英国の国民的人気ドラマ『ヴェラ～信念の女警部～』の見どころをチェック！

2011年5月日にITVで放送がスタートし、現在も息の長い人気を保ち続けている国民的人気ドラマ『ヴェラ～信念の女警部～』。鬼上司的な刑事ヴェラが、人間の心の機微を深く読み取りながら事件を解決に導く名ドラマの見どころを、ミステリー専門チャンネル「AXNミステリー」が解説してくれました。

現在シーズン12まで放送されている国民的ドラマ

『ヴェラ～信念の女警部～』は、英国北東部にある架空の警察署「ノーサンバーランド＆シティ」を舞台に、ベテラン女刑事ヴェラが、部下を叱咤激励しつつ、地元で起きた殺人事件を解決していくクライム・ミステリーです。英国でも大人気で、現在シーズン12まで放送されています。

女刑事ヴェラを演じているのが、ゴールデン・グローブ賞ほかBAFTAなどで輝かしい受賞歴を誇る英国の名優、ブレンダ・ブレシン。OBE（大英帝国勲章 : Order of the British Empire）の称号も与えられています。どこかで見たことある人だな、と思ったら映画『プライドと偏見』で主人公キーラ・ナイトレイの母親役、『秘密と嘘』では主人公を演じていました。いずれも声が高く、どちらかといえば陽気な役柄だったので、今回の女刑事役は、だいぶ雰囲気が違います。

ドラマの舞台は、英国北東部

ドラマの舞台、ノーサンバーランドはイングランドの北東端にあり、スコットランドとの国境に位置し、東は北海に面しています。一般観光客は、あまり行くエリアではないですね……。私も一度行っただけですが、どんよりした空と荒涼とした風景しかおぼえていません。ドラマ中にはダラム、カーライル、ニューカースル・アポン・タインなど、周囲の大きな町や都市の名前が出てきます。

以前ニューカースル出身の友人に、「どんなところ？」と聞いたら、「田舎。ロンドンでニューカースル出身だといったら、田舎者だと言われた」とのことでした。独特の訛りもあり、主人公の女刑事や部下たちが、ロンドンとは違うアクセントで話していますね。バスがブスのように聞こえます。それがまるでノーサンバーランド出身のように自然な感じで、脇役も含めて名優ぞろいのドラマなのです。

犯行現場として、あるいは犯人を追いかけてヴェラのおんぼろなランドローバーが疾走する丘陵地帯は、ノーサンバーランド国立公園あたりで撮影されているのでしょうか？小説『嵐が丘』を思い起させるような寒々しく広大な丘陵地帯は、とても英国らしい風景です。

ヴェラの地味な服装は、典型的なカントリーサイドの中年女性？

おばさん刑事ヴェラとイケメンの部下が相棒、というのもおもしろい組み合わせです。こうした服装の中高年女性、英国の地方でもだいぶ減りましたが、以前はいっぱいいました。暗い色または大きな花柄ブラウス、オールシーズンおかまいなしのキルトのベスト（ヴェラと同じくモスグリーンがいちばん人気）、カーキ色またはアイボリーのコートなどなど。さえない中年女性の風体のヴェラは、最初、調査対象の人々を油断させますが、丹念な操作と鋭い観察眼と思考力で追及し、事件を解決していきます。

犯罪者や事件の真相を隠そうとする者、それをかばう者には強く対応しますが、弱者によりそう優しさもあり、最初はこのおばさんが主人公？と思ったりしたのですが、だんだんとそうしたヴェラの魅力にはまっていきました。

彼女は1984～85年にはすでに警察官だったそうなので、現在60代くらいでしょうか？同世代としては「ヴェラ、おしゃれしなくてもいいから、もうちょっとちゃんとした食事して……」と心配になりますが、寝食を忘れて捜査に没頭する姿にもまた、惹きつけられるのです。

信念だけでなく、執念も……

主人公のヴェラは捜査に関しては“信念”の人ですが、犯人やそれをとりまく登場人物たちは、“執念”の人が多いようです。35年前の出来事を忘れられず、現在もまだ警察を憎み、間違って殺人を犯してしまう老人や、昔のトラブル、殺人、失踪、隠したい過去などが引き金となり、また殺人が起こってしまうことも。

ノーサンバーランド一帯は、造船業や炭鉱で栄えたエリアだそうですが、第二次世界大戦後は衰退し、失業者の増大、治安の悪化が問題となってきました。同じ地域を舞台にした映画『リトル・ダンサー』では、そのあたりの事情が出てきますね。90年代以降は外国企業の誘致もはかったそうですが、それがまた新しい軋轢に。ドラマには外国人も多く登場し、英国という国の社会のひずみが垣間見えます。

2011年から始まったこのドラマ・シリーズ、現地英国でも大好評で、まだまだ続く予定。シーズンを追うごとに、ヘアスタイルも以前よりちょっとだけ気をつかうようになったり（!?）、少し部下に優しくなったかもしれません。古株のおじさん刑事ケリーには、あいかわらず遠慮がないようですが。英国好き、英国の警察ドラマ好き、英国のクライム・サスペンスドラマ好きには、ぜひぜひ見ていただきたいドラマです。