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『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』メアリー追放の衝撃映像、1930年代の離婚タブーが生んだ悲劇
15年にわたる英国貴族ドラマの最終作となる映画第3弾『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』が2026年1月16日(金)から全国上映が始まり、長女メアリーが離婚スキャンダルで舞踏会から追放される衝撃の本編映像も公開されました。1930年のロンドン社交界を舞台に、伝統と格式が支配する世界で「離婚した女性は王女と同じ部屋にいられない」という非情な現実に直面するシーンに驚かされます。
シリーズ最後にして最大のスキャンダル
公開された本編映像では、1930年のイギリス社交界の頂点「ロンドン・シーズン」の真っ只中、きらびやかな舞踏会を舞台に展開される緊迫のシーンが描かれています。長女メアリー(ミシェル・ドッカリー)の離婚が新聞で報じられたことで、伝統と格式を重んじる会場の空気は一変しました。ホストであるピータースフィールド夫人は、これから来場するコンノート公爵夫妻の名誉を守るため、メアリーに全参列者の前で即刻の退場を命じます。
父ロバートや母コーラが憤りとともに抗議するも、夫人の決定は覆りません。長年「ダウントンの顔」として社交界に君臨し、常に誇り高く生きてきたメアリーが味わう、あまりにも残酷な屈辱の瞬間です。このスキャンダルは、クローリー家をダウントン・アビー存続の危機へと加速させていきます。
1930年代イギリスの離婚法と女性の立場

映像の中で語られる「離婚した女性を王女と同じ部屋にいさせるわけにはいかない」という言葉は、当時の英国社会が離婚に対して持っていた厳格な価値観を象徴しています。イングランドで離婚が合法化されたのは1857年ですが、それ以前は議会の個別承認が必要でした。しかし合法化後も、女性が離婚するためのハードルは極めて高く設定されていました。
1923年まで、女性は夫の不倫だけでは離婚が認められず、不倫に加えて遺棄や残虐行為などの追加事由を証明する必要がありました。一方、男性は妻の不倫のみで離婚できるという、明確な性差別が法制度に組み込まれていたのです。1920年の英国議会では、貧しい女性たちが夫に見捨てられても離婚できず、再婚の自由を奪われたまま生涯独身を強いられる不条理が議論されました。メアリーが直面する社会的排斥は、こうした時代背景のもとで、離婚した女性に対する根深い偏見を反映した描写です。
王室を揺るがした離婚問題と社交界の規範

1930年代のイギリスでは、離婚は社会的汚名と見なされ、特に王室との接触が予定される公式な場では、離婚歴のある人物の存在は許されないという不文律が存在しました。実際、この時代は英国王室でも離婚問題が大きな論争を呼んでいた時期です。1936年にはエドワード8世が離婚歴のあるアメリカ人女性ウォリス・シンプソンとの結婚を選び、王位を退く「王冠を賭けた恋」事件が起きています。
メアリーが直面する追放処分は、単なるフィクションではなく、この時代の厳格な社会規範を反映したリアルな描写と言えます。王族や上流階級の社交界では、離婚は道徳的退廃の象徴と見なされ、そうした人物を公式行事に招くことは主催者の品格を損なう行為とされました。メアリーのスキャンダルは、個人の幸福と社会的地位の間で引き裂かれる女性の苦悩を、歴史的事実に基づいて描いています。
ノエル・カワードが象徴する時代の変化

本作にはゲストとして、当時30歳で英国演劇界の寵児だった劇作家ノエル・カワードが登場します。1899年にロンドン郊外の貧しい家庭に生まれたカワードは、12歳から舞台に立ち、1924年の問題作『The Vortex』(渦巻き)で一躍名声を獲得しました。1929年には代表作『Bitter Sweet』を、1930年には『Private Lives』(私生活)を執筆し、「首相より有名」と言われるほどの文化的影響力を持っていました。
カワードは機知に富んだ会話劇と洗練された風刺で知られ、両性愛や同性愛をテーマにした作品を通じて、ジャズ・エイジの性的開放性を体現した人物です。保守的な貴族社会の価値観が揺らぎ始めた1930年代において、彼の存在は新しい時代の到来を象徴しています。ダウントン・アビーを訪れるカワードの登場は、旧来の階級制度と新興の文化的自由が交差する時代の転換点を、物語に重層的に織り込む演出と言えるでしょう。
カントリー・ハウス衰退の歴史的背景

映画の重要なテーマであるダウントン・アビーの財政難は、1920~30年代に実際に起きた英国カントリー・ハウス衰退の歴史を反映しています。第一次世界大戦で多くの相続人が戦死し、1929年の大恐慌が農業収入を直撃、さらに相続税や所得税の増税が貴族階級を圧迫しました。これらの要因が重なり、多くの邸宅が維持できなくなり、学校や病院に転用されたり、一般公開による観光収入に頼るようになりました。
実際に『ダウントン・アビー』の撮影地であるハイクレア城も、現在は一般公開されており、観光収入で維持管理されています。メアリーが直面するロンドンの別荘売却という選択は、伝統的な貴族の生活様式が終焉を迎えつつあった時代の現実を物語っています。父ロバートが英国貴族としてのプライドをかけて反対する姿は、変わりゆく時代に抗う最後の世代の苦悩を象徴しています。
ストーリーと上映情報
映画『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』は、1930年の夏の社交シーズンを舞台に、メアリーのスキャンダルとダウントンの財政難という二重の危機を描きます。ニューヨーク出身の財務アドバイザー、サムブルックがロンドンの別荘売却を提案する一方、父ロバートは英国貴族としてのプライドをかけて反対します。階下では料理長パットモアの引退が迫り、助手のデイジーが晩餐会を任されることになります。元執事のトーマスが俳優のガイ・デクスターや劇作家ノエル・カワードとともにダウントンを訪れ、再び階下を訪れる展開も描かれます。
監督は『ダウントン・アビー/新たなる時代へ』『黄金のアデーレ 名画の帰還』のサイモン・カーティス、脚本は原作者のジュリアン・フェローズが担当しています。ヒュー・ボネヴィル、ミシェル・ドッカリー、エリザベス・マクガヴァンら、シリーズおなじみのキャストが総出演し、ゲストとしてポール・ジアマッティ、ドミニク・ウェストらが参加。エミー賞とゴールデングローブ賞を席巻した英国貴族ドラマの金字塔が、15年にわたる壮大な物語をどのように結ぶのか、その結末を劇場で体験できます。上映時間は124分で、現在TOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開中です。
公開情報

- 監督
- サイモン・カーティス
- 脚本
- ジュリアン・フェローズ
- 出演
- ヒュー・ボネヴィル、ローラ・カーマイケル、ジム・カーター、ラケル・キャシディ、ポール・コプリー、ブレンダン・コイル、ミシェル・ドッカリー、ケヴィン・ドイル、マイケル・フォックス、ジョアンヌ・フロガット、ポール・ジアマッティ、ハリー・ハッデン=パトン、ロブ・ジェームズ=コリアー、アレン・リーチ、フィリス・ローガン、エリザベス・マクガヴァン、ソフィー・マクシェラ、レスリー・ニコル、ダグラス・リース、ペネロープ・ウィルトンほか
- ゲスト出演
- アーティ・フラウスハン、アレッサンドロ・ニヴォラ、ジョエリー・リチャードソン、サイモン・ラッセル・ビール、ドミニク・ウェスト
- 作品情報
- 2025年 / イギリス映画 / 124分 / 英語 / 原題:Downton Abbey: The Grand Finale
- 公開日
- 2026年1月16日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国順次ロードショー
- 配給
- ギャガ
©2025 FOCUS FEATURES LLC.ALL RIGHTS RESERVED
Link
https://gaga.ne.jp/downton_abbey_the_grand_finale/
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