NTライブ先行上映イベントレポート – アンドリュー・スコットが紡ぐ英国演劇の魅力

『ワーニャ』アンドリュー・スコット

英国演劇の新たな傑作『ワーニャ』が、NTライブでの上映を経て、ついに日本橋TOHOシネマズでの先行上映を迎えました。アンドリュー・スコットの圧巻の一人芝居と、英国演劇に詳しい演劇ライターの村上祥子氏の洞察に満ちたトークイベントが、観客を魅了しました。

アンドリュー・スコットの躍動

『ワーニャ』アンドリュー・スコット

5月18日に日本橋TOHOシネマズで開催された『ワーニャ』の先行上映は、満席の大盛況のうちに幕を閉じました。本作は、ローレンス・オリヴィエ賞プレイ部門リバイバル賞を受賞し、アンドリュー・スコットの卓越した演技が光る話題作です。

トークイベントで明かされる、演劇の裏側

『ワーニャ』アンドリュー・スコット

村上祥子氏をゲストスピーカーに迎え、シェイクスピアを専門とする東京大学大学院の河合祥一郎教授による司会で進行されたトークイベントでは、アンドリュー・スコットの演技に対する熱い議論が交わされました。村上氏は、アンドリューが演じ分ける8人のキャラクターの繊細さや、彼のモノローグの才能について詳細に語りました。

村上氏によると「8人の登場人物を演じ分ける時に、もっとくっきりと声音を変えたり、わかりやすくすることもできたと思いますが、キャラクターごとに演じ方をとても繊細に変えています。表情ひとつ、または少し振り返っただけで人物が変わっている。なので、この『ワーニャ』をNTライブで観るのは大正解ですね。劇場の遠くの席から観ると、そこまでの表情の違いには気づけなかったかもしれません」。

そして、「アンドリュー・スコットは元々、モノローグがとてもうまい俳優で、サイモン・スティーヴンスとは過去に何回か舞台を一緒に手がけています。初めて一緒に取り組んだのは2008年上演の『Sea Wall』ですが、それも30分のひとり舞台でした。『語らせたくなる俳優』なのでしょう」など、アンドリューの魅力を具体的な情報とあわせて教えてくれました。

ひとり芝居の挑戦

『ワーニャ』アンドリュー・スコット

村上氏が彼らのインタビューで知った限りでは、サイモン・スティーヴンスは当初、普通に複数のキャストが出る想定で翻案をしていたようです。そして、翻案・演出・主演の3人が揃った本の読み合わせのタイミングで、たまたまアンドリュー・スコットがいくつかの役柄を演じてみた時に、「これはよいのでは」という話になり、次々と役柄を増やすうちに「ひとりで演じてみたらどうか」という流れになったというエピソードがあるそうです。これについて村上氏は「どこまでが本当か疑いたくなるようなエピソードですが、翻案を読む限り、ひとり芝居とは結びつきませんでした」と語っていました。

観客を惹きつける、アンドリュー・スコットの魅力

英国上演時には絶賛のレビューを受けた本作ですが、アンドリューが演じ分ける8人のキャラクターと原作との違いによる混乱を避けるため、河合祥一郎教授が登場人物の相関図を作成しました。以下が相関図となります。

ワーニャ相関図

全国で楽しむ『ワーニャ』

5月24日(金)にはTOHOシネマズ 日本橋にて、楯岡求美・東京大学教授と映像翻訳家の柏木しょうこ氏による公開記念トークイベントを予定。また、東京だけでなく、神奈川、愛知、大阪、兵庫、京都、福岡でも上映が始まります。この機会に、映画館で英国演劇の魅力を体験してください。

脚色
サイモン・スティーヴンス(作 : アントン・チェーホフ)
演出
サム・イェーツ
デザイン
ロザンナ・ヴィズ

主演

アンドリュー・スコット

鑑賞料

一般3000円、学生2500円(要・学生証の提示)、障害者2500円
作品情報
2024年 / イギリス映画 / 英語 / 原題 : Vanya
公開日
5月24日(金)より、TOHOシネマズ日本橋ほか公開
配給
カルチャヴィル

ナショナル・シアター・ライブとは

ナショナル・シアター・ライブ(NTLive)は、英国で上演された話題の舞台を世界の映画館で気軽に鑑賞できる上映イベントです。NTLiveによる最先端でこだわりの撮影技術は、上演時のパフォーマンスを舞台上で巻き起こる役者同士の空気感と鮮度はそのままに、臨場感あふれる映像でスクリーンへ届けます。感情の揺らぎをとらえるクローズアップから、趣向を凝らした美術セットを隈なく楽しめる舞台のワイドショットまで、NTLiveなら映画館の観客の誰もが現地の劇場のベストシートで鑑賞するような観劇体験が可能です。

Photo : NTLive『ワーニャ』 ©️ Marc Brenner

Link

https://www.ntlive.jp/vanya

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