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ケン・ローチ幻のデビュー作から名優揃いの最新作まで。映画を通して社会を考える、“今”だからこそ観るべき英国映画
ケン・ローチ幻のデビュー作から名優揃いの最新作『ゴヤの名画と優しい泥棒』まで。映画を通して社会を考える、“今”だからこそ観るべき英国映画をご紹介。
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ケン・ローチ監督の幻の長編映画デビュー作で、絶賛リヴァイヴァル上映中の『夜空に星のあるように』(1967年)。60年代後半ロンドンの労働者階級の生活を捉え、過酷な現実の中で生き抜こうとするシングルマザーを静かなまなざしで見つめた本作は、現代に通じる社会性が描かれており、53年の時を経てもなお、色あせない感動作となっています。
来年2月公開となる名優ジム・ブロードベントとヘレン・ミレンの豪華共演、1961年にロンドン・ナショナル・ギャラリーで実際に起きた名画盗難事件に隠された驚きの真相を描いた『ゴヤの名画と優しい泥棒』(2020)も見逃せません。
この大事件の犯人は、60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン。彼は、TVが唯一の娯楽だった時代に、絵画の身代金で孤独な高齢者のために英国の公共放送(BBC)受信料を肩代わりしようと企てたのでした。
バントンの「弱きを助ける」精神を貫く姿は、今を生きる私たちに、自ら声を上げることの大切さ、互いに手を取り合うことのかけがえなさを、優しくも切実に投げかけています。
この特集では、コロナ禍で社会の不均衡や分断が進んでしまっている“今”だからこそぜひ見てほしい、英国映画を紹介します。
ゴヤの名画と優しい泥棒(2020年)
『ノッティングヒルの恋人』ロジャー・ミッシェル監督長編遺作、名優ジム・ブロードベント×ヘレン・ミレン共演
ロンドン・ナショナル・ギャラリーの唯一にして最大の名画盗難事件。犯人は60歳のタクシードライバー!? 身代金で孤独な高齢者の公共放送の受信料を肩代わり!?
世界中から年間600万人以上が来訪し、2300点以上の貴重なコレクションを揃えるロンドン・ナショナル・ギャラリー。1961年、“世界屈指の美の殿堂”から、ゴヤの名画「ウェリントン公爵」が盗まれました。
この前代未聞の大事件の犯人は、60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン。孤独な高齢者が、TVに社会との繋がりを求めていた時代。彼らの生活を少しでも楽にしようと、盗んだ絵画の身代金で公共放送(BBC)の受信料を肩代わりしようと企てたのでした。
しかし、事件にはもうひとつの隠された真相が……。当時、英国中の人々を感動の渦に巻き込んだケンプトン・バントンの“優しい嘘”とは!?
誰もが虜になるチャーミングな主人公に名優ジム・ブロードベント。そして長年連れ添った妻を演じるのはヘレン・ミレン。英国を代表するオスカー俳優の共演による、ユーモアあふれる軽妙な夫婦の会話劇も見どころのひとつ。
また、『ダンケルク』の好演が記憶に新しいフィオン・ホワイトヘッドが息子役を演じ、そのフレッシュな魅力も見逃せません。監督は2021年9月、惜しまれながら逝去し、本作が長編遺作となった『ノッティングヒルの恋人』のロジャー・ミッシェル。
名画で世界を救おうとした男が、人々に優しく寄り添う姿を描く、爽やかな感動作が誕生です。
- 監督
- ロジャー・ミッシェル
- 出演
- ジム・ブロードベント、ヘレン・ミレン、フィオン・ホワイトヘッド、アンナ・マックスウェル・マーティン、マシュー・グードほか
- 作品情報
- 2020年 / イギリス映画 / 英語 / 原題 : THE DUKE
- 公開日
- 2月25日(金)よりTOHO シネマズ シャンテほか全国公開
- 配給
- ハピネットファントム・スタジオ
- 後援
- ブリティッシュ・カウンシル
©PATHE PRODUCTIONS LIMITED 2020
夜空に星のあるように(1967年)
カンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高賞)を2度受賞!
巨匠ケン・ローチ監督の記念すべき長編映画デビュー作が53年の時を経てスクリーンに!
ロンドンの労働者階級に生まれた18歳のジョイは、泥棒稼業で生計を立てている青年・トムと成り行きで結婚し妊娠、出産します。
ところが、トムは赤ん坊に無関心ですぐ彼女に手をあげる始末。トラブル続きのある日、トムが逮捕され、ジョイは叔母の家に厄介に。
そこに夫の仲間だったデイヴが訪ねてくると、やがて彼女は優しいデイヴに惹かれ一緒に幸せな日々を送るように。しかし、彼もまた逮捕されてしまいます。
獄中のデイヴに手紙を書き続けながらジョイはまだ幼い息子ジョニーとともに懸命に生きていきますが……。
80歳をこえてなお、新作を発表しているケン・ローチ監督の長編映画デビュー作。
格差社会、貧困、人種差別といった社会問題を取り上げ、労働者階級やときに第三世界からの移民たちの日常を徹底したリアリズムで描いてきたローチ監督は、サッチャー政権下では不遇をかこっていましたが、90年代以降は大復活を遂げた不屈の映画作家です。
ジョイを演じるのは、本作でカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭・主演女優賞を受賞したキャロル・ホワイト。
60年代の英国を象徴するカリスマ・スター、テレンス・スタンプが出演しているほか、音楽は英国フォーク界の代表的アーティストのドノヴァンが担っています。
夢と現実のはざまで揺れ動きながら生き抜こうとする女性ジョイを静かに見つめる監督の視線の温かさは、半世紀以上経った今も不滅の輝きを放って私たちに感動を与えてくれはずです。
- 監督・脚本
- ケン・ローチ
- 原作・脚本
- ネル・ダン
- 製作
- ジョセフ・ジャンニ
- 製作協力
- エドワード・ジョセフ
- 撮影
- ブライアン・プロビン
- 編集
- ロイ・ワッツ
- 音楽
- ドノヴァン
- 出演
- キャロル・ホワイト、テレンス・スタンプ、ジョン・ビンドン、クイーニ・ワッツ、ケイト・ウィリアムスほか
- 作品情報
- 1967年 / イギリス映画 / 英語 / 原題 : Poor Cow
- 公開日
- 12月17日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
- 配給
- コピアポア・フィルム
©1967 STUDIOCANAL FILMS LTD
パレードへようこそ(2014年)
80年代英国、サッチャー政権下不況と闘うウェールズの炭鉱労働者に手を差しのべたのは、ロンドンのきらびやかなLGSMの若者たちだった――
1984年、サッチャー政権下の荒れる英国。始まりは、ロンドンに住むひとりの青年のシンプルなアイデアでした。炭坑労働者たちのストライキに心を動かされ、彼らとその家族を支援するために、仲間たちと募金活動を始めたのです。
しかし、全国炭坑組合に何度電話しても、寄付の申し出は無視されます。理由はひとつ、彼らがゲイだから。炭坑組合にとって、彼らは別世界の住人でしかありませんでした。
そこへ、勘違いから始まって唯一受け入れてくれる炭坑が! 寄付金のお礼にと招待された彼らは、ミニバスに乗ってウェールズ奥地の炭坑町へと繰り出したのですが……。
本作では、質実剛健な片田舎の肉体労働者と、ハデなファッションの同性愛者──誰から見ても水と油、両極端の境遇のふたつのグループが、手を取り合って未来を切り開く姿が描かれます。
彼らは誤解や衝突を乗り越え、固い絆を結び、新たな人生を掴み取っていきます。この稀有なる実話は、人と人のリアルな繋がりが希薄になり、誰もが孤独を抱えて生きている今の時代でも、他人を思いやる誠実なアイデアと、ほんの少しの勇気があれば、素晴らしい人生を見つけられるという希望を私たちに与えてくれるのです。
- 監督
- マシュー・ウォーチャス
- 出演
- ビル・ナイ、イメルダ・スタウントン、アンドリュー・スコット、ジョージ・マッケイ、ベン・シュネッツァー、パディ・コンシダイン、ドミニク・ウェスト、ジョセフ・ギルガン、フェイ・マーセイ、フレディ・フォックスほか
- 作品情報
- 2014年 / イギリス映画 / 英語 / 原題 : PRIDE
- 配給
- セテラ・インターナショナル
- 配信
- U-NEXT、hulu(2021年12月時点)
未来を花束にして(2015年)
ひとりの平凡な母親が参政権運動の中に見い出したもの――それは未来への“希望”だった。
これは、真実に基づいた勇気ある女性の物語。
1912年、ロンドン。劣悪な環境の洗濯工場で働くモードは、同じ職場の夫サニーと幼い息子ジョージの3人で暮らしています。
ある日、洗濯物を届ける途中でモードが洋品店のショーウィンドウをのぞき込んでいると、いきなりガラスに石が投げ込まれます。女性参政権運動を展開するWSPU(女性社会政治同盟)の“行動”の現場にぶつかったのでした。
同じ頃、女性参政権運動への取り締まりが強化され、アイルランドでテロ対策に辣腕をふるったスティード警部が赴任。彼は歴史上初となるカメラによる市民監視システムを導入し、無関係だったモードもターゲットのひとりとして認識されてしまうことに。
やがてモードに大きな転機が訪れます。下院の公聴会で証言をすることになったのでした。
工場での待遇や身の上を語る経験を通して、初めて彼女は“違う生き方を望んでいる自分”を発見します。けれども法律改正の願いは届かず、デモに参加した大勢の女性が警官に殴打され、逮捕されることに。
そんな彼女たちを励ましたのが、WSPUのカリスマ的リーダーであるエメリン・パンクハーストの演説でした──。
実話をもとに、1910年代の英国で参政権を求めた女性たちの姿を力強く描いた力作。キャリー・マリガン、ヘレナ・ボナム・カーター、メリル・ストリープ豪華キャストが共演しています。
50年に及ぶ平和的な抗議が黙殺され続け、女性の選挙権を要求する運動が先鋭化していた当時、カリスマ的リーダーであるエメリン・パンクハーストが率いるWSPUは、“言葉より行動を”と過激な抗争を呼びかけていました。
その一方で人を傷つけないことを方針のひとつとする穏健派も存在しました。テロ行為とは一線を画す、理性に拠る活動だったことが知られています。
階級を超えて連帯した女性たちの願いはやがて大きなムーヴメントとなり社会を変えていくことに──。そんな女性たちの勇気ある行動は、現代を生きる私たちに強く訴えかけます。
- 監督
- サラ・ガヴロン
- 出演
- キャリー・マリガン、ヘレナ・ボナム=カーター、ブレンダン・グリーソン、アンヌ=マリー・ダフ、ベン・ウィショー、メリル・ストリープほか
- 作品情報
- 2015年 / イギリス映画 / 英語 / 原題 : Suffragette
- 配給
- ロングライド
- 配信
- U-NEXT、hulu(2021年12月時点)
わたしは、ダニエル・ブレイク(2016年)
人生は変えられる。隣の誰かを助けるだけで。
<今>を懸命に生きようとする人々に寄り添い続けるケン・ローチ監督が、人間の尊厳と優しさを描く第69回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作
ニューカッスルで大工として働く59歳のダニエル・ブレイクは、心臓の病を患い医者から仕事を止められます。国の援助を受けようとしますが、複雑な制度が立ちふさがり必要な援助を受けることができません。
悪戦苦闘するダニエルでしたが、シングルマザーのケイティとふたりの子供の家族を助けたことから、交流が生まれます。貧しいなかでも、寄り添い合い絆を深めていくダニエルとケイティたち。しかし、厳しい現実が彼らを次第に追いつめていくのでした。
巨匠ケン・ローチ監督が、世界中で拡大しつつある格差や貧困にあえぐ人々を目の当たりにし、どうしても伝えたい物語として引退を撤回してまで制作されたのが本作。
複雑な制度に翻弄され、人としての尊厳を踏みにじられ貧困に苦しみながらも、助け合い生きていこうとするダニエルとケイティ親子との心の交流が世界中を感動と涙で包み込み、カンヌ国際映画祭ではパルムドールを受賞しました。
労働者や社会的弱者に寄り添い、彼らを取り巻く厳しい現実と、それでも今日を懸命に生きようとする人間たちを描き続けてきたケン・ローチ監督の最高傑作と名高い作品です。
- 監督
- ケン・ローチ
- 出演
- デイヴ・ジョーンズ、ヘイリー・スクワイアーズほか
- 作品情報
- 2016年 / イギリス、フランス、ベルギー映画 / 英語 / 原題 : DANIEL BLAKE
- 配給
- ロングライド
- 配信
- U-NEXT(2021年12月時点)
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