時代の寵児ノエル・カワードが映画『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』のキーマンに。離婚スキャンダルのクローリー家を救う

DOWNTON ABBEY: The Grand Finale

世界200か国以上で放送された英国貴族ドラマの金字塔『ダウントン・アビー』の映画第3弾『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』が、2026年1月16日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開されます。本作では実在の英国俳優・作家のノエル・カワードが重要なキーマンとして登場し、長女メアリーの離婚スキャンダルで窮地に陥ったクローリー家を救う鍵を握ります。




セレブリティの先駆者、ノエル・カワードとは

 

© Allan Warren / CC BY-SA 3.0

© Allan Warren / CC BY-SA 3.0

ノエル・カワード(1899年~1973年)は、俳優、劇作家、作曲家、演出家として多方面で才能を発揮した英国の文化人です。トニー賞やアカデミー賞を多数受賞し、ガートルード・ローレンス、チャーリー・チャップリン、マレーネ・ディートリヒらと親交があり、首相になる前のウィンストン・チャーチルとはしばしば写生に行く絵描き仲間でした。セレブリティという概念が確立される以前に、既に絶大な有名人として多大な影響力を持っていた彼は、華やかさの象徴であり、上流階級の貴族たちを魅了。第一次世界大戦後のジャズ・エイジの風潮のなか、中流階級の移ろいやすい生活や恋愛ゲームをおしゃれでウィットに富んだ作風で描き、長く続いたヴィクトリア朝の厳格な雰囲気に飽き飽きしていた若い世代から熱狂的に支持されました。



メアリーの離婚を喜劇のネタにする自由な思想

『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』07

物語では、長女メアリーの離婚により地元社交界の晩餐会への出席を親しい友人たちから断られた際、次女イーディスが「彼に会いたいあまり、皆が欠席を返上する」と見込み、友人のカワードを招待するという大胆な策に出ます。メアリーの離婚を喜劇と捉え、のちに自身の代表作となる戯曲『私生活』(Private Lives、1930年初演)へのネタとして楽しむ彼の振る舞いは、窮地のクローリー家の追い風となります。

『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』06

『私生活』は高級ホテルのスイートルームで熟年の夫婦や愛人たちが織りなす人間ドラマで、14年後の再演では716回というロングラン上演を記録したカワードの代表作です。カワードは「その時代の空気を完璧に作品に取り入れた人物」であり、「何が変わろうとしているのかを察知」している人物でもあり、社会変革のきっかけを作った自由な思想の持ち主として、本作においてメアリーが旧習に囚われた上流階級社会で再び受け入れられるための道筋を作った存在となっています。



戯曲『ビター・スウィート』と楽曲が彩る映画

『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』10

脚本のジュリアン・フェローズは、カワードを登場させた理由について、彼の戯曲『ビター・スウィート』(Bitter Sweet、邦題『ほろにが人生』)が1930年にロンドンで初演されたことに着目したと説明しています。フェローズが望んだのは、「クローリー家にとって脅威とはならない穏やかな現代性を持ってきてくれるキャラクター」であり、カワードはまさにその条件を満たす存在でした。本作では『ビター・スウィート』で使用された楽曲「I’ll See You Again」をはじめ、彼の曲が多数使用されています。ミュージカル仕立ての戯曲である『ビター・スウィート』は1929年に初演され、カワードの音楽的才能を示す作品として評価されました。



監督の父が譲り受けた銀のピルケースが小道具に

『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』03

本作には制作陣の温かい敬意が込められた演出があります。監督のサイモン・カーティス氏の父が「ノエル・カワードの日記」を出版した縁で、カワード本人から譲り受けた「NC」のイニシャル入り銀のピルケースが小道具として登場します。このような実物の小道具を用いることで、本作は1930年代の英国文化とカワードという人物へのリスペクトを視覚的に表現しています。サイモン・カーティス監督は『ダウントン・アビー/新たなる時代へ』や『黄金のアデーレ 名画の帰還』などで知られる実力派で、前作に続き本作でもメガホンを取りました。



1930年代の変革期を象徴する最終決断

『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』01

本作の舞台は1930年です。クローリー家とダウントン・アビーの使用人たちは、きらびやかな夏の社交シーズンをロンドンで迎えますが、長女メアリーの離婚のニュースが社交界を揺るがし、一家の名声を脅かします。一方で、母コーラの弟ハロルドが遺産を投資で失敗したことが判明し、財政難に苦しむダウントンを救うためにロンドンの社交用別荘を売却する提案がなされますが、父ロバートは英国貴族としてのプライドをかけて猛反対します。

『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』04

階下では料理長パットモアの引退が迫り、元執事のトーマスがノエル・カワードとともに再びダウントンへ招かれるなど、登場人物たちがそれぞれの転機を迎えます。ノエル・カワードという実在の英国文化人を通じて、変わりゆく時代と受け継がれる価値が描かれる本作は、シリーズ完結編にふさわしい作品となっています。

公開情報

 

『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』ポスター

 

監督
サイモン・カーティス
脚本
ジュリアン・フェローズ
出演
ヒュー・ボネヴィル、ローラ・カーマイケル、ジム・カーター、ラケル・キャシディ、ポール・コプリー、ブレンダン・コイル、ミシェル・ドッカリー、ケヴィン・ドイル、マイケル・フォックス、ジョアンヌ・フロガット、ポール・ジアマッティ、ハリー・ハッデン=パトン、ロブ・ジェームズ=コリアー、アレン・リーチ、フィリス・ローガン、エリザベス・マクガヴァン、ソフィー・マクシェラ、レスリー・ニコル、ダグラス・リース、ペネロープ・ウィルトンほか
ゲスト出演
アーティ・フラウスハン、アレッサンドロ・ニヴォラ、ジョエリー・リチャードソン、サイモン・ラッセル・ビール、ドミニク・ウェスト
作品情報
2025年 / イギリス映画 / 124分 / 英語 / 原題:Downton Abbey: The Grand Finale
公開日
2026年1月16日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国順次ロードショー
配給
ギャガ

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Link

https://gaga.ne.jp/downton_abbey_the_grand_finale/

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