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ザ・ウォーターボーイズ『ホエア・ジ・アクション・イズ』interview
今年のフジロックフェスティバルに出演が決定している、マイク・スコット率いるザ・ウォーターボーイズ。5月24日にリリースしたバンド・サウンド全開のニュー・アルバム『ホエア・ジ・アクション・イズ』についてマイクにインタヴューを行ないました!
──新作とてもすばらしかったです。ゴスペルっぽいフィーリングが前面に出ていると感じながら聴きました。2014年に発表したアルバム『モダン・ブルース』はナッシュヴィルで録音されましたが、こちらはアメリカの同時代のソウル・ミュージックやロックと強いつながりを意識させる作品でした。また、2017年には『アウト・オブ・オール・ディス・ブルー』という2枚組の大作を発表しましたが、こちらはダブリンと東京でレコーディングされています。こちらもR&Bやソウル、カントリーの要素を取り入れながら、ヒップホップのリズムがベースとなりました。その流れを踏まえて、この新作はどういうコンセプトやヴィジョンがあったのでしょうか?
『モダン・ブルース』と『アウト・オブ・オール・ディス・ブルー』のどちらの要素も併せ持つ作品になったと思う。アメリカン・ロックのフィーリングもあるし、ソウルやファンクのテイストもあるし。でも、それをあえて前面に押し出さずに控えめになっているのが、今回の特色かな。
──感じたゴスペルのフィーリングはスタイルとしてというよりは、エモーションとして表面化していると思いましたので納得しました。
そうだね、フィーリングに近いと思う。
──前作のヴォリューム感といい、今作の濃密さといい、エネルギーがあふれんばかりに放出されているという印象を受けますが、35年のキャリアにおいて、何度目かの創作意欲のピークに達しているんじゃないでしょうか。
う〜ん、自分ではちょっとわからないね。昔と今では制作の方法が違うから、そう感じられるのかもしれない。80年代に出した初期のアルバムは常に曲を書いていて、その曲をスタジオでレコーディングするという一連の流れだったけど、今はいつでもどこでもレコーディングできる時代になった。だからクリエイティヴィティもキープすることができる。うん、だからかもしれないね。
──それは35年間の大きな変化と言えそうですね。
2005年に買ったMacにガレージバンドが入っていたことが大きな変化に結びついたね。そうしたソフトウェアを使ったことがなかったし、理解して使うにはすごく時間がかかるんだろうなと及び腰だったんだけど、ほんの1時間ほどで曲を作っていた。人生が変わった瞬間だったね。そのおかげで常に家でもレコーディング作業ができるようになった。以前から曲を作ったり、演奏したりする部屋があったんだけど、ガレージバンドの導入をきっかけにスタジオに改装したんだ。それ以降の14年間はほぼ毎日のようにレコーディングしているよ。
──今回のアルバムでこういうことをやってみたかった、こういう色合いや質感を出してみたいということはありましたか?
最初はミックス・テープを作るつもりでスタートしたんだ。ちょっと風変わりなインストから段々と曲としての形になっていき、アルバムになっていったんだよね。
──ミックス・テープを作ろうとしたきっかけは?
前作の制作時に収録されなかった曲があったんだけど、インストだったり、ヴォーカルを加工した曲だったり、ちょっと変な曲がいくつかあって、曲として悪くなかったので、それらをまとめようとしてミックス・テープを作ろうとしたんだ。
──その制作スタイルは前作あたりから始まっていたんですか?
いや、前作は最初から2枚組のアルバムを作ろうと決めていたんだ。この曲を入れようという案はあったんだけど、新しい曲を書き始めたら、収録を予定していた古い曲がどんどんボツになっていって、結局は何も残らなかった。新曲ばかりの作品になったんだ。そういう意味で前作も新作も思っていたものとは違う、変化しながら完成したアルバムと言えるね。
──新作はプログラミングによるビートをベースにした曲と、バンドによるビートの曲が混在しながらも、違和感を抱かせないのがユニークだと思いました。
その両方を使っている曲もあるよ。ヒップホップにアプローチするなんてと驚かれるかもしれないけど、1stや2ndの頃にカントリーをやるとは思ってもみなかったことだから、それと同じだよね。常に変化していたいんだ。60、70年代のアーティストたちのようにね。
──タイトル曲の「ホエア・ジ・アクション・イズ」ですが、これはロバート・パーカーの「レッツ・ゴー・ベイビー」が下敷きになっているんですね。ノーザン・ソウルの名曲ですが、なぜこの曲を取り上げたんでしょうか? しかも、アルバムのタイトルにもなっています。
ダブリンのノーザン・ソウルのクラブで7年くらい前に耳にして気に入ったからなんだけど、ヴァースがちょっと今風じゃないから、そこは自分で変えちゃおうと今の社会に抱いている思いをつづったんだ。当初はヒップホップのテンポの早いループを使っていたんだけど、その後、バンドと一緒にレコーディングしたんだよね。
──映画の『ノーザン・ソウル』はご覧になりましたか?
うん、観たよ。自分たちの70年代を描いているようだったね。ダーリントンのホテルのクラブに毎週土曜にエディンバラから通っていたから。
──2曲目の「ロンドン・ミック」もすごく良かったです。ジョー・ストラマーではなく、ミック・ジョーンズに捧げられているところも含めて(笑)
もちろん、ジョーのことも好きだよ(笑)。でも、みんなジョーのことを語るから、ミックのことを歌ってみたんだ。パンクを聴いていた10代の頃から、ミックのことが好きで、彼のキャラクターやステージのパフォーマンスに魅了された。2番目に偉大なロック・ミュージシャンだよ。
──1番は(笑)?
ジョニー・サンダース。キース・リチャーズは3番目くらいかな(笑)。
──日本盤のボーナストラックには「代々木公園にて」と「下北が好きです」が収録されています。まず「代々木公園にて」ですが、そこでロックンロールを踊っている人に着想を得たそうですね。
東京に滞在していたとき毎朝、代々木公園をジョギングしていたんだ。今日も朝7時から走っていたよ。ロックンロールを踊っているのは決して若くはない人たちなんだけど(スマートフォンで録画した動画を見せながら)、彼らを見ているうちに曲ができてきたんだ。彼らにこそ本当のロックンロール・スピリットが宿っていると感じた。本当にクールだよ。
──「下北が好きです」はどのようにして?
下北沢が好きで、下北沢に捧げた曲なんだ。下北沢にまつわることが音だけじゃなく、自分の体験も含めて形成されているので、ぜひ日本人に聴いてもらいたいね。
──やはり奥様との結婚を通して、日本への理解や思いが深まったようですね。
もちろん。彼女を通して、色々なことが見えてきたり理解できるようになったからね。文化の違いも含めて。
──長いキャリアを俯瞰して、今のザ・ウォーターボーイズというのはどんなバンドだとあなた自身は捉えていますか?
同じメンバーであっても常に変化し続けるバンドかな。その姿勢はこれからも変わらないはずだよ。
──最後にあなたの出身地であるエディンバラのお気に入りの場所などを教えてもらえますか?
やっぱりエディンバラ城だね。城へと続く、美しいロイヤル・マイル・ストリートを歩きながら、エディンバラの歴史を感じてもらいたいな。プリンセス・ストリート・ガーデンズも忘れずにね。
インタヴュー・文 / 大谷隆之 通訳 / 新谷洋子 写真 / Scarlett Page, Xavier Mercade
■Disc info
ザ・ウォーターボーイズ
『ホエア・ジ・アクション・イズ』
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http://trafficjpn.com/artists/the-waterboys/
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