エディ・リーダー 『キャヴァリア』を携えた来日公演レポート

通算11作目のアルバム『キャヴァリア』を携えてのジャパン・ツアーをスタートさせたエディ・リーダー。ツアー初日、2月4日(月)東京・渋谷Club Quattro公演のライヴ・レポートが到着!

コンサートも終盤、時計を見ながらエディは言った。「私たちがステージ袖に引っ込んで、あなたたちが拍手して(アンコールのこと)という行為をはしょれば、あと3曲はできるわね!!」。同意!! とばかりに観客は大きな拍手を返す。エディのコンサートに決められたセット・リストはない。その時の気分や、観客の様子を見ながら、次に演奏する曲を決めていく。

 

“あと3曲”の最初の曲は最新作『Cavalier』から、「宇宙に捧げる曲よ」と言って「Starlight」を。バックを務めるケヴィン・マグワイア(b)、ジョン・ダグラス(g、ukulele)、ブー・ヒュワディーン(g)による熟年コーラスのなんとロマンチックで渋かっこ良かったことか! 次に披露したのはフェアーグラウンド・アトラクション時代からの人気曲「Find My Love」。そして3曲目。エディは、少女時代の思い出を話し始めた。家に親戚が集まると音楽を奏で、歌を歌ったものだ、と。エディの母親ジーンはみんなにけしかけられても、最初のうちは「いいわよ、私は」とか「歌なんて、そんな」と拒んでいるのに、不意に歌い出すのだ、「Moon River」を。我々観客にはジーンをけしかける家族親戚一同の役が与えられ、ステージ上のエディはジーンの役をやる。こういう時のエディは役者だ。大げさな仕草がおかしくて、会場には笑いが広がる。英語がわからなくても大丈夫。何十年も前の海の向こうのスコットランドの家庭の風景が目の前に浮かぶ。確か、エディには兄弟もたくさんいたはずだ。彼女の音楽の源はここにある、これまでも、これからも。そう思ったら、なぜだか泣けてきた。好きなこと(=音楽)に忠実であり、誠実であり続ける彼女の人生をうらやましく思ったのだろうか。自分でもよくわからない。

 

 

昨年リリースされた最新作『Cavalier』からの曲を中心にしたセットには、『キャヴァリア』がそうであったように、トラディショナル、ロバート・バーンズ、オリジナル、フェアーグラウンド、ソロ、ポップ、フォーキー……様々なタイプの曲が並んだ。ブー、ジョン、ケヴィンにアラン・ケリー(accordion)という4人のミュージシャンによるアンサンブルとハーモニーは、うまいのは当然ながらとにかく気持ちがよく、エディの歌を見守るようなあたたかさと包容力感じさせる。そして、信頼のおける演奏を得たエディの歌は、年齢を重ね、強さとたくましさを増し、エディ自身、ますます歌うことを楽しんでいるようにも見えた。かつての細く繊細に伸びていく絹糸のような歌声とは別の、しなやかでふくよかな歌声に、彼女が歩いてきた音楽の道のりを思う。

 

曲間に挟むMCの話術も達者なら、「Charlie Is My Darling」や「Macushla (My Darling)」での観客の巻き込み方といい、チューニングしながらアコギでジミ・ヘンを気取っちゃうところや、リーダー家の“神”だったというエルヴィス・プレスリーの曲のフレーズを口ずさんじゃうところなどなど、愛嬌とユーモアがたっぷりなのもエディの魅力。そんなエディと仲間たちが「一緒に楽しもう」という雰囲気で満たしてくれる空間では、すべての瞬間に、音楽への敬意と愛が宿っている。こんなしあわせな空間にいられることに感謝するばかり。

 

 

「Moon River」が終わり、エディがステージを去り、フロアの電気がついても観客は帰らない。アンコールははしょるとみんなで決めたけど、こんなライヴを観せられたら、そうそう簡単に帰路にはつけない。すると、しばらくしてエディがひとりでステージ上に再登場。「一緒に歌おう」と、アカペラで「Hallelujah」。もう、これ以外何も言うことはない。「ありがとうエディ、仲間たち!」。

 

文/赤尾美香

 

■Live info

Eddi Reader JAPAN TOUR 2019

2月6日(水) 名古屋クラブクアトロ OPEN 18:30/ START 19:30
2月7日(木) 梅田クラブクアトロ OPEN 18:30/ START 19:30

 

■Disc info

 

 

エディ・リーダー
『キャヴァリア』
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
Now on Sale

 

■Link
http://smash-jpn.com/live/?id=3023

 

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