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「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」展:東京ステーションギャラリーで10月に日本初開催
東京ステーションギャラリーで、「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」展が、2024年10月12日(土)から2025年1月5日(日)まで開催されます。イギリスの生活文化に大きな変化をもたらし、デザインブームの火付け役にもなったサー・テレンス・コンランの人物像に迫る日本で初めての展覧会となります。
展覧会の概要
コンランと彼がデザインした「コーン・チェア」、1952年撮影 、レイモンド・ウィリアムズ・エステート蔵 Photo © Estate of Raymond Williams
「Plain, Simple, Useful(無駄なくシンプルで機能的)」なデザインが生活の質を向上させると信じ、個人の生活空間から都市、社会までを広く視野に入れ、デザインによる変革に突き進んだサー・テレンス・コンラン(1931~2020)。本展は、イギリスの生活文化に大きな変化をもたらし、デザインブームの火付け役にもなったコンランの人物像に迫る日本で初めての展覧会です。
戦後まもなくテキスタイルや食器のパターン・デザイナーとして活動を始めたコンランは、1960年代、ホームスタイリングを提案する画期的なショップ「ハビタ」をチェーン化して成功を収め、起業家としての手腕を発揮します。そして、1970年代から展開した「ザ・コンランショップ」におけるセレクトショップの概念は、日本を含む世界のデザイン市場を激変させました。
このほか、家具などのプロダクト開発、廃れていたロンドンの倉庫街を一新させた都市の再開発、書籍の出版など、関わった事業は多岐にわたります。いっぽう、1950年代からレストラン事業にも乗り出し、高級レストランからカジュアルなカフェまで50店舗以上を手がけ、モダン・ブリティッシュと称される新しい料理スタイルをイギリスの食文化に定着させました。長年あたためていたデザイン・ミュージアムの設立構想を1989年、世界に先駆け実現させたことも大きな功績のひとつです。
本展は、パターン・デザインした食器やテキスタイルなどの初期プロダクト、家具デザインのためのマケット、ショップやレストランのためのアイテム、発想の源でもあった愛用品、著書、写真、映像など300点以上の作品や資料に加え、彼から影響を受けた人々のインタビューを交えながらさまざまなコンラン像を浮かびあがらせます。
デザインが暮らしを豊かにすること、いつでもこれが私にとって一番大事なことだった。
─────テレンス・コンラン『マイ・ライフ・イン・デザイン』より
- 会期
- 2024年10月12日(土)〜2025年1月5日(日)
- 会場
- 東京ステーションギャラリー
- 時間
- 10時~18時(金曜日は20時まで)※入館は閉館30分前まで
- 休館日
- 月曜日(ただし10月14日、11月4日、12月23日は開館)、10月15日(火)、11月5日(火)、12月29日(日)~2025年1月1日(水)
- 入館料
- 一般1,500(1,300)円 / 高校・大学生1,300(1,100)円 / 中学生以下無料 ※かっこ内は前売料金(9月1日から10月11日までオンラインチケットで販売)
デザイナー、コンランのはじまり
コンランのパターン・デザインによるディナープレート「チェッカーズ」、1957年
第二次世界大戦後のイギリスでブリティッシュ・ポップアートが生まれた頃、コンランはその先導者エドゥアルド・パオロッツィからテキスタイル・デザインを学びました。政府による文化施策「英国祭」などが開催されたことが追い風となって斜陽だったテキスタイルをはじめとするデザイン産業が活気づくと、コンランが手がけたテキスタイルや食器のパターン・デザインが注目されるようになりました。また、家具の輸入販売に加え、鉄・木・籐を用いた椅子やキャビネットの製作販売をおこない、テイストメーカーとしての評価も得ていきます。
起業の志 : ハビタとザ・コンランショップ
ザ・コンランショップの紙袋、 1980 年代、デザイン・ミュージアム/テレンス・コンラン・アーカイヴ蔵
1960年代のロンドンは、ザ・ビートルズ、ツイッギー、マリー・クワントといったアイコンの登場とともに、音楽、アート、ファッションのジャンルで若者文化が炸裂した「スウィンギング・シックスティーズ」の時代でした。こうした時代の波に乗り、コンランは多岐にわたる事業を展開させます。ライフスタイルの提案をコンセプトに生活用品を扱う小売店「ハビタ」をチェーン化して大成功を収め、続く1970年代に展開した「ザ・コンランショップ」は、今でいうセレクトショップの先駆けとして日本を含む世界のデザイン市場を大きく変えました。
食とレストラン
コンランが手がけたレストラン「ブルーバード」(1997年開店)Photo : Alex Pareas
イギリスの食事情は長く衰退していましたが、新鮮な食材の入手が可能になると、コンランは1980年代後半から本格的なレストラン事業に乗り出し、高級レストランからカジュアルなカフェまでさまざまな食体験の場を提供し始めました。イタリア料理やフランス料理も意識しつつ、イギリスの伝統食材にハーブやスパイスを取り入れた「モダン・ブリティッシュ」の料理スタイルをイギリスに定着させます。コンランのこだわりは強く、レストランのコンセプトや内装はもちろん、ロゴ、メニュー、灰皿やマッチ箱などのアイテム、そしてスタッフの制服までディレクションするほどでした。
再生プロジェクトと建築 / インテリア
改修されたミシュランビル(レストラン「ビバンダム」とザ・コンランショップ、1987年改修)
ハビタの成功をきっかけに企業から大きなプロジェクトの依頼を多く受けるようになったコンランは、1980年、建築家フレッド・ロシェと建築設計会社を立ち上げ、斬新な発想と実行力でロンドンの街並みを一新させていきました。チェルシーの古いミシュランビルを入手し、ザ・コンランショップの大型店やレストランをオープンさせてみごとに再生させます。また、当時廃れていたシャッド・テムズ地区のレンガ倉庫街だったバトラーズ・ワーフは、集合住宅、レストラン、オフィス、美術館などを含む人気エリアとして生まれ変わりました。建築とデザインを融合させたプロジェクトの数々にコンランは大きなやりがいを見出していきました。
バートン・コート自邸
バートン・コート自邸、2004年撮影 Photo : David Garcia
1970年代後半、コンランはバークシャー州キントベリーに建つ18世紀後半の赤レンガ邸宅「バートン・コート」を自邸としました。ここで菜園や庭いじりを楽しみ、レストラン用のレシピ開発や雑誌用の撮影をすることもあれば、隣接する家具工房ベンチマークのためのスケッチに没頭することもありました。バートン・コートの仕事部屋には、クラシックとモダン、精巧と素朴、大胆さと繊細さ、自然と人工といった性質の対比物の愛用品が絶妙なバランスで置かれ、コンランのインスピレーションの源となっていました。
ものづくり : ベンチマークとプロダクト
コンランがデザインした家具の模型、ザ・コンランショップ(UK)蔵
バートン・コートの敷地内にある家具工房ベンチマークは、1984年、ショーン・サトクリフという若者にコンランが制作の場を与えたことから始まり、約40年たった今、有名建築家や企業から注文を請け負うヨーロッパ随一の工房になりました。熟練した職人やデザイナーが専門分野をそれぞれ極めるいっぽう、多くの地元の若者に雇用の機会を与えていることも同社の特徴です。コンランは週末に描きためた家具などのスケッチを、月曜日の朝になるとここに持参し、必ず小さなマケットで試作してから実作に取りかかったといいます。家具職人を自称していたコンランにとって、まず自らの手を動かすことがものづくりの基本でした。
日本におけるプロジェクト
コンランがデザインしたトラベルケース「トラベル・ザ・ワールド」(グローブ・トロッター製)、2019年、個人蔵
1980年代から1990年代初頭にかけてバブル経済を謳歌した日本では、ファッションを中心に華々しい消費文化が隆盛しました。建築やプロダクトデザインなどの分野で世界的評価を得る成果も生みだされました。そしてバブル崩壊の余韻が残る1994年、ザ・コンランショップは日本初上陸。これを機にコンランは日本でのプロジェクトに携わるようになります。赤坂のアークヒルズ内の「アークヒルズクラブ」内装デザインに始まり、リゾートホテル「二期倶楽部」や六本木ヒルズのレジデンス棟などを手がけます。2019年、グローブ・トロッター社から限定販売されたトラベルケースは、旅の思い出やアイディアスケッチで埋め尽くされたコンラン最晩年のデザインとなりました。
未来にむけて
コンランの著書『The House Book』(ミッチェル・ビーズリー刊)、1974年
住宅に関するハウツーやアイディアにあふれるコンランの著書『The House Book』は、販売数250万部以上を記録した大作本です。自ら出版社を有し、関わった書籍数は約80冊にのぼりますが、出版と同じく力を注いだのがデザイン・ミュージアムの設立構想です。1982年、コンランはヴィクトリア&アルバート美術館の一角に「ボイラーハウス・プロジェクト」を立ち上げ、ここで5年間小規模なデザイン展を開催。1989年にバトラーズ・ワーフの再開発エリアに世界初の産業デザインに関するデザイン・ミュージアムを開館させました。さらに25年後、サウスケンジントンへの移転計画を立て、面積を3倍に拡張した現在のデザイン・ミュージアムが2016年に開館。私財を投じて実現させたデザイン・ミュージアムはデザインの魅力だけでなくデザインが社会に果たす役割や意義を考える重要な発信地となっています。
サー・テレンス・オルビー・コンラン Sir Terence Orby Conran(1931-2020)の生涯
バートン・コート自邸内の仕事部屋、2004年撮影 Photo : David Garcia
ロンドン南西部サリー州イーシャーに生まれる。セントラル・スクール・オブ・アーツ・アンド・クラフツ(現セントラル・セント・マーチンズ)でバウハウスやアーツ・アンド・クラフツに影響を受け、ブリティッシュ・ポップアートの旗手エドゥアルド・パオロッツィにテキスタイル・デザインを学ぶ。テキスタイル、食器、家具のデザインを手がけるうち起業に目覚め、ライフスタイルショップ「ハビタ」や「ザ・コンランショップ」の経営で成功を収めた。その他、レストラン事業や出版業、都市開発まで多才を発揮。デザイン奨励と社会貢献を目的に1989年、世界初のデザイン・ミュージアムを設立。デザイン分野での功績と文化事業が評価され、1983年に英国王室よりナイト(Knight Bachelor)に叙勲、サー(Sir)の敬称を許された。2020年、自邸バートン・コートで88年の生涯を閉じる。西新宿の「ザ・コンランショップ」日本初出店から今年で30年を迎える。
Courtesy of the Conran family, Conran Foundation and Conran IP LTD.
Link
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/index.asp
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