイナルを東京・六本木EX THEATERで開催。スペシャルゲストに青葉市子を迎えたソールドアウトの公演は、3rdアルバム『Forever Howlong』を軸に、タイラー・ハイド、メイ・カーショウ、ジョージア・エレリーの3人がリードヴォーカルを務める新体制の魅力を存分に発揮。女性三声の鮮やかなハーモニーと卓越した演奏技術、そして音楽への純粋な愛と喜びに満ちたパフォーマンスで、師走の夜を熱狂の渦に包み込みました。




ブラック・カントリー・ニュー・ロードが2度目となる単独ジャパンツアーを、大阪・名古屋・東京の3都市で開催。スペシャルゲストに、バンドが”いま日本で活動する中でも特に大好きなアーティストの一人”と語るシンガーソングライター・青葉市子を迎えたツアーファイナルはソールドアウトしており、東京・六本木EX THEATERのフロアは後方まで超満員。師走の夜を感じさせない熱気に包まれる中、ぺチュラ・クラークの「Downtown」とともにメンバー6人が登場すると、待望の歓声と拍手が沸き起こった。

女性三声が紡ぐ壮大なドラマ

ブラック・カントリー・ニュー・ロード ツアー最終日東京公演のライブレポート

今回の公演は、今年4月にリリースされた3rdアルバム『Forever Howlong』の全11曲と、ライヴ盤『Live at Bush Hall』収録楽曲で構成。2ndアルバム『Ants From Up There』 のリリース4日前にフロントマンのオスカー・アイザックが電撃脱退して以降、同年のフジロックも、翌年の初の単独ジャパンツアーも、新曲、新体制での楽曲を貫いてきた通り、常に今という”新しい道”を見つめる姿勢は変わらずだ。

タイラー・ハイド(b)、メイ・カーショウ(k)、ジョージア・エレリー(vln)がリード・ヴォーカルを務める現体制を象徴するように、オープナーである『Two Horses』から、女性三声の鮮やかなハーモニーが会場に轟いた。口笛とギターアルペジオの素朴なメロディから、ベース、サックス、そしてドラムと加わり、力強く華やかに色づいていく音景色に圧倒される。続く『Salem Sisters』『The Big Spin』では、一曲の中で壮大なドラマを描くように緩急と強弱を大胆につけるにも関わらず、彼らのリズムとグルーヴには寸分の乱れもない。それは彼らの固い絆と親和性に加えて、最新作のリリースまでに数々のツアーやフェスティバルの出演を重ね、ライヴバンドとして成長してきたことの証ともいえる。

多幸感に満ちた一音一音

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ふくよかな低音が持ち味のタイラー、軽やかで透明なパワーボイスを持つメイ、憂いを含んだ温かな声色のジョージア。彼女たちの歌声は独唱でも成立するほどのインパクトとパワーを持ち、ソプラノ、メゾソプラノ、アルトを自在に行き来もする。こうした声楽的な力量があるからこそ、生演奏でもルイス・エヴァンス(sax)の歌い上げるようなサックスが、チャーリー・ウェイン(ds)の激しく鋭いドラミングが、ルーク・マーク(g)の豊かなアルペジオが生き生きと輝くのだろう。彼らの地力の賜物だ。

そして何より、彼らのショーは”ラヴ”と”ジョイ”で満ちている。音が重なっていくことへのワクワク、大音量で弾ける時の開放感と快感、その中で至極楽しそうにプレイする彼らの姿。彼らの紛れもない音楽への愛がそのままサウンドになったように、一音一音が多幸感に満ちていて、音楽にある根源的な尊さや喜びを痛感して涙が溢れそうになる。たとえ私たちのことを一切知らないとしても、この情熱と愛で無条件に楽しませてあげる、と言わんばかりの自信も垣間見えた。

感動的なクライマックスと愛に溢れたフィナーレ

ブラック・カントリー・ニュー・ロード ツアー最終日東京公演のライブレポート

中でもハイライトは「Turbines/Pigs」。月夜の下でひっそり弾き語るようなメイのソロプレイから始まり、終盤ではギアを一つずつあげるように音数が増え、最後にはチャーリーの全身全霊のドラミングを筆頭にとんでもない爆音が場内を埋め尽くす流れはあまりに感動的で、”音”を”楽しむ”とは何であるかをひたすらに感じる、まさに桃源郷のような光景だった。そしてセンターでボウイング奏法をするテイラーはとても美しかった。

ブラック・カントリー・ニュー・ロード ツアー最終日東京公演のライブレポート

曲ごとに互いに楽器を入れ替え、終盤に披露した「Forever Howlong」では音源通りリコーダーも登場。歌いながら指揮をとり、片手でピアノからアコーディオンまで弾いてしまう多才ぶりを発揮するメイに向かって、5人がリコーダーを吹く姿はなんだかシュールで面白い。MCらしいMCは「Happy Birthday」の直前に1回のみで、メイが流暢な日本語で観客や関係者へ挨拶し、ラストスパートへ。開始から1時間半近くたっても美しさと力強さを損なわないままラストナンバー「For the Cold Country」を披露し、壮観のサウンドスケープで会場を染め上げ、本公演は終了。ペット・ショップ・ボーイズ『Always On My Mind』をカーテンコールに、メンバーから観客へ直にセットリストを渡すなどファンサービスも欠かさないという、最後の一瞬まで愛に溢れた一夜だった。

文/宮谷行美 写真/Kaoru Goto

 

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