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映画『ドリーム・ホース』の感動をさらに高める役割を果たした音楽に迫る
週10ポンドずつ出し合って競走馬を共同で育て、ウェールズの小さな村に奇跡を起こした実話を映画化した『ドリーム・ホース』が1月6日(金)より日本公開!
ひとりの主婦の思いつきをきっかけに、再び取り戻した生きがいがそれぞれの人生に胸の高鳴りを呼び起こし、活気を失ったコミュニティを復活させた、新春にふさわしい奇跡の実話感動作です。
劇中の音楽を手がけたのはベンジャミン・ウッドゲイツ。ロイヤル・カレッジ・オブ・ミュージックを卒業後、映画やTVドラマなどの作曲、アレンジで活躍しています。
Benjamin Woodgates
映画の感動をさらに高める役割を果たした『ドリーム・ホース』の音楽について、ベンジャミンに話を聞きました。
──まず、映画をご覧になった感想からお聞かください。
この映画を観たとき、思いがけない場所に希望や誇り、美しさを見出すことがテーマなんだと感じました。
英国には弱い立場にある人たちが強者に向かっていく映画がたくさんありますが、この物語からは特に市井の人たちの信頼関係が描かれています。
おそらく、実際の場所や出来事に根ざしているからでしょうが、中心人物であるジャネット・ヴォークス(以下、ジャン)の厳格さと鋭さも理由のひとつでしょう。
脚本を読み、映画の初期編集を観たとき、脚本家のニール・マッケイと監督のユーロス・リンが、物語と登場人物に温かさと感受性、そしてウィットのセンスをもって接していることがよくわかりました。
また、この映画は、ウェールズならではの物語性と、ウェールズで撮影・編集され、主にウェールズのキャストとスタッフによって作られたという、強い誇りと郷土愛があります。
──そうした印象をどのように音楽にしていったのでしょうか。
この映画の中心人物であるドリーム・アライアンス、ジャンとブライアン・ヴォークス夫妻、ハワード・デイヴィス、そしてシンジケートのメンバーは、本当にリアルな存在なのです。
監督のユーロスは、この映画の音楽を南ウェールズの見かけをよくしようとするようなハリウッド的なアプローチをしてはいけないと考えていました。
この物語の登場人物たちの生活を反映したものでなければならなかったからです。
そこで私は埃をかぶったような古いアップライトピアノ、アコーディオン、フィドル、ハルモニウム(足踏み式オルガンの一種で、今では英国中のパブや教会、屋根裏部屋に使われず、愛されずに置かれている)を使おうと思いました。粗くてアットホームなサウンドを奏でることができるからです。
対照的に、競馬場の音楽は荘厳で、お高くとまったクラシカルなもので競馬の富と歴史(「王のスポーツ」)を表現し、登場人物たちがいかに場違いな環境に置かれているかも示しています。
──映画音楽は、シーンの雰囲気や登場人物の感情の起伏を表現するために欠かせない要素です。劇中のジャンの心情や、ドリーム・アライアンスが疾走するシーンを音で表現する際、どのようなことを意識されましたか?
この映画では、音楽がドラマを追うべきなのか、ジャンの体験を追うべきなのか、それともドリーム・アライアンスの体験を追うべきなのか、といった根本的な視点に直面する場面が多くあります。
ジャンとドリームの絆、つまりレースがふたりに与える興奮、自由、解放感に焦点を当てることにしたのです。
レースシーンでは、パワーと軽さの両方を表現する音楽を作りたいと考えました。半トンの骨と筋肉が地面に叩きつけられるのに、馬はまるで芝生の上を滑っているかのように見えます。
このような場面では、弦楽器を使って、馬の毛の弓の弦へのアタックと、弦楽器の持つスピードと器用さの両方を生かしました。
ドリーム・アライアンスが疾走する場面では、馬が勢いよく飛び立ち、ジャンの夢も飛び立つような感じを出したいと思いました。
メロディを飛躍させ、脈打つようなリズムでアンサンブルを盛り上げていき、レースシーンでは、スタートを切る瞬間のドキドキ感と、その後のゆったりとした気持ちの波、このふたつの感情を音楽で表現したんです。
──ウェールズが舞台という設定は、作曲に何らかの影響を与えましたか?
監督は、音楽がウェールズを語り、勇敢で大胆であり、観客を新鮮に感動させるものであってほしいと望んでいました。
登場人物たちのキャラクターは、音楽を作る上で大きな役割を果たしましたが、物語の舞台となった風景も同様です。
南ウェールズの農村地帯は独特な風景を持ち、陰影に富んだ丘には産業の歴史における痕跡が見られ、村はその産業が衰退したことを静かに物語っています。この風景こそが私が作った音楽に影響を与えました。
私たちは、あえて荒削りで洗練されていない音を目指し、各楽器にクローズアップして録音し、楽器の息づかいをとらえました。
美しいものと平凡なものを並べ、登場人物や風景と一体化したような音楽を作りたかったのです。
レースのシーンにエネルギーと推進力を与えるために、ウェールズの歴史的な楽器であるタブルドのデザインをもとに、南ウェールズのニューポートで新しいドラムを制作してもらいました。
木とロープと山羊の皮で作られたこのドラムは、土臭く生々しい音を出し、音楽を前面に押し出す役割を果たしました。
──サウンドトラックからはケルト音楽の要素も感じられます。これは意識的なアプローチなのでしょうか?
ケルト音楽は美しい音楽ではありますが、登場人物たちが暮らしている現在のウェールズを反映しているとは思えず、ウェールズのロック・ソング(マニック・ストリート・プリーチャーズやスーパー・ファーリー・アニマルズ、カタトニアなど)の方が適していると思いました。
しかし、ドリーム・アライアンスが物語に登場するとき、私たちは彼に、生の、未開の精神に触れるような、素朴な感じのする音楽的な声を与えたいと思いました。
そこで、村(家庭的で温かい)と競馬場(洗練された冷たい)という対照的な音世界をつなぐ架け橋として、フィドルのソロを使用しました。
このフィドルは、ケルト音楽の響きをもたらしながら、弦楽オーケストラの古典的な慣習に抗い、映画の最後の数キロでついに勝利を収め、アンサンブルを躍動感あふれるダンスへと導いてくれました。
──これから映画を見る日本の人たちに、どのシーンに注目してもらいたいですか?
この映画は、サンダンス映画祭に出品され、南ウェールズから5,000マイル離れたユタ州で初上映されました。
私たちの物語が、このような遠くに住む違う国の人々の心に響くかどうかはわかりませんでしたが、観客は文字通りのスタンディング・オベーションを見せてくれました。
この映画はウェールズに強く根ざしていますが、テーマは普遍的なものだと思いますし、日本の方にも共感していただけると思います。
特に英国を訪れたことのない日本の観客のみなさんに注目してほしいのは、映画の舞台になった南ウェールズの渓谷の荒々しい美しさと、ドリーム・アライアンスがトレーニングや試合のために訪れるイングランドの競馬場や馬具置き場の手入れの行き届いた美しさとのコントラストです。
このふたつの風景は、映画の重要な一部であり、登場人物のアイデンティティの核心となるものだからです。
ドリーム・ホース
- 監督
- ユーロス・リン
- 出演
- トニ・コレット、ダミアン・ルイス、シアン・フィリップス、キャサリン・ジェンキンスほか
- 作品情報
- 2021年 / イギリス映画 / 英語 / 原題 : Dream Horse
- 公開日
- 2023年1月6日(金)より、新宿ピカデリー・ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
- 配給
- ショウゲート
©2020 DREAM HORSE FILMS LIMITED AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
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