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ジョン・フラテリ『ブライト・ナイト・フラワーズ』interview
ザ・フラテリスのフロントマンであるジョン・フラテリが7年半ぶりとなるソロ・アルバム『ブライト・ナイト・フラワーズ』をリリース。そのソロ作はもちろん、彼が住み続けるグラスゴーの魅力やおすすめのお店についても聞きました。
── このソロ・プロジェクトを始めたのは2012年頃でしたね?
うん、もしかしたらもうちょっと前かも。ただ、タイミングが良くなかった。始めたばかりの頃は、スキルがなかったし、声の調子も良くなかったから。形としては、どんなものか、どんなアルバムかイメージがしっかりあったんだけど、我慢していなきゃいけなかっんだ。とにかく辛抱強く待つ時期だった。それが昨年、突然やろうとなって。ハッキリと「今だ」と思えたんだ。曲の作り方や音のイメージ、なりたい自分が見えた。6、7年も待った甲斐があったね。
── 6、7年は長かったですね。
タイミングってあるんだよね。
── 当初から同じコンセプトでしたか?
少しだけ変えたけど、そうだね、アルバムの曲に一貫した特徴を持たせている。みんなこのアルバムをまるごと聴いたら、何が起こっているのか気づくと思うな。それが何かは言わないけどね。ふふ。
── ザ・フラテリスの最新作「『イン・ユア・オウン・スウィート・タイム』はLAでトニー・ホッファーを迎えてレコーディングされましたが、ソロ作は自分のホームスタジオでレコーディングされていますね。グラスゴーやるべきだと思ったんですか?
いや、特に理由はなくて、単に状況がそうだっただけなんだ。このレコーディングには広いスペースが要らなかったしね。オーケストラを録ることがあったから、そのときだけは、ちゃんとしたスタジオが必要だったけど、あとは家で十分だったから。(ソロ作は)自分で持っているだけでも満足だったし、無料で提供していたかもしれないくらいだったんだ。リリースしたいっていう人が現れたから、自分もプロモーションに協力しなきゃと思ってギグもやったり。アルバムの制作にお金がけっこうかかったから、ギグをやったのは良かったね(笑)。
── ザ・フラテリスのアルバムからわずか1年でソロ・アルバムがリリースされるわけですが、バンド用ではなく、ソロでリリースするための曲を書き溜めていたのでしょうか?
いや、曲を書いているときは、バンドの曲になるかソロの曲になるかはわからないんだ。書き終わったときに初めてわかる。バンドのアルバムのレコーディングが終わってからすぐにソロのレコーディングに取りかかったんだ。だから、ほぼ同時進行だったと言えるね。でも、ソロが終わったら、すぐにバンドの次のアルバム用に曲を書き始めたから、途切れることなく作業していた感じかな。
── 最初に書いた曲はどれですか?
どれだろう。何曲かは6、7年前に書いたし。「ブライト・ナイト・フラワーズ」が最初かもしれない。
── その「ブライト・ナイト・フラワーズ」のタイトルと歌詞は、読書好きのあなたのお気に入りの作品からインスピレーションを受けているとのことで、ジョン・ファンテとノーマン・メイラーの名前を挙げていますね。
ふふふ。ジョン・ファンテはお気に入りの作家というわけじゃないけど、彼は『Ask the Dust(邦題:塵に訊け!)』という小説を残した。まさに”ask the dust”という言葉を、「ブライト・ナイト・フラワーズ」の歌詞に使ったんだ。このタイトルは、ノーマン・メイラーの小説の中から取ったのは確かなんだけど、どの本だったかは思い出せない。ジョン・ファンテのことは、もともとお気に入りの作家のチャールズ・ブコウスキーとのつながりから知ったんだ。ブコウスキーがおすすめの作家を聞かれたことがあって、彼はどの作家も気に食わなかったんだけど、彼以外で読むべき作家として唯一名前が挙がったのが、ジョン・ファンテだった。だから読んだんだ。
── そうなんですね、おもしろいエピソードです。このアルバムの中では「イン・フロム・ザ・コールド」が歌詞としては一番好きということですが。
今までにはない感じの歌詞になったね。女性のスターがいて、みんなが彼女の大ファンで、トップにしたいと思ってる。トップになると、壊したくなる。特定の誰かをベースに書いたわけじゃないけど、そういう例はいくらでもあるから。特にハリウッドの女性スターは。みんな持ち上げられて、ずたずたにされる。これってすごく悲しいし、無益なことなんだけど……そういうことを具体的に書いたことはなかった。だから他と比べて際立っているように思う。
── この曲ではちょっと声が枯れてるかんじが。
レコーディングのとき、ほとんど声が出ないような状態だったんだ。ヴォーカルを差し替えるつもりだったんだけど、この枯れた感じが好きになってきたから、そのまま残すことにした。うれしいアクシデントになったよ。
── ソロでは、バンドでは見せない自分の感情や思いを表現していますか?
そのつもりはなかったけど、いざ作ってみるとそういうものが出てきたね。
── 自宅でレコーディングしたということもあるのか、すごくリラックスしている感じが出ているような気がします。
う~ん……かもね。パジャマ着てたし(笑)。出かけるためにオシャレする必要がなかったから、ベッドから出て、着替えずにそのまま仕事を始めたこともあったよ。
── レコーディングも生活の延長線上にあったということでしょうか?
いや、バンドの時もソロの時も変わらないかな。すべては自分が聴いているものが好きかどうかにかかってる。自分はコントロールされていない状態が必要というわけじゃない。バリーとミンスは賛成しないかもしれないけどね。
── ソロとバンドでは、どちらが大変でしたか?
ソロのほうが、より時間がかかった。なぜかはわからないけど、たぶん、もうソロでアルバムを作ることはないかもしれないと思ったからかもね。自分がすべてに満足だって言えるまで、何度も何度も考えて、本当にたくさんの時間をかけたんだ。終わったときに、欲しかったものを手に入れたと言えるようになりたかったからね。これが唯一のソロ・アルバムになっても満足できるよ。
── ソロ・アルバムについてのディスクリプションに、「ソール・ノワール、カントリー・ゴシック、The Big ‘O’ meets The Big Easy、the Heart Of Saturday Night meets the West End of Glasgow」とあります。
それ書いた人知ってる(笑)。彼らしい表現だし、合ってると思うよ。ふふ。
── 良い表現ですよね。「カントリー・ゴシック」の部分とか好きです。
カントリー・ゴシックって何かわからないけど。
── 私もわかりませんが(笑)。
でも描写できているし、この表現の仕方はうれしく思うよ。。
── 一方で、失恋や心の傷を含んだこのアルバムを、“遊び心がある”アルバムと表現していますね。あなたでも失恋したことあるんですか?
あるよ、もちろん。でも、失恋でさえ、楽しみになり得る。失恋の中にも意外とコメディがあると思うんだ。「うわっ」こんなに嫌な気持ちになるもんなのか? と思ったり。それっておもしろいことだよね? 最悪だ、もうどっか行きたい、ってなるより、「うわ!」ってなるほうが良い。これって何よりすごいことだと思う。これって何だろう? 誰が発明したのかな? ふふふ。でも、もうこういうことは書けないと思うよ。
── あなたの住む街、グラスゴーについてもお聞きしたいのですが、友達と遊びに出かけるとしたらどこに行きますか?
なかなか家から出ないし、12年間仕事ばっかりだったから、出かける機会がなかったんだよね。ニューヨークには友達がいっぱいいるけど、遠いしね。だからグラスゴーでは家の中で過ごすことが多いんだ。最近はバーにも行かなくなったし。
── おすすめのバーとかヴェニューを教えてもらえたらなと思ったんですけど。
有名なところなら、King Tut’s Wah Wah Hutだね。
── ソロ・ライヴもKing Tut’sでやったんですよね。
うん。グラスゴーのバンドは、King Tut’sでライヴすると、自分は売れてるんじゃないかなって気になるけど、実際チケットがソールドアウトしたら売れてるって言えるんじゃないかな。あとほかにもBarrowland Ballroomというところがあって、あそこで絶対演奏してやるぞっていうバンドは多い。もっといろいろあるんだけど、ここ数年、自分がグラスゴーでライヴをやることがないから、あんまりわからない。ごめんね。
── グラスゴーのお気に入りの場所はどこですか?
自宅。
── (笑)。
住所は教えられないけど、ウエストエンドに住んでいて、そのあたりは公園がいっぱいあって、緑も豊かで広々としてる。自分はそれで満足。人がよく集まるエリアで、自分も行こうと思えばすぐに行ける距離だし。
── グラスゴーと言えば、2018年はチャールズ・レニー・マッキントッシュの生誕150周年でしたね。
彼が手がけたThe Glasgow School of Artが火事で焼失しちゃったね。母と姉が通っていたけど、自分にはそういう目はない。自分は耳だけ。
── ところでグラスゴーはカレーが美味しいってよく聞きますが。
なぜかは誰も知らないけど、グラスゴーには本当に良いインド料理店が密集してるんだ。少なくとも4、5年連続で、グラスゴーのレストランは英国のベストカレー賞を受賞している。でも、誰も理由はわからないらしい。ただのラッキーかな(笑)。
── おすすめのお店はどこですか?
Bukarrahという新しいレストラン。見つけたときはセンセーショナルだったよ。1週間に2回は食べてるくらい。ふふ。
── 公園に行って、そのレストランに行って、みたいな?
う~ん……家にデリバリーしてもらってる(笑)。
インタヴュー・文 / 中村友季乃 通訳 / 原口美穂
■Disc info
ジョン・フラテリ
『ブライト・ナイト・フラワーズ』
OCTAVE
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