ブライアン・イーノへのオマージュ:ジョーダン・ラカイがヒースロー空港で紡ぐ新たなアンビエント・ミュージック

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グラミー賞ノミネート経験を持つジョーダン・ラカイが、アンビエント・ミュージックの父ブライアン・イーノの名作『Ambient 1 – Music For Airports』にインスパイアされ、ヒースロー空港と協力して世界初の空港音源のみで制作した楽曲「Music for Heathrow」を発表しました。この夏、ヨーロッパ最大級の国際空港で新たな音楽体験が始まります。



ヒースロー空港の概要とその重要性

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Photo: British Airways

ヒースロー空港は、ロンドン西部に位置するヨーロッパ最大級の国際空港として、年間8,000万人以上の利用者を迎えています。5つのターミナルを持つこの空港は、世界230以上の目的地への玄関口として機能しており、この夏は1日あたり25万人の乗客が利用する予定です。同空港は英国の貿易、観光、投資のハブとしても重要な役割を担っており、約8万人の従業員が働く巨大な経済圏を形成しています。

ロンドンの国際ハブ空港としての役割

 

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Photo: British Airways

ヒースロー空港は、英国の国際的な玄関口として重要な役割を担っています。同空港は世界85か国、230以上の目的地を結ぶネットワークを持ち、国際線の利用者数では世界第2位の地位を維持しています。特に長距離国際線の拠点として、アジア、アメリカ、中東への重要な接続点となっています。毎日約1,300便が運航され、20万人以上の乗客が利用する世界最大級の空港のひとつです。

主要ターミナルとアクセス方法

 

Passengers with luggage arriving at London Heathrow Airport Terminal 2.

ヒースロー空港の5つのターミナルは、それぞれ異なる航空会社や路線を担当しています。ターミナル間の移動は無料のシャトルバスやヒースロー・エクスプレスで行うことができ、ロンドン市内へは地下鉄のエリザベス線やピカデリー線、ヒースロー・エクスプレスでアクセス可能です。各ターミナルには充実したショッピングエリアや飲食店が配置されており、待ち時間も快適に過ごすことができます。


ジョーダン・ラカイとは? プロフィールと活動

ジョーダン・ラカイは、ニュージーランド出身でロンドンを拠点に活動するマルチ・インストゥルメンタリストです。グラミー賞とアイヴァー・ノヴェロ賞にノミネートされた経験を持つ彼は、現代のソウル・ミュージックシーンで重要な位置を占めています。プロデューサー、ヴォーカリスト、マルチ・インストゥルメンタリストとして活動し、DIY精神に基づいた革新的な音楽制作で知られています。

経歴と音楽スタイル

 

ラカイは、ニュージーランドで生まれ、オーストラリアで音楽キャリアをスタートさせた後、ロンドンに移住しました。彼の音楽スタイルは、ソウル、ジャズ、エレクトロニック・ミュージックの要素を巧みに組み合わせたもので、トム・ミッシュ、ロイル・カーナー、アルファ・ミストといったUKジャズ・シーンの重要アーティストとのコラボレーションでも知られています。「Borderline」や「Midnight Mischief」などの曲で批評家からも高い評価を受けています。

最新アルバムと評価

 

2024年にリリースされた5枚目のアルバム『The Loop』では、初のトップ40入りを果たし、グラストンベリー・フェスティヴァルやロイヤル・アルバート・ホールでの公演を成功させました。また、2024年にはアビー・ロード・スタジオ初のアーティスト・イン・レジデンスに選ばれるなど、その才能が高く評価されています。シドニー・オペラハウスでのソールドアウト公演や、BBC Promのキュレーションも手がけるなど、国際的な活動を展開しています。


ヒースロー空港の音を使ったジョーダン・ラカイの新プロジェクト

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Photo: Matt Crossick/PA Media Assignments

「Music for Heathrow」は、ブライアン・イーノの名作『Ambient 1 – Music For Airports』へのオマージュとして制作された、世界初の空港音源のみで作られた楽曲です。ラカイは空港内の様々な場所で50以上の音を収録し、それらを素材として4つの楽章から成る作品を完成させました。このプロジェクトは、アンビエント・ミュージック・ジャンルの創始者とされるイーノの1979年の作品に敬意を表しながら、現代的な解釈を加えた革新的な取り組みです。

プロジェクトの背景と目的

 

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Photo: Matt Crossick/PA Media Assignments

このプロジェクトは、旅行者の興奮と期待感を音楽で表現することを目的としています。ラカイは「世界中を旅して多くの時間を空港で過ごしてきた経験から、旅行への期待感と興奮を音楽で表現したかった」と語っています。楽曲は旅行者の心を落ち着かせ、旅への期待を高める効果を狙って制作されました。また、夏休み前の緊張感を和らげ、フライト前の時間をより豊かなものにする狙いもあります。

制作過程と使用された音の特徴

 

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Photo: Matt Crossick/PA Media Assignments

ラカイは空港内の様々な場所で録音を行い、以下のような音源を楽曲に使用しました:

  • 手荷物ベルトの音をパーカッションに変換
  • パスポートスタンプの音をリズムトラックに活用
  • 飛行機の離陸音をシンセサイザーに変換
  • 手荷物管理のサイレンをソフトなシンセサイザーに変換
  • 館内アナウンスの「ディンドン」音
  • エスカレーターや水の音をアンビエント効果として使用
  • 管制塔とパイロット間の無線通信
  • 到着ロビーを歩く足音
  • エレベーターの音
  • 手荷物取扱者の圧力装置の音

また、映画『ベッカムに恋して』『ラブ・アクチュアリー』『ダイ・アナザー・デイ』の撮影場所となった空港内の音も含まれており、映画ファンにとっても興味深い要素が盛り込まれています。これらの音源は、チェックインから離陸までの乗客の旅程に合わせて4つの楽章に構成されています。


夏のヒースロー空港での音楽体験

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Photo: Matt Crossick/PA Media Assignments

この夏、ヒースロー空港では「Music for Heathrow」の再生に加えて、様々なライヴ音楽パフォーマンスが予定されています。空港は音楽を通じて旅行者に新しい体験を提供し、夏休みの始まりを特別なものにしようとしています。これらの取り組みは、空港を単なる移動手段の場所から、文化的な体験ができる空間へと変化させる試みの一環です。

空港内での音楽の流れ

 

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「Music for Heathrow」は、シームレスにループするよう設計されており、この夏の間、空港内の全ターミナルで再生されます。楽曲は乗客の旅程に合わせて4つの楽章に分かれており、チェックインから離陸まで、旅行者の体験を音楽で彩ります。各楽章は空港での異なる体験段階に対応しており、乗客の心理状態に合わせた音楽的な演出が施されています。

ライブパフォーマンスのスケジュール

 

Photo: Matt Crossick/PA Media Assignments

7月の毎週金曜日には、空港内でライヴ・イベントが開催されます:

  • 7月11日(金):エミリヤ・カラリウテとマイケル・セバスチャン
  • 7月18日(金):ジオ・ダラ、ジェイド・ソーントン、リアム・メラ・カイ
  • 7月25日(金):オマール・リオスとザ・キャッシュ・カウズ

これらのパフォーマンスには、アーバン・チェリストなどの多様なアーティストが参加し、空港内に音楽の多様性をもたらします。各パフォーマンスは異なる音楽ジャンルを代表し、様々な年齢層や音楽的嗜好を持つ旅行者に対応しています。これにより、空港での待ち時間がより豊かで記憶に残る体験となることが期待されています。


ジョーダン・ラカイとヒースロー空港が創る音の旅の魅力

 

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Photo: Matt Crossick/PA Media Assignments

このプロジェクトは、単なる音楽制作を超えて、旅行体験そのものを再定義する試みです。ヒースロー空港のターミナル・サービス責任者リー・ボイルは、「夏休みの始まりに空港に足を踏み入れる時の興奮に匹敵するものはない」と述べ、この新しいサウンドトラックがその感情を完璧に捉えていると評価しています。

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Photo: Matt Crossick/PA Media Assignments

ラカイの革新的なアプローチは、日常の環境音を芸術作品に変換することで、空港という機能的な空間を文化的な体験の場に変えています。この取り組みは、ブライアン・イーノが1979年に『Ambient 1 – Music For Airports』で提示したアンビエント・ミュージックの概念を現代に蘇らせ、新たな解釈を加えたものといえます。

楽曲はSoundCloudで公開されており、ヒースロー空港のYouTubeチャンネルでは制作過程を紹介する映像も視聴できます。この夏、ヒースロー空港を利用する旅行者は、単なる移動手段としての空港ではなく、音楽と文化が融合した新しい体験空間を楽しむことができるでしょう。世界で最も忙しい空港のひとつが、同時に最も革新的な音楽体験の場となることで、旅行の概念そのものが変わる可能性を秘めています。

 

Link

https://www.heathrow.com/

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