Interview : ノエル・ギャラガー「はっきり言って傑作だ。いつも通りな」

ノエル・ギャラガー アーティスト写真

オアシスの電撃解散後、ソロ・プロジェクトであるノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズを始動させてから10年。ソロとして初のベスト盤『バック・ザ・ウェイ・ウィー・ケイム:Vol 1(2011 – 2021)』を発表したノエル・ギャラガーが、この10年と日本で食べたヤバい食べ物について振り返るインタヴューをお届け!

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──まずは10周年おめでとうございます。10年が経って、改めてソロ・プロジェクトの醍醐味を教えてください。

まず音楽的に何でも好きなことができること。面倒なこともないし、ほかのバンド・メンバーに説明する必要もない。何も言わなくてもみんなわかってくれる。それから、音楽性の幅を広げることができるのと、いつでもバンド編成を変えることができる。

10年前に始めたときは、5人の無愛想な中年の集まりだった。でも今では11人いる。そのうち3人は女性だ。しかも、ハサミを鳴らす専門のメンバーだっている。これ以上の醍醐味はないな。

──この10年間、ご自身の中であった変化(進化、または退化)は?

変化としては、子供がふたり生まれたこと。あとは、世の中の変化とともに、自分も変わったという感じかな。10年もあれば、変わらないほうがおかしいよな。少なくとも進化しないと。という意味で、ソングライターとしても進化したと思う。

人としても、丸くなったし、人生に何を求めるかも明確になった。前より落ち着いたと思う。そして今でも髪の毛が健在だ。髪さえキマってさえすれば、ほかはどうだっていい。そう、肝心なのは髪があるかどうかだ。悪く取らないでくれ。

──10年間にリリースしたソロ曲の中から、あなたのシンガーとして最も自信のある曲、ソングライターとして最も自信のある曲、ギタリストとして最も自信のある曲、プロデューサーとして最も自信のある曲、をそれぞれ1曲ずつと、その曲を選んだ理由を教えてもらえますか?

①シンガーとして最も自信のある曲

シンガーとして最も自信のある曲は、実は、一番うまく歌えている曲ではない。「デッド・イン・ザ・ウォーター」で、あの曲はレコーディングされているって知らないでその場で歌ったものを、そのまま使っている。なぜ選んだかというと、心から歌っているからだ。

録音しているとわかっていたら得られなかったであろう魔法がある。だから「デッド・イン・ザ・ウォーター」を聴くと、今でも震える。レコーディングされているなんて知らず、自分に向かって歌っていただけだった。何か魔法のようなものを感じるんだよ。

②ソングライターとして最も自信のある曲

ソングライターか……。自信ならどれもあるけど、1曲あげるとするなら「ブラック・スター・ダンシング」だな。なぜなら、自分史上最高の1曲だってまず思うのと、ある朝シャワーを浴びててひらめいたアイディアから書き上げるのにせいぜい2日しかかかっていない。

曲を構築していくにあたっていろんなアイディアがあるなかで、スタジオに入ってみてうまくいくものもあれば、うまくいかないもある。でも、たまに、何をやってもうまくいくことがある。どれも最高のアイディアで、ぴったりハマっていく。そこから別のアイディアがまた出てきて、それもうまくいって、また新しいアイディアが出てくる。その波に乗るだけでいい。

「ブラック・スター・ダンシング」がまさにそういう曲だった。純粋なひらめきから始まって、2日ほどでできた曲だ。驚いたよ。そういう瞬間が生きがいだ。“神が宿る”というのを音楽に当てはめた感じ。自分が何をやっているかって自覚がない。なぜそのアイディアがひらめいたいのかもわからない。でも、それが素晴らしくて、そこから別のアイディアも生まれて、また別のアイディアへと繋がっていく。で、気づいたら名曲が生まれてる、という。

③ギタリストとして最も自信のある曲

そこまでギターを弾いてないからな……。ハイ・フライング・バーズにも、最高のギターソロがある曲がいくつもあるけど、残念ながら、どれも俺が弾いてるものではない。例えば「リヴァーマン」には、あり得ないほど最高のギター・ソロがあると自信を持って言えるけど、実際俺が弾いてるわけじゃない。でも書いたのは俺だ。こういう感じのソロ、って旋律を書いた。弾いてるのが俺じゃないってだけで。

正直、オアシスを辞めて以来、リード・ギタリストとしては腕が落ちた。ソングライターとしてもっぱらコードを弾くことが多いから。でも、あえて選ぶとしたら、やっぱり「リヴァーマン」だな。ソロを自分で弾いてなくてもだ。他のギター・パートは全部俺が弾いてて、どれも最高だから。

④プロデューサーとして最も自信のある曲

「ディス・イズ・ザ・プレイス EP」に入っている「ア・ドリーム・イズ・オール・アイ・ニード・トゥ・ゲット・バイ」だな。実は今朝も聴いてた。すべてのサウンド、ちょっとした細かい音まで、全部自分で弾いている。曲を作っている時というのは大抵“こういうサウンドにしたい”という音が頭の中で鳴っているものなんだけど、それをぴったり再現するのがなかなかできない。

でも、稀にそれができる曲がある。音の夢を再現する。「ア・ドリーム・イズ・オール・アイ・ニード・トゥ・ゲット・バイ」がまさにそういう曲だった。俺にとって完璧なサウンドだ。

──ベスト盤には新曲の「ウィアー・オン・アワー・ウェイ・ナウ」と「フライイング・オン・ザ・グラウンド」が収められていますね。それぞれ、いつ録音された曲か、また曲の生まれた背景やこだわったポイントなど教えてください。

2曲とも同時期に生まれた曲だからまとめて話すよ。今回グレイテスト・ヒッツを出すことになって、新曲が入ってなきゃ出す意味がないと思ったし、その新曲が他の収録曲と同じくらいいい曲じゃなきゃ成立しないと思った。単なる埋め合わせの曲だったり、ボーナストラックじゃなくて、特別な曲じゃなきゃダメだって。

コロナ禍中、古いデモやCD音源をいろいろ聞き返してみたら、その中に4曲、完成に至らなかった曲があった。それらを家で聴き返してみて、“この曲の2番のヴァースを書いてみよう”“この曲のサビを仕上げてみよう”といろいろアイディアが出てきた。で、ロンドンにあるリンチ・モブという、プロデューサーのブレンダン・リンチが所有するスタジオを押さえて、そこで曲を完成させたら、すごくいい感じに仕上がったんだ。

「ウィアー・オン・アワー・ウェイ・ナウ」は、もともとソロのデビュー・アルバムと『チェイシング・イエスタデイ』の間に書いた曲で、最後まで書き終わらなかった。もし書き終えていたら『チェイシング・イエスタデイ』に入れてただろう。傑作だと思うし、俺がこれまで書いた中でも一、二を争う傑作だ。いつかまたライヴができるようになる日が来たら、ライヴでも絶対に映える曲だろう。

「フライイング・オン・ザ・グラウンド」のほうも同じで、最後まで書き切らないまま残っていた。こっちは『チェイシング・イエスタデイ』の制作中にもともと書いた。普段レコーディングで歌録りをする時というのは、喉のウォーミングアップで、何曲か先に歌うんだけど、担当のエンジニアがいつも「フライイング・オン・ザ・グラウンド」を歌うと“何ていう歌ですか?”って聞いてくるんだ。

で、“まだ書き終わってないからわからない”って答えるわけだけど、その都度“めちゃくちゃいい曲だから絶対にレコーディングしたほうがいい”って言われた。今回完成させるまでは、特になんとも思っていなかった曲だけど、彼の言った通りで、本当にいい曲だ。バート・バカラックを彷彿させ、モータウンっぽい雰囲気もある。過去10年で、個人的に一番思い入れの強い2曲に仕上がったよ。

──2019年にリリースした「ブラック・スター・ダンシング」、「ディス・イズ・ザ・プレイス」、「ブルー・ムーン・ライジング」のEP3作は、どれもダンス・ビートが軸になっており、かつてあなたがケミカル・ブラザーズと共演したことなどまで思い出しました。ノエル・ギャラガーは次はダンス・ミュージックに向かうか、とも感じましたが、実際のところ来たる4thアルバムはどんな感じの作品になりそうですか?

ダンス・ミュージックとは程遠い内容だ。むしろ、その反動とも言える、アコースティック色の強いものになりそうだな。曲作りが半分ほど終わっていて、5曲書き終えている。どれも多岐にわたっていながら、ライヴ映えするものばかりだ。最近のEPがエレクトロニックなサウンドになった理由は、これまでそういう曲を書いたことがなかったからというのがある。

デヴィッド・ホルムズと仕事をした時、もっとエレクトロニックな曲を作るものだと思っていた。『フー・ビルト・ザ・ムーン?』はもっとダンス色の強いアルバムになるとばかり思っていた。でもそうじゃなかった。だからそのアイディアを元に、3枚のEPを作ろうと思った。スタジオでシンセやドラムマシンを使って制作した。

で、次のアルバムは、これまでの4つの時代すべてを掛け合わせた内容になっている。すでに書いた曲の中には、ソロの1stアルバムに入っていてもおかしくないものもあるし、『チェイシング・イエスタデイ』に入っていてもおかしくないものもあれば、『フー・ビルト・ザ・ムーン?』に入っててもおかしくない曲もある。

すでに書いたものがすべてアルバムに収録されるかどうかはわからないけど、特定の方向性があるわけじゃない。いろんな曲がある。ただ今のところ、書き上げた5曲のうち、3曲はアコースティックで、どれもいい曲ばかりだ

──コロナ禍が曲作りに及ぼした影響はありましたか?

1曲を書いている間、歌詞を読み直した時に“outside(外)”という言葉を意識的に取り除かないといけなかったことくらいかな。コロナ禍についての曲にはしたくなかったから。そんなのクソつまんねぇし。そういう手直しが必要だったのが1曲か2曲くらいあっただけで、特にほかの影響は受けていない。

俺が書く曲はどれも、生きることの普遍的真理を歌っている。だから実際に起きた出来事について書くことはしないんだ。

──今回、日本盤CDには特別にあなたがソロとして初めてフジロックのヘッドライナーを務めた、2012年のフジロックのライヴ音源を収録しています。この時のライヴの思い出、そしてフジロックの思い出があれば、教えてください。

それって、ステージにジャック・ラッセル並みの大きさのどデカい虫が飛んでたやつか? それは覚えている。小型犬くらいの大きさの虫がいきなりステージに飛んできて、俺のマイクの先にとまって、そいつが俺をじっと見てて、唾を吐こうとしてるのか、攻撃しようとしているのかわからなくて。マジで困惑したよ。

フジロックに関しては、毎回、行くのに永遠のような時間がかかって、戻ってくるのにも永遠のような時間がかかるんだけど、ありがたいことに、それだけの価値があるくらい、ライヴはいつも本当に最高だ。フジロックでは毎回いいライヴをさせてもらっている。早くまた出たいと思っているよ。

──この10年で、あなたは6回も日本に来てくれています。10年間の間での来日時で一番印象に残った思い出は何ですか?

君もいたよな、あのレストランに行った時だ。あの時に食べたの何だったっけ? 緑の何か変なのが乗ってるピザみたいなヤツ。何だった?

──お好み焼きですよね。

なんて名前か知らないけど、何なんだっけ? トーストの上に卵を乗せた感じのものだっけ? それともピザ?

──強いて言うなら、キャベツが入ったパンケーキみたいなものかと。

そうそう。あれはヤバかった。

──“お・こ・の・み・や・き”っていう、うちの旦那が世界で一番好きな食べ物です。

そうだった。“うちの旦那が好きだ”って聞かされて、“君の旦那とは絶対に結婚できねぇ”と思ったんだった(笑)。キャベツが入ったパンケーキって、美味そうに聞こえないからな。

ここにアイルランド人のスタッフがいるんだけど、子供の頃からキャベツばかり食べさせられてるもんだから、笑っちゃってるよ。サイケデリック過ぎて無理だって。と言いつつ、あの時は、かなり酔っ払ってたせいか、意外に美味いと思った。

──日本ではB級グルメの類に入りますけど。

イギリスのジャンクフードに比べたらシャレたレストランだったぞ。キャベツ入りのパンケーキ。そんなもんが美味いなんて思いもしなかったよ。

──(笑)。このコロナ禍が終わったらまず一番最初にやりたいことは何ですか?

コロナのせいで、その場の思いつきで何かをすることが一切できなくなっちまったから、ある日目が覚めて思いつきで南仏とかに行ったりしたいな。思いついたらパッとね。今だと、行きたいと思っても、段取りから手筈を整えるのに1週間はかかる。しかも、くそみたいにテストとかしなきゃいけない。あとは……ライヴかな。ライヴができたらうれしいよ。

──ステイホーム期間の中で新しく始めたこと、逆にやめたこと、があったら教えてください。

酒を飲むという若い頃に一番好きだった習慣がまた再燃し、ぶっちゃけ、至極良好な関係だ。しばらく関係を絶っていて、家でもあまり顔を合わせることもなかったけど、関係を修復し、今は絶好調だ。あらゆる有意義な関係同様、この先永遠、死ぬまでの付き合いになるだろう。それ以外は、特にない。

もともと家であまり時間を過ごすタチじゃないから、特に順応することもしなかった。コロナ禍で何が辛かったかって、人によってはステイホームを楽しんでて、それはその人の生活が家庭に根ざしているからであって、俺の場合は、家中心の生活をしてこなかったから、キツかった。お陰で、酒を飲む量もかなり増えた。よかったことと言えばそれくらいかな。

──最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

日本のみんな、どうも、NGHFBのノエル・ギャラガーだ。元気でやってるか。コロナ禍で無事過ごしていることを願っている。ここイギリスは少しずつ日常が戻りつつある。俺の新作が今度出ることになった。はっきり言って傑作だ。いつも通りな。チャンピオンズリーグの決勝で現在リーグ1位のマンチェスター・シティが今週末いよいよ優勝を決める、というのもうれしい限りだ(※)。

今は、ここロンドンの自分のスタジオで、次のアルバムの制作中で、できたら誰よりも先にみんなに聴かせるつもりだ。応援ありがとう。またすぐに会おう。じゃあな。

※残念ながらチェルシーに敗れて準優勝

インタヴュー / 妹沢奈美 通訳 / 伴野由里子

ノエル・ギャラガー
『バック・ザ・ウェイ・ウィー・ケイム:Vol 1(2011 – 2021)』

『バック・ザ・ウェイ・ウィー・ケイム:Vol 1 (2011 - 2021)』ジャケット写真

 

レーベル:
ソニー・​ミュージックジャパンインターナショナル
発売日:
Now on Sale

日本盤特典

  • 日本盤限定FUJI ROCK FESTIVAL ’12 ライヴ音源3曲収録
  • Blu-Spec CD2仕様
  • 完全生産限定盤にはMITCH IKEDA撮影のポストカード・セット、10周年スペシャル・ユーティリティ・ケース、ハードカバー32ページ・ブックレットも封入

Link

https://www.sonymusic.co.jp/artist/noelgallagher/

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