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誰もがかつては若者だった──ロンドンに誕生した「Museum of Youth Culture」プレビュー

ロンドン在住のフリーランスライター、近藤麻美さんが、英国カルチャーを現地から紹介する連載「近藤麻美のカルチュラル・ウォーク in London」の第19回を公開! 今回は、カムデンにオープンしたロンドンのサブカルチャーの聖地、Museum of Youth Cultureをご紹介します。
Museum of Youth Cultureのメディア・プレビューにご招待いただき、ロンドンのサブカルチャーの聖地、カムデンに足を運んできました。

Museum of Youth Culture(MOYC)は、「若者文化」をテーマにした世界でも珍しいミュージアムです。ファッションや音楽、クラブカルチャー、ストリートカルチャーなど、1940年代以降のイギリスのユースカルチャーを、写真や映像、雑誌、衣装、個人の思い出の品などを通して紹介しています。

若者が歴史を生み、文化を形にし、社会を作る
ミュージアムは地下にあります。
地下廊下の壁面には、1920年代以降のユースカルチャーを記録したアーカイブ写真が年代順にコラージュされ、それぞれに解説キャプションが添えられています。各時代を象徴するファッションや音楽、ライフスタイル、社会背景などが紹介されており、100年近くにわたる英国の若者文化の変遷を、時代を追いながらたどることができる展示となっています。

テディボーイ:テディボーイは 1950年代初頭、労働者階級のサブカルチャーとして誕生しました。この用語は、1953年にデイリー・エクスプレス紙が、エドワード朝時代のドレープコートの名称を短縮して「テディ」と名付けたことから生まれました

1970年、ピルトン・フェスティバルとして知られる、グラストンベリー・フェスティバル第1回がワーシー・ファームで開催される。チケットは1ポンドだった!

炭鉱閉鎖/国民の不満/パンクの誕生 1978年、ロック・アゲインスト・レイシズムがヴィクトリア・パークで開催。 パンクとレゲエバンドが英国で高まる人種差別に抗議
常設コレクションでは、写真やファッション、テクノロジー、オーラルヒストリー、さらには雑誌やフライヤーなどの資料を通して、当時のティーンエイジャーたちのライフスタイルや価値観、音楽との関わりを多角的に紹介しています。
この展示は、英国のユースカルチャーの歴史を大きく4つのテーマに分けて紹介しています。
「ティーンエイジャーの台頭(Rise of the Teenager)」:20世紀初頭に生まれた「ティーンエイジャー」という概念が、戦後の経済成長と若者の可処分所得の増加によって独自の文化を形成していく過程を紹介。親世代への反発から、スーツの着こなしをアレンジしたり、アメリカン・ロカビリーに熱狂したりと、若者たちが独自のアイデンティティを築いていく様子が展示されています。

「アンダーグラウンド・シーン(Underground Scenes)」:では、戦後イギリスで花開いた多様なサブカルチャーに焦点を当てています。テディボーイ、モッズ、スカ、パンク、レイヴなど、それぞれの時代の音楽やファッション、政治的背景を通して、ユースカルチャーが異なる文化を吸収しながら発展してきたことを紹介。現代ではK-POPやUKラップなど、新たなカルチャーがオンラインとリアルの両方で交差している様子にも触れています。

「夜への旅(Journey into the Night)」:若者にとってのナイトライフをテーマに、初めてのクラブやライブハウス、友人との待ち合わせなど、夜の街へ繰り出す高揚感と自由が描かれ、そうした体験が自己表現やアイデンティティ形成の場となってきたことを紹介しています。同時に、近年こうした文化的空間が失われつつある現状にも警鐘を鳴らしています。

「居場所を確保する(Claiming Space)」:若者たちが安心して集い、自分たちらしく過ごせる「居場所」の重要性を取り上げます。ユースクラブやライブハウス、公園などは、新たなコミュニティや音楽シーンを育む拠点として大きな役割を果たしてきました。しかし、緊縮財政の影響で多くのユースクラブが閉鎖されるなか、若者たちは自ら新しいコミュニティを築き、自分たちの居場所を創り出そうとしています。






キュレーターのリネット・カマラ氏は、メインギャラリーのために特注のサウンドシステム・インスタレーションを監修。彼女の構想のもと、オリジナルの音響機材が製作され、若者文化を象徴するさまざまなサウンドを没入感あふれる音響空間として再現しています。このインスタレーションは、写真や展示資料だけでは伝えきれないユースカルチャーのエネルギーや空気感を体感させる、本ミュージアムの中核を担う展示の一つとなっています。




ふたつ目の部屋では、MOYCの16歳から23歳までの若者グループとのコラボレーションによる初の企画展が開催されており、現代の若者の声が当ミュージアム体験の中心となるよう配慮されています。

ティーンエイジャーのベッドの再現
親につくささやかな嘘を、ユーモアと温かい視点で描いた展示もあります。ここで描かれる「嘘」は決して否定的なものではなく、少しだけルールを逸脱しながら、自分らしさやアイデンティティを模索していくティーンエイジャーにとって、成長の過程に欠かせないものとして捉えられています。


親についた嘘を書き記したメモ
親に夜の外出を許されない南アジア系のティーンエイジャーたちが秘密裏に開いていた昼間のパーティー「デイタイマー」。


グラウンド・フロアはカフェ&バー、ギフトショップが併設されています。





ギフトショップでは、オリジナルグッズのほか、インディペンデント・ジンやレコードなど、カルチャー色豊かな商品を取り扱っています。





ラフ・トレードが厳選したレコード

フレッド・ペリーも協賛
ミュージアムの閲覧後、MOYCキュレーターのひとり、リネット・カマラ氏によるパネルディスカッションと質疑応答がありました。

左からリサ・デル・ウェドゥウェ、リネット・カマラ、ジェイミー・ブレット氏
ジェイミー・ブレット氏は、「これは完全に見過ごされてきた文化遺産の一部でありその結果、博物館において若者は蚊帳の外に置かれてしまっているのです。特に思春期の時期はそうです。ホルモンバランスが変化する時期であり、生物学的な要因もありますが、同時に家を出て自立したいという願望も伴います。そうした時期こそ、これまで十分な時間と空間が与えられてこなかった、素晴らしいサブカルチャーシーンを生み出すのです」と語りました。
また、博物館のアーカイブプロジェクトマネージャー兼コミュニティプログラマーのリサ・デル・ウェドゥウェ氏は、「私たちは、人々の個人的な物語を集めるために、イギリス各地を旅して廻りました。展示されているものの多くは、私たちの『Grown Up In Britain(イギリスで育った若者たち)』キャンペーンを通してクラウドソーシングで集められたものです」と語り、「ロンドン中心部を歩いていると、(10代のK-POPファンの)グループに出くわすことがあります。彼らは皆、独特のスタイルを持ち、同じ音楽を聴き、そのライフスタイルを送っています。それは、私たちが20世紀に経験したサブカルチャーを彷彿とさせます。しかし、彼らはオンラインの世界と現実世界の両方に片足を突っ込んでいます。なぜなら、それが今の私たちの社会だからです。サブカルチャーは、その形態が変化するにつれて、以前と同じ形ではなくなっていくでしょう。時代とともに変化していくのです」と続けました。
折しもこの日は、前日に英政府より、イギリスで16歳未満のソーシャルメディア利用禁止が発表されたばかり。キュレーターのリネット・カマラ氏は、「昨日BBCのインタビューで、あるティーンエイジャーが、ソーシャルメディアが使えなくなったら、あなたはその時間をどう使いますか? と尋ねられた際、壁をじっと見つめる……、と答えてたけど、これこそが見つめる価値のある壁です(笑)」とコメントし、参加者を笑いの渦に誘いました。
ちなみにカマラ氏は、主にロンドンを拠点に活動するアーティスト/DJ/コミュニティ・オーガナイザーで、「サウンドシステム・クイーン」としても知られています。わずか15歳で、「ノッティングヒル・カーニバル」で女性初のDJのひとりとして歴史に名を刻み、現在はノッティングヒル・カーニバルの理事を務めています。また、自身の会社「LIN KAM ART」を立ち上げ、アートやフェスティバル文化を通じた若者の才能発掘、メンタルヘルス、コミュニティ支援のワークショップを数多く手がけ、セントラル・セント・マーチンズなどのアート・カレッジで教鞭も執っています。
ミュージアムが目指しているのは、若者たちが私たちの共通の歴史を形づくるうえで果たしてきた重要な役割を再認識することです。音楽やファッション、社会運動、自己表現──ユースカルチャーは決して一過性の流行ではなく、英国文化を支えてきた重要な遺産で、そうした物語を恒久的に保存し、次世代へ受け継いでいくことこそ、このミュージアムの使命と言えるでしょう。「誰もがかつては若者だった」という考えのもと、このミュージアムは、誰もが自身の青春について語るべき物語を持っているという視点を大切にしている。そのため展示は、特定の世代だけに向けられたものではなく、あらゆる年代の来館者が、それぞれの青春や思い出と重ね合わせながら楽しめる内容となっています。
Museum of Youth Cultureへの詳細情報
- 場所
- 51 St Pancras Way, London NW1 0PU
- 開館時間
- 12時~20時 ※月火は休館
- 入館料
- 無料~10ポンド(寄付)
■近藤麻美
99年に渡英。英国のニュース、海外ドラマ、イギリス生活、食、教育、音楽、映画、演劇、歴史、ファッション、アートなど、英国にまつわる文化の多岐に渡る記事を執筆している。
linktr.ee/mamikondohartley
ご連絡は、mamikondohartley@gmail.comまで。
X:https://x.com/mami_hartley
Instagram:https://www.instagram.com/mamimoonismine
note:https://note.com/mamikondo_london
Link
http://www.museumofyouthculture.com/
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