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ナショナル・シアター・ライブ『インター・エイリア』12月25日にトークイベント付き先行上映、フクチマミ氏と井上優氏が登壇
ロンドンのロイヤル・ナショナル・シアターによる舞台上映企画「ナショナル・シアター・ライブ(NTLive)」の最新作『インター・エイリア』が、2025年12月25日(木)にTOHOシネマズ日比谷でトークイベント付き先行上映イベントを開催し、翌26日(金)から全国7館で一般公開されます。先行上映では本編上映後に、漫画家・イラストレーターのフクチマミ氏と明治大学文学部教授の井上優氏を招いたトークイベントを開催。仕事と育児の両立という本作のテーマについて議論が交わされます。
12月25日・TOHOシネマズ日比谷での先行上映イベント概要

先行上映イベントは2025年12月25日(木)18時30分にTOHOシネマズ日比谷で開催され、本編上映後にトークイベントが行われます。終了は20時50分頃を予定しており、チケットは12月22日(月)24時から同劇場の公式サイトで販売開始。トークイベントでは、本作が提示する「親として正しい行いとは何か」という問いを軸に、仕事と育児の両立を経験してきた父親と母親、それぞれ異なる立場のゲストが本音の議論を展開します。
ゲストプロフィール:フクチマミ

フクチマミ氏は漫画家・イラストレーターとして、日常生活で感じる難しいテーマをわかりやすく伝えるコミックエッセイを多数手がけています。著書には『マンガでおさらい中学英語』シリーズ(KADOKAWA)、『マンガで読む 子育てのお金まるっとBOOK』(新潮社)、『晩ごはん症候群』(主婦の友社)、『おうち性教育はじめます』シリーズ(KADOKAWA)などがあり、教育や子育て、お金と暮らしにまつわるテーマを等身大の視点で描いてきました。自身も仕事と育児の両立を続けてきた経験から、本作のテーマと深く共鳴する視点が期待されます。
ゲストプロフィール:井上優

井上優氏は明治大学文学部教授で、演劇理論および西洋演劇史を専門とする研究者です。近年は劇作家・批評家の岩田豊雄の業績再評価や、近代日本におけるシェイクスピア受容・上演史を主な研究対象としています。明治大学シェイクスピア・プロジェクトのコーディネーターとして学生によるシェイクスピア上演を統括・指導し、国際演劇評論家協会日本センター会員、日本演劇学会理事も務めています。演劇研究の立場から、英国発の現代作品『インター・エイリア』をどのように読み解くのかにも注目が集まります。
12月26日から全国7館で一般上映スタート

『インター・エイリア』は先行上映の翌日となる2025年12月26日(金)から、全国7館の映画館で一般公開されます。上映劇場はTOHOシネマズ日比谷、シネ・リーブル池袋、TOHOシネマズららぽーと横浜、ミッドランドスクエア シネマ、大阪ステーションシティシネマ、札幌シネマフロンティア、熊本ピカデリーです。ナショナル・シアター・ライブは、ロンドンのロイヤル・ナショナル・シアターや英国各地の劇場で上演された舞台を高画質で収録し、世界各国の映画館で上映するプロジェクトで、ロンドンまで行かずとも現地と同水準の舞台を日本で体験できる点が支持されています。
上映期間が限定されるイベント形式のため、鑑賞を希望する場合は各劇場の公式サイトで上映スケジュールを確認しておくことをおすすめします。同時期には『欲望という名の電車』(東京・Morc阿佐ヶ谷で12月11日まで)、『真面目が肝心』(高知県立県民文化ホールで12月15日に2回上映)など、他の英国舞台作品も全国各地で順次上映されています。
働く母親と判事としての葛藤を描く物語
『インター・エイリア』は、判事として活躍しながら子育てに奮闘する女性ジェシカを主人公に、仕事と家庭の両立に直面する現代の働く親の姿を描きます。彼女は母親業とキャリアを両立させようと日々努力しますが、男性優位な職場でのプレッシャーと、家事や育児を完璧にこなして当然とされる社会的な期待の間で追い詰められていきます。物語はある出来事をきっかけに、ジェシカが親として、そして法を扱う専門職として難しい選択を迫られる局面に焦点を当てており、「親として正しい行いとは何か」という問いを観客に投げかけます。
ロザムンド・パイク主演、実力派キャストと演出陣
本作でジェシカを演じるのは、映画『ゴーン・ガール』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、『パーフェクト・ケア』でゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞した英国人俳優ロザムンド・パイクです。法と倫理の狭間で揺れる判事という難役を担い、内面の葛藤を繊細に表現します。共演には、ドラマ『ウォータールー・ロード』や舞台『ハリーポッターと呪いの子』で知られるジェイミー・グローヴァー、『ブロードチャーチ ~殺意の町~』に出演したジャスパー・タルボットが名を連ねています。演出はジャスティン・マーティンが手がけ、スージー・ミラーの脚本を通じて、働く親が抱える見えない負担や社会のまなざしを舞台上で立体的に描き出しました。
スージー・ミラーが語る「インター・エイリア」に込めた意味
公開されている日本語版インタビュー動画で、作者のスージー・ミラー氏は本作に込めたメッセージを語っています。自身も弁護士であり母親でもあるミラー氏は、本国プログラムへの寄稿文で、作品タイトルの意味や働く女性が直面する現実、そして評価のまなざしにさらされる女性たちの姿について詳しく説明しています。
タイトルが示す「その他のことの中で」
ラテン語のinter aliaは「その他のことの中で」を意味する法律用語であり、ミラー氏はこれを働く女性たちが日々の暮らしをどのようにやり繰りしているかを象徴する言葉として用いています。女性たちが仕事で高い成果を上げる一方、その背後には家族の生活を調整し、心の負担を引き受け、家事に対応し、突然の出来事にも備えるといった多くの「その他のこと」が存在していると指摘します。
見えない負担と「隙間」で生きる感覚
ミラー氏は、ある女性の「私は自分の人生を、他の人たちの人生の隙間で生きているんです」という言葉を紹介し、働く女性たちが自分の時間や感情を家族や職場に割きながら生きている現実を浮かび上がらせます。母親であること、妻であること、職業人であること、そして社会の一員としての女性であることの間に存在する目に見えない境界線を、女性たちは日々行き来せざるを得ません。最善を尽くしてもなお、その重なり合いや相反する期待に圧倒されることがあるとし、作品はその感覚をドラマとして可視化しています。
常に評価される側として生きる女性たち
作中でジェシカは判事という「判断する側」でありながら、同時に「評価される側」でもあります。母親としてのふるまい、仕事への向き合い方、働く時間、女性らしさ、フェミニズムへの姿勢、パートナーとの関係など、さまざまな観点から彼女は周囲に評価されます。ミラー氏は、多くの女性がそうであるように、ジェシカ自身も自分を厳しく裁いていると述べ、社会からの視線と自己評価が二重の重圧としてのしかかる構図を描き出しています。こうした視点は、司法制度を描いた前作『プライマ・フェイシィ』とも通じるものであり、法と個人の経験を交差させながら社会のあり方を問い直すミラー氏の作家性を示しています。
父親と母親、それぞれの視点から両立テーマを深掘り

12月25日のトークイベントでは、父親と母親という異なる立場を持つフクチマミ氏と井上優氏が、仕事と育児の両立や「親としての正しさ」について意見を交わします。漫画という表現手法で生活者のリアルを描いてきたフクチマミ氏と、長年にわたり西洋演劇を研究してきた井上優氏が同じ作品を題材に語り合うことで、観客は自分自身や身近な人の状況と重ね合わせながら、本作のテーマを多角的に捉えることができるでしょう。ジェンダー平等や育児と仕事の両立支援が大きな社会課題となる中で、英国の現代演劇がどのようにそれらを作品化しているかを知る機会としても、今回の先行上映イベントは意義深い場となりそうです。
Photo by Manuel Harlan
Link
https://www.ntlive.jp/interalia
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