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カルチャーと歴史が交差する海辺のリゾート──ロンドンから電車で1時間半、マーゲイト日帰り旅行記
ロンドン在住のフリーランスライター、近藤麻美さんが、英国カルチャーを現地から紹介する連載「近藤麻美のカルチュラル・ウォーク in London」の第21回を公開! 今回は、ロンドンを離れて訪れた、イングランド南東部・ケント州の海辺の町マーゲイト(Margate)への日帰り旅行記をご紹介します。
ヒートウェイブで、ロンドンの気温が36度まであがるというので、ロンドンを離れよう!ということになり、少しでも涼しいところを求めて、海辺の町マーゲイトにやってきました。

マーゲイトは、イングランド南東部・ケント州の海辺にある町です。ロンドンから電車でおよそ1時間半ほどで行ける、昔ながらの英国のシーサイド・リゾートとして知られています。今回は、ロンドンのセント・パンクラス駅から、サウスイースタン・レールウェイを利用しました。

終点のマーゲイト駅
マーゲイトは2回目なのですが、前回は車だったので、電車は初めてでしたが、あっという間でした。ホームに降りると、既に潮の香りが漂っていました。

駅構内に、リバティーンズのサイン入りフットボール・シャツが展示してありました

駅を出て、道なりに進んでいくと、すぐに海が見えてきます。

スタンディング・ストーンズ(Standing Stones)

1997年にマーゲート駅近くに設置されたこの3本の立石には、地元の学童たちの言葉や物語をもとに作家スザンナ・ダン(Suzannah Dunn)が紡いだ詩が刻まれています。



まだ午前中なので、ビーチはそれほど混んでいませんが、この後、かなり賑わっていました
まずは、Turner Contemporary に来ました。入場無料。

Turner Contemporary
エントランス・ホール・ウィンドウにはホックニーがありました。

David Hockney: Sunley Window 2026
2階では、特別展『Hulda Guzmán: Please awake – asked Nature kindly』が開催されています。

ドミニカ共和国出身のアーティスト、フルダ・グスマンの作品は、鮮やかで夢のような世界へと続く入り口を開きます。そこでは、作家自身やその家族、動物、そして神話上の生き物たちが、自然と親密に対話しながら存在しています。

木製パネルに薄い木材(ベニヤ)を重ねて制作された作品。この重層的な構造が作品に奥行きを与え、描かれたイメージが持つ不思議な世界観をより一層際立たせています。

特別展は9月13日まで。
J.M.W.ターナーの作品も展示してあります。

JMW Turner: Breaking Waves
J.M.W.ターナー(1775~1851)は、幼い頃からマーゲイトを訪れ、海や空の美しさに強く惹かれました。《風下の岸に砕ける波》は、マーゲイトで見た荒れた海を描いた油彩スケッチで、港や灯台、遠くの船を示す煙などが描かれています。

2階から見たホックニー
ターナーギャラリーはとても小さいので30分もあればすべてを見てまわることが出来ます。
インフォメーション・センターの入り口の上には、トレーシー・エミンが故郷への愛を込めて制作した作品「I Never Stopped Loving You」が掲げられています。

エミン自身の筆跡をピンクのネオンで表現しています
『The Old Kent Market』。元々は映画館だったところを改築し、リテールやフードマーケットとして、多彩な店舗が軒を連ね、地元の飲食料品からハンドメイドの工芸品、ヴィンテージの掘り出し物まで、幅広い商品が販売されています

二階建てバスを利用したカフェ
オールドタウンにはヴィンテージ・ショップが軒を並べます。


こちらのお店はなぜかレトロな日本の商品が所狭しと並んでいました
Crab Museum(カニ博物館)というのがあったので入ってみました(入場無料)。




マーゲイトの蟹伝説。
1862年、地元の漁師トーマス・ガスケルは、それまで誰も見たことのないような巨大なカニを捕獲しました。幅2.5メートルにも及ぶそのカニなら、市場で高値で売れることは間違いありませんでした。
しかし、その巨大な海の生き物を引き揚げている最中、ガスケルは哀れみを覚え、その命を助けることにしました。しかし、やがてその噂は広まり、マーゲイトの人々は、人間と獣の間に生まれたこの友情に反対の声を上げ始め、怒った地元の人々が、そのカニを殺すよう要求しました。トーマスは群衆に必死に懇願しましたが、最終的にはロンドンのサーカスの冷酷な興行主、ウィリアム・ビートンにカニを売るよう説得されてしまいました。カニは檻に閉じ込められ、「見世物」の一員として国中を巡業することになりました。
立派なフープスカートを着せられ、ウィーンの貴婦人のようにワルツを踊らされるその姿は、押し寄せた観衆を大いに沸かせました。「マーゲート・クラブ(マーゲートのカニ)」は一躍有名人となりました。ウィリアム・ビートンはその「カニ」のおかげで富を築きましたが、1863年のある運命の夜、事態は一変します。湿気の多い7月の晩、サーカス団のキャンプを猛烈な嵐が襲いました。団長はブランデーに酔い、そのカニをいじめようと近づいていきました。
その後に何が起きたのかは謎のままですが、ひとつだけ分かっていることがあります。その夜、「髭の女」が戻ったとき、彼女は団長のバラバラにされた遺体を目にしたのです。さらに、カニの檻の扉は風に吹かれて開け放たれていました。「髭の女」は1902年に亡くなるまでこの事件について決して語ろうとはせず、マーゲートのカニにまつわるこの驚くべき実話は、今日まで忘れ去られていました。
いろいろな蟹の歴史や生態に興味がある方にはおススメです。

ギフトショップのTシャツはなぜかヘビメタ風

蟹の切手もバラエティー豊富
マーゲイトの旧市街はそれほど大きくないので、20分ほど歩いて、Cliftonville へ。
ランチは、キューバ・レストラン『Little Havana』で。

小皿料理を4品ほどいただきました
サービスも良く、とても美味しかったです。
食後は、Margate Cavesへ。この洞窟は1740年頃に作られたもので、建設資材などに利用されるチョーク(白亜)を採掘・採取するための場所だったそうです。やがて地下空間には装飾が施されるようになり、訪れる人々の好奇心をそそる場所となりました。壁や天井には独特の模様やアーチ、レンガ造りの構造が見られ、洞窟に神秘的な雰囲気を醸し出しています。

マーゲイト・ケイヴの歴史は約7,000年前、海面上昇によってサネット島が形成された時代にまで遡ります。鉄器時代には人々がこの地域で暮らし、2018年の発掘調査では鉄器時代の人骨も発見されました。1700年代初頭には、町の発展に必要な白亜(チョーク)を採掘するため、地下に「ピラー・アンド・ストール」と呼ばれる方式の鉱山が造られました。
その後、鉱山は忘れられましたが、1807年に庭師やウサギにまつわる逸話とともに再発見されました。洞窟はその後、氷室やワインセラーとして利用され、1854年にはジョン・ノーウッドが所有。彼は洞窟を観光地として公開し、「ヴォーティガーンの洞窟」と名付け、古代のものだと宣伝しました。さらに19世紀後半には、洞窟の壁画や密輸業者にまつわる物語が加わり、マーゲイト・ケーブは採掘場から、謎と伝説に包まれた観光名所へと変化していきました。

洞窟の中はひんやりしていたのですが、外はやはり暑いので、海沿いを歩きます。

レトロなLidoのサイン
現在屋外プール「Lido」は閉鎖され、1980年代以降はコンクリートで埋め立てられていますが、敷地内には現在も稼働している施設があり、プールホールやバー、そして収容人数750人を誇るライブ・イベントスペース「ドリル・シェッド(Drill Shed)」などが利用されています。

マーゲイトの海はとにかく海藻が多かった!

Cliftonvilleには、The Albion Roomsがあります。

The Albion Roomsは、ザ・リバティーンズによって設立された、宿泊施設を整えたレコーディング・スタジオです。ヴィクトリア朝のタウンハウスを利用し、バー、キッチン、そしてゲストハウスを兼ね備えています。


海賊船!?


海辺を散歩した後は、タクシーで隣町Broadstairsへ。
この時点ですでに17時をまわっていたのでパブ探し。座れて、エアコンのあるところに入ったら、なんとビール2杯で9ポンド!

暑かったのでビールが美味しい
ハムステッドでは1パイントが9ポンド台のパブも珍しくないので、安さにびっくり。
ディナーは、シーフード・レストラン『Kebbells』で。


ミシュラン2024
食前酒は、いつものネグローニ。

クラブ・ミュージアムに行ったばかりなので、蟹が食べたかったのですが、dressed crabは、Seafood Platterのみ。ふたりなので大皿だとそれだけでお腹いっぱいになり、他のものが食べられなくなってしまうので、今回は見送りました(泣)。

セビーチェはシーブリームでした
メインのサーディン(鰯)のグリルが最高に美味しかった!! 素材本来のおいしさを丁寧に引き出し、余計なものを加えず、シンプルでありながら奥行きのある味わいに仕上がっています。
お腹がいっぱいになってしまったので、デザートはアフォガードを。

ブランデーをかけて

トフィーのファッジをサービスでいただきました
とにかくサービスも良く、ミシュランの割にはお値段もかなり抑えめだったので、次回は蟹を食べに大人数で訪れたいです。
食後はBroadstairsから電車でロンドン・セントパンクラス駅まで戻りました。
サクッと行ける日帰り旅行で、ロンドンの熱波を避けることができたのはラッキーでした。もし、時間があれば、泊まりでラムズゲートにも足を延ばしてみても良いかもしれません。
■近藤麻美
99年に渡英。英国のニュース、海外ドラマ、イギリス生活、食、教育、音楽、映画、演劇、歴史、ファッション、アートなど、英国にまつわる文化の多岐に渡る記事を執筆している。
linktr.ee/mamikondohartley
ご連絡は、mamikondohartley@gmail.comまで。
X:https://x.com/mami_hartley
Instagram:https://www.instagram.com/mamimoonismine
note:https://note.com/mamikondo_london
Cover photo: VisitBritain/Robin Creative Media
Link
https://www.visitthanet.co.uk/
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