【Interview】Paul Weller『Saturns Pattern』

Music 2015.10.07 Text by Masashi Yuno

最新作『サターンズ・パターン』と共に来週10月14日から待望のジャパン・ツアーをスタートさせるポール・ウェラー。最近のセットリストではソロでは初めて演奏するザ・スタイル・カウンシル、ザ・ジャム時代の曲が加わるなど、ライヴへの期待がますます高まる中、『サターンズ・パターン』リリース前に行ったインタヴューを公開! 新作だけでなく、ウェラーが立ち上げたブランド「Real Stars Are Rare」への思いも語ってくれました。

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──ベスト盤『モア・モダン・クラシックス』を挟んで約3年ぶりのオリジナル・アルバムとなりますが、前作よりもさらに先鋭的で実験的な作品になっていますね。

 

うん、これまでとは違った何かをさらに模索していたんだ。ただ、自分で何を求めているのかはわからなかった。求めていないものははっきりしていたけれどね。そういう時は、何かに向かって進んではいるものの、大概それは抽象的なもので、そこに行き着くまでは何であるかがわからないものなんだ。ところが、これはどのアルバムでもそうなんだけれども、3〜4曲ほど満足できる曲ができあがると、どういう方向に行くのかわかるようになる。ひとりでにできていくというか、その方向性を自ら示していくようになるんだよ。

 

──持っていきたくなかった方向性というのは?

 

自宅でギターを使ってという、トラディショナルな手法で書いた曲はたくさんあるんだ。その中で良い曲もたくさんあるけど、アコースティックなアルバムは作りたくなかった。これまでとは違う形で、音楽的な新境地を切り開いてみたいと思ったんだ。これまで自分がよく知っているというわけではない、足を踏み入れることのなかった領域に入っていきたかったというわけさ。それが制作時にみんなに伝えた唯一の指示だったね。そういう時は、“これでいくべきだ”と感じるものが見つかるまで、とにかく何度も繰り返しやり続けるしかない。見つかるとそのアルバムのボディができていき、魂が産まれるというわけだ。

 

 

──“見つかった”曲とはどの曲を指すんでしょうか?

 

パンキーなストゥージズ風サウンドの「ロング・タイム」、ダンス・ミュージックの要素が見られる「フェニックス」と「ディーズ・シティ・ストリーツ」と、そしてピアノ・バラードの「ゴーイング・マイ・ウェイ」というような感じかな。自分で情熱的になれる良い楽曲が数曲ほどできあがると、それがアルバムの土台となり、そこから積み上げていくことができるんだよ。新しいものに挑戦したり、実験的にやってみたりしたりと、そういう手法はうまくいったね。

 

──ずいぶんとサウンドが立体的で、様々な楽器の音が多層的になったアレンジが多く見受けられるようになっています。それも今までにないほどに。このように厚みのある音になったのはどうしてでしょうか?

 

深い理由はなくて、単に楽しんでいただけなんだ(笑)。これまでのレコーディングのプロセスと同様に、とにかくなんでもすべて試してみる。そうやって、何がうまくいくか、何がうまくいかないのかを見極める。かなりたくさんのものが破棄されるんだ。消去法でやっていくんだよ。ただひたすら、作業を続けていく。俺はいつもたくさんのアイデアを持っている。それが良いアイデアかどうかはまた別の問題だというわけだ。だから、プロデューサーやバンドといった良いチームと一緒に作業をするのは重要で、彼らがそういうアイデアをふるいに掛けてくれるんだよ。

 

──今回もプロデューサーに起用されたジャン・“スタン”・カイバートがサウンドの鍵を握っていると思えます。

 

まさにその通りだよ。前作ですばらしい仕事をしてくれたから、新作でも彼にプロデュースをお願いしようと決めていたんだ。スタンはポジティヴな人間で束縛されたり、行き詰まったりということはない。あることがうまくいかないと、すぐに次のものへと移っていく。常に進行させていくことが重要なんだ。俺たちはお互いそういうところがあるし、はっきりとものを言うことも似ている。だから、長い時間をかけて熟考するということはあまりないんだ。“これは良いね。良い感じだ。これで行こう!”という風に彼と進めていったんだ。

 

 

──さらに元ザ・ジャムのスティーヴ・ブルックスやザ・ストライプスのジョシュ・マクローリーも参加していますね。

 

ああ、スティーヴとも久しぶりに演奏したけどうまくいったと思うよ。ジョシュはすばらしいね。彼の年齢など忘れてしまうべきで、才能あるすばらしいギタリストだ。彼はきっとこれからの人生で、音楽において何か特別なことを成し遂げてくれるに違いないよ。ミュージシャンというのは、年配でも若手でも関係ないものなんだ。優秀なミュージシャンは、優秀なミュージシャンとして認識されるだけだ。そして、どこで終わるとか、どこから始まるということもない。ジョシュと一緒にプレイしていると、彼が19歳であることを意識することはない。ミュージシャンとはお互い同等のレヴェルでつきあっていくものなんだ。

 

──昨年、あなたはクロージング・ライン「Real Stars Are Rare」をスタートさせましたが、そのことが直接この新作に影響を与えたとは思いませんが、服をデザインすることで何かを得るということはありましたか?

 

うーん、厄介なものだよ(笑)。もちろん楽しいし、やって良かったとは思うけれど、とにかく時間がかかるんだ。服のデザインに比べたら、レコード制作はお茶の子さいさいだよ。手間ひまかかるものだからね。まあ、まったく違うものだからさ。「Real Stars Are Rare」は自分のためにやりたいと思っていたことだったんだ。既存の他のブランドと競争するためではないし、百万ドルのビジネスになるとも思っていない。自分のためにささやかなことをやっているに過ぎない。ただ、良い服を作りたいというだけのことだよ。とにかく服が好きなんだ。物心ついた頃からずっと服が好きだったので、その延長線でやっているというわけだ。昔からずっと、いつか自分のファッションラインを持てたらと夢に描いていた。ようやくそれが叶ったわけだけど、最初のコレクションまでだいたい3年ほどかかって準備したんだ。楽しんでやっているよ。他とは違ったものだね。何かに迎合することなく、俺たちのやり方でやっている。まあ、ファッション業界にいるというほどのことではなく、ちょっと距離を置いたところでやっている感じかな。もちろん真剣に取り組んでいるけど、ファッション業界に属しているとは思わないね。

 

──ザ・ジャム時代から一貫して、あなたはファッションに関しても自らの揺るぎないものを持っています。

 

70年代当時、俺は自分で演奏するには若過ぎたけれど、60年代の音楽については知っていたし、音楽的に俺にとってとても重要な時代で、大きく影響を受けた。自分はその時代の申し子だと思うんだ。子供の頃は、音楽、ファッション、サッカーの3つしかなかった。自分を定義付けるのはその3つで、どのチームを応援しているか、どんな服を着ているか、これは重要で、とても部族的なところがあった。さらに、どんなバンドの音楽を聴いているか、といったことに尽きるわけだ。だから、俺が子供の頃、12歳、13歳の頃は、俺も、それから一緒につるんでいた仲間達もみんなスキンヘッズだった。これは69、70、71年頃のことだよ。当時はそれがファッションだったんだ。そしてモータウン、スタックス、レゲエ、ロックステディといったものしか聴いていなかった。当時はそういったことが、自分を定義付けていたというわけさ。そういった当初の影響、文化的な重要性が俺から離れることはなかったということなんだろうね。その頃から今日に至るまで、価値観は変わっていないと思う。

 

 

──そして、モッズも。

 

そう。俺が好きなスタイルなんだよ。自分自身が着ないような服はデザインしようとは思わない。それでは意味がないからね。そんな目的でやっているわけではないし、自分自身が好きなものを作る目的でやっている。他の人も気に入ってくれるのだったら、それはうれしいけどね。

 

──最後に前回の日本ツアーはいかがでしたか?

 

最高だったよ。最後の時は本当に良かった。確か8日間で6回公演があった。アメイジングだった。これまでのツアーの中でも、最高のツアーのひとつだったね。

 

インタヴュー・文/油納将志

 

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