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ファット・ホワイト・ファミリー『Serfs Up!』interview
新たなカウンター・カルチャーの震源地となっているサウス・ロンドンにおいて、史上最凶のカルト・ヒーローとしてシーンへ絶大な影響を与えるファット・ホワイト・ファミリー。4月19日にリリースされた最新作『Serfs Up!』について、フロントマンのリアス・サウディがBritish Culture in Japanのインタヴューに答えてくれました。
──今はシェフィールドですか?
ううん、南ロンドンのアパートにいるよ。
──シェフィールドにはもう住んでないんですね?
アルバムのレコーディングのためだったからね。2年くらいいたかな。アルバムが完成したから、ロンドンに戻ってきた。俺のもうひとつのプロジェクト、ムーンランディングスを通して、すでにシェフィールドで活動している人たちを知っていたから移住したんだ。スタジオも安かったしね。ロンドンの1部屋の家賃でシェフィールドでは家1軒が借りれるくらい。影響かはわからないけど、5年間のツアーのあとでちょっと休憩が必要で、気分転換にもなった。ロンドンからちょっと離れる必要があったんだ。
──なぜまたロンドンに戻ろうと?
南ロンドン出身ではないけど、14年間住んでるからロンドンは俺にとってホームグラウンドみたいなものなんだよね。だから戻ってきたのさ。
──今、日本ではロックもジャズも含めて、南ロンドンに注目が集まっています。その盛り上がる前から南ロンドンをベースにしていたあなたたちから見て、今の南ロンドンはどのように映りますか?
俺たちがスタートした頃は、南ロンドンにはあまりDIYシーンがなかったと思う。音楽は東ロンドンの方が盛んだったし、それとちょっとほかと違う俺たちはみんなに阻害されながらも自分たちがやりたいことをやっていった。そうしたら、ゴート・ガールとかシェイムとかそういったバンドたちが俺たちに続いて出てきたんだ。彼らは俺たちにとって弟や妹みたいな存在だね。
──今出てきたシェイム、ゴート・ガール、ブラック・ミディといったバンドがあなたたちを追うように登場してきていますね。
音楽とか世界観にはあまり共通点はないかな。シンパシーを感じるのは、音楽の作り方だね。音楽業界のしきたりに流されず、自分たちが作りたい音楽を作ってる。今出てきている若いバンドたちからも、そう感じてうれしく思っていてくれてるといいけど。ブラック・ミディはもっとノイズ・バンドな感じがするかな。俺たちは彼らよりもポップ・ミュージックを書いていると思う。もしかしたら前回のアルバムは少し通じるところがあったかもしれないけどね。もしかしたら俺たちからの影響かもしれないな。
──南ロンドンの音楽シーンは、以前から存在しているのに今注目されるようになったのか? それとも今話題になっているのは、南ロンドンの音楽シーンが今盛り上がってきたから?
ここ5年でグンと大きくなったと思う。良くなっているのか悪くなっているのかはわからないけどね。俺たちがスタートした時は20代半ばだったけど、今出てきている若いバンドたちは19歳とかなんだよね。そんな若い時から経験を積むわけだから、彼らのうちの何人か、何組かはこれからすごく良いミュージシャンやバンドになっていくと思うよ。俺たちが彼らにテンプレートを与えたんだと思う。自分たちを信じて音楽をやっても良いんだっていう自信を与えたというのはあるんじゃないかな。自分の世界を楽しむってことを提示して、たくさんのバンドに扉を開いたと思うね。
──自分たちがスタートした時は今のバンドたちよりも大変な環境だったということですか?
かなりね。みんな精神的な問題もあったし、金もまったくなかった。すべてを自分たちでやらないといけなかったから、そのステージを抜け出すまでに今の若いバンドよりもかなり長い時間がかかったよ思う。今の俺たちはだいぶ良くなったよ。バンド内でもめることもなくなったし、サイド・プロジェクトをやったりもして自分たちの音楽の幅を広げることができている。だから、前よりももっとリラックスして活動が出来るようになったんだ。
──前作から3年が経過しての新作となりますが、その間にはまずBrexitがあり、ロンドンとマンチェスターではおぞましいテロも起こりました。そして、現在もEU脱退を巡って混迷を極めています。そんな3年間、あなたたちはどのように過ごし、何を考えていたのでしょうか?
さっきも話した通り、俺たちはシェフィールドに住んでアルバムを作ってた。俺は今の変化は起こるべくして起こってるんだと思う。俺は脱退じゃなくて残る方に投票したけど、Breixtが最悪なこととまでは思っていないんだ。これが起こっていることで、この国で何が起こっているかをみんなが知ることができたわけだから。貧富の差、教育の問題、その問題が浮き彫りになって、自分たちの状態を見つめ直すことができている時期だと思うよ。
──その混沌とした状況を体現するような音楽をFWFは作り続けてきましたが、新作はずいぶんと音が整理された印象を受けました。それは意図したものなのか、それとも自然なものだったのでしょうか?
さっきも話したけど、俺たちの音楽は常に“ポップ”であってきたと思うんだけど、その上で、リスナーや業界に対して攻撃的で反抗的なものではなく、人を惹きつけ、自分自身をもっと素直に表現したものを作れるようになっていったんだ。今回のアルバムでそれを達成できたと思う。もっとコミュニケーションが取れる音楽を作れるようになってきたと思うね。
──リスナーとコミュニケーションをとることがもっと大事になってきた?
そうだね。自分自身を楽しませることも大事だけど、活動を続ける上で大切なのは人と繋がることだから。
──バクスター・デューリーが参加していますが、彼はソウル(・アダムチェウスキー)がザ・メトロスをやっているときからの付き合いですね。
そう、バクスターは俺たちの昔からの友人で参加してもらうことになったんだ。彼には、あの詩や語りのような独特のヴォーカルをもたらして欲しかった。アルバムには、たくさんのサウス・ロンドンのミュージシャンたちに参加してもらっているんだ。チャイルドフッドっていうバンドのメンバーのベン・ロマン、インセキュア・メンのアレックス・ホワイト、あとはスウェットっていうバンドのダンテとガマリエルとか。あとブリジットっていう女の子もストリングスで参加してくれている。ビッグ・チームだったよ。みんなプロだし、友達なんだ。バンド・ミュージックを作る道を選ぶなら、コラボはかなり重要だ。人によって得意不得意があるからこそバンドで音楽をやるということを選択すると思うんだけど、様々な素晴らしいミュージシャンたちに自分たちにはないものをもたらしてもらってより良いものを作るというのは、最高なことだよね。
──この新作を制作する上で何か理想としていた、もしくはよく聴いていた作品はありますか?
ファンクもあるしテクノもあるし、フォークもあるし、カニエっぽいのもあるし、影響は計り知れないよ。俺たちは様々な種類のレコードを聴くから。このアルバムにはそれが全部落とし込まれてる。よく聴いていた作品は、ワム!の「Blue (Armed With Love)」。あのレコードは俺たちが聴いていた中で最も重要な作品だと言えるね。あのレコードはかなり聴いてたし、すごくインスパイアされたんだ。ぜひ、聴いてみてくれ。あと、ジャー・ウォブルもたくさん聴いてたな。
──また、8曲目「Rock Fishes」はサイケデリック・ダブなアプローチを見せています。各曲ごとに音楽性が違いますが、メンバーそれぞれの音楽性を民主的に曲に落とし込んでいるんでしょうか?
そうだね。今回はより広がりがあると思う。あと今回は、それに加えてより洗練された、エレガントな曲も入れたかったんだ。
──まさに今、「Oh Sebastian」のようなエレガントな曲もありますが意外なアプローチですね、と聞くところでした(笑)。
その驚きが良い驚きだったらいいけど(笑)。ずっとよりソフトな曲を作りたいとは思っていたんだ。今回はサイド・プロジェクトの経験もあって、それが前よりも出来るようになっていた。だから、それをファット・ホワイト・ファミリーでもやってみることにしたんだ。
──タイトルの『Serfs Up!』はビーチ・ボーイズの『Surf’s Up』をもじったものですか?
いや、ビーチ・ボーイズをもじったわけじゃないんだよね。たまたま似たタイトルになったんだ。労働者階級がもっと自由になるために伸び上がるっていうのを表現したのがあの言葉。Brexit、トランプ、そういった現代の問題を総括したものがこのタイトルなんだ。
──最後に日本でライヴを観られる日を楽しみにしていますが、昨年のRock en Seine Festivalでは8人での演奏でしたね。レコーディングされた音よりも、さらに攻撃的で生々しかったです。
一番大切なのは、自分がステージで何をしているのかをきちんと意識して把握すること。自分を完全に表現しきるということだね。ステージに上がる前は未だにかなり緊張するけど、演奏を始めるとそれが吹っ飛ぶんだ。日本には一度も行ったことがないから、このアルバムで来日できるといいな。
インタヴュー・文 / 油納将志
■Disc info
ファット・ホワイト・ファミリー
『Serfs Up!』
BEAT RECORDS
Now on Sale
ボーナストラック1曲収録
■Link
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10130
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