ドラマ『シェトランド』の魅力を徹底解説! 閉鎖的な島で繰り広げられるクローズド・サークル・ミステリー

ドラマ『シェトランド』

スコットランド北部に広がるシェトランド諸島を舞台に、ジミー・ペレス警部が鋭い直観と捜査能力で難事件解決に挑むドラマ『シェトランド』。イギリス本土からも離れたこの閉鎖的なコミュニティで巻き起こる数々の事件では、被害者も、容疑者も、事件関係者も全員顔見知りという究極のクローズド・サークル・ミステリーが楽しめます。今回は、ミステリーファン必見のこのドラマの魅力をご紹介します!

現代英国ミステリーの傑作小説を映像化!

『ヴェラ~信念の女警部~』の原作者アン・クリーヴスが手がけた4部作の推理小説を映像化した『シェトランド』。スコットランドの北方、大小約100もの島からなるシェトランド諸島を舞台に、ジミー・ペレス警部が難事件の捜査に挑む本格ミステリーです。アン・クリーヴスは、この「シェトランド四重奏」シリーズ第1作目である『大鴉の啼く冬』で、名誉あるCWA(英国推理作家協会)賞最優秀長編賞を受賞しました。

ドラマ『シェトランド』

冷たい海に囲まれた荒涼とした土地を舞台にした現代ミステリーという共通点がある2作品ですが、『シェトランド』の方が、より人口が少ない閉鎖的なコミュニティでの事件を取り扱っています。事件の被害者も、容疑者も、関係者も全員顔見知り……という状況の中で、ペレス警部がその鋭い直観と捜査能力を駆使して事件の解決に挑んでいきます。

「ロンドン警視庁からの応援」=「事件の捜査がもっと進まなくなる」という意味合いを持っていたり、警察署では普通に犬がくつろいでいたり(しかもクッキー泥棒)と、地方の警察で働く警部が主人公、という作品ならではの独特の雰囲気を楽しめますよ。

舞台は美しい景観のシェトランド島

物語の舞台となるのは、ブリテン諸島の最北端に位置するシェトランド島。海鳥が羽ばたく切り立った海岸線から荒涼とした大地が続く美しい景観と、長い歴史の営みを表す数々の考古学的発見で注目される地域で、国内外から観光で訪れる人も多い場所です。とはいえ景観の美しさというものは往々にして、地元住民の利便性を天秤にかけた結果であることは間違いありません。

ペレス警部の年頃の娘は電波も満足に届かない上に、コンビニもないこの土地に愚痴を漏らすこともしばしば……。多くの住民が暮らし、警察署を含めた重要施設が集中するメインランドから、事件現場が遠く離れている場合には、車ごとフェリーで移動する、というシーンもたくさんあります。この不便さこそが良い、と娘に言うペレス警部ですが、確かに若者にとって、イギリス本土よりも娯楽が少ないことは間違いありません……。本作では、そんな厳しくも美しい自然の中で暮らす人々の生活に密着した人間ドラマも楽しめます。

ドラマ『シェトランド』

また、劇中の台詞に「天気がよければノルウェーや、アイスランドまで見える」という表現があるのですが、その地理的な条件も、このドラマの大きな特徴です。地方に行けば行くほど、人間関係の流出入はゆるやかなものになっていく、というのはどこの国でも共通する部分だと思いますが、このドラマでは一口に「外から来た人」といっても、それがイギリス本土からなのか、それともヨーロッパの国から来た人なのか、という国レベルで異なる場合が頻繁に発生します。

誰かの身元を確認したい、と思った時には、ロンドン警視庁ではなくノルウェー警察に電話をしなければならないこともあり、島は閉鎖的でありながら国際的に開かれてもいる……という特異な状況を作り出しています。ペレス警部を含めた警察官の仕事量が一向に減りそうにないのもうなずけます。

主人公ペレス警部と、彼を取り巻く個性豊かなキャラクターたち

さて、そんな地域密着型のミステリーが楽しめる『シェトランド』ですが、登場人物たちも魅力あるキャラクターであることを紹介しておかなければなりません。ミステリー作品なので謎解きのクオリティはもちろん大事ですが、個人的にはやはり登場するキャラクターを愛せるかどうかも重要なことだと思うのです。

主人公ジミー・ペレス警部を演じるのは、ダグラス・ヘンシュオール。ITVで2007年から2011年にかけて放送されたSFドラマ『プライミーバル』に出演。イギリス各地に現れた時空の切れ目から危険な古代生物や未来生物が次々と現代にやってくる中、謎を解明するべく亀裂の探索に向かう生物学者ニック・カッターを演じていました。このドラマは過去にNHKでも放送されたことがあるため、彼にピンと来る方も多いのではないでしょうか。

ドラマ『シェトランド』

ジミー・ペレス警部

そんなダグラス・ヘンシュオール演じるジミー・ペレス警部。生まれも育ちもシェトランド島、という生粋の地元民ですが、「島に帰ってきた」という発言から、実は何年か島を離れていた期間があるようです。

ひとり娘のキャシーと一緒に暮らしていますが、実はその娘は自分の実の子供ではなく、数年前に亡くなった妻の連れ子。さらにもっと言えば、そんな妻の前の夫もこの島に来ていて、ペレス警部は、娘が実の父親と過ごせるよう週末には彼の家に送り届けることもあります。

ドラマ『シェトランド』

ペレスの娘キャシー

かなりさらっと仲睦まじく平穏な様子で描かれているこの親子関係。どうしてもこういう複雑な人間関係が気になってしまい、あとでとんでもないことにつながるのではないかとか怯えてしまうのは、ドラマの見すぎでしょうか……。

島の住民全員と顔見知りで、事件の聞き込みに出向けば母親の幼なじみだったり、捜査に協力してもらおうと頼んだ相手は自分のかつての恩師だったりと、一見この上なく仕事がやりにくそうなペレス警部ですが、なんてことなさそうに 淡々と業務に励みます(そこを気にしていては、田舎で仕事はできないのかもしれませんが)。

そんなペレス警部の部下もまた個性的です。刑事への昇進を夢見るサンディ・ウィルソン巡査は、ペレス警部に忠実で勤勉な若き制服警官です。シェトランド島で生まれ育った地元の青年で、シーズン1の第1話では、なんとメインランドから離れた小島で暮らす彼の祖母が殺害される事件が発生し、ペレス警部が捜査に当たります。

ドラマ『シェトランド』

サンディ・ウィルソン巡査

事件のためとはいえ自分の父親やいとこに捜査の目が向けられ、ペレス警部からも捜査から外れるよう言われてしまう中、自分にできることをしたいと警官としての職務に徹しようとする姿はかなり応援したくなるキャラクターです。『刑事ジョン・ルーサー』や『リッパー・ストリート』に出演しているスティーヴ・ロバートソンが演じています。

さらにもうひとり、ペレス警部を支えるアリソン・マッキントッシュ警部補もこのドラマには欠かせません。ドラマ第1話ではまさかの二日酔いでフラフラの状態で出勤。事件現場で待っていたペレス警部の前で「おえっ」とやってしまい、「シェトランド島に非番はない」と遠回しにたしなめられる初登場を見せた彼女ですが、若い警部補としてイギリスだけでなくヨーロッパの警察との連絡係も務めるなど優秀なようで、ペレス警部も頼りにしています。

ドラマ『シェトランド』

アリソン・マッキントッシュ警部補

ただ残念ながら男運はないようで……。恋人の名前を砂浜に描こうとして描き間違えるような残念な彼氏となかなかスッパリ別れることができず、ペレス警部からも「もう見限ってしまえ」といわれる始末。上司部下という関係でありながら、割とどうでもいいことを話していたり、お互いの失敗を黙ってカバーしたりとなかなかカジュアルな関係性も見どころです。演じているのは、アリソン・オドネル。テレビシリーズではゲスト出演が多かった彼女ですが、『シェトランド』ではじめてメインキャラクターとして起用され、以来全エピソードに出演しています。

いかがでしたでしょうか?

1話完結のミステリードラマでありながら、より狭いコミュニティを舞台にしている『シェトランド』。閉鎖的な地域、人の出入りも制限され、被害者の周りにいる人は誰もがよく知っている人物……という、クローズド・サークル・ミステリーの要素がたっぷりつまった謎解きを十分に楽しめる作品となっています。

加えて、イギリス本土からもヨーロッパからも程よく遠いというこの土地の特色がかなり効いていて、被害者や容疑者の足取りを追う時のスケールの広さや、島間の移動にはフェリーが不可欠という制限など、より複雑で大胆なトリックが生まれる素質を生かした上質なミステリーを堪能できます。

『ヴェラ~信念の女警部~』にハマった方ならもちろん楽しめると思いますし、本作独特のこうした特徴が刺さる方なら必見です。もちろん、シェトランド島の雄大で神秘的な景観に惹かれて観始めるのも大いにオススメです!

最新シーズンであるシーズン6がついに到着し、これまでの全5シーズンを含め2023年4月29日(土)から“2日間まるごとシェトランド”と題して、全19話を一挙放送。一気に楽しめる貴重な機会ですので、気になる方はぜひチェックしてみてください!

文 / 瀧脇まる(うりまる)

シェトランド(シーズン1~6・全19話)

ドラマ『シェトランド』

放送日
4月29日(土・祝)6時~
リンク
https://www.mystery.co.jp/programs/shetland/

\加入月0円!簡単視聴!/

 

Link

https://www.mystery.co.jp/

Share
  • facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Mail

Sponsered Link

Sponsered Link

Recommends
合わせて読みたい

Sponsered Link

Sponsered Link