2025.8.4

『OKコンピューター』『キッドA』原画展示！オックスフォードでレディオヘッドのアート展開催

Thom Yorke and Stanley Donwood (c) Julian Broad

レディオヘッドの視覚的世界を支えてきたアーティスト、スタンリー・ドンウッドと、ヴォーカルのトム・ヨークの30年間にわたるコラボレーションを紹介する展覧会「This Is What You Get」が、オックスフォードのアシュモレアン博物館で8月6日（火）から開催されます。同展では『OKコンピューター』『キッドA』などの名盤のカバー原画を含む180点以上の作品が展示され、両アーティストの創作過程が初めて包括的に公開されます。

史上初の大規模機関展覧会が実現

「This Is What You Get」は、スタンリー・ドンウッドとトム・ヨークの視覚芸術を探求する初の大規模機関展覧会として注目を集めています。展覧会タイトルは、レディオヘッドの代表曲「カーマ・ポリス」（1997年）の歌詞から取られており、両アーティストの“直接的で、正直で、詩的で、暗く、時にはコメディックな”創作アプローチを表現しています。

Thom Yorke (b. 1968) and Stanley Donwood (b. 1968) Page from a notebook, 1996-98 A4 Collection of Stanley Donwood. © Thom Yorke and Stanley Donwood

展示は年代順に構成され、1994年のシングル「マイ・アイアン・ラング」とアルバム『ザ・ベンズ』のカバーアート制作から始まる両者のコラボレーション史を辿ることができます。当時、オックスフォードのジョン・ラドクリフ病院の地下室に忍び込んで撮影した蘇生人形の映像を、テレビ画面に映して撮影し直すことで生み出された象徴的なピクセル化画像も展示されています。

『OKコンピューター』から『キッドA』まで―技術革新と芸術表現の融合

Thom Yorke (b. 1968) and Stanley Donwood (b. 1968) Heavy Snowfall on House, 1995 Lambda print on paper, 50 x 50 cm Schunk Museum, Heerlen, Netherlands © Thom Yorke and Stanley Donwood

Stanley Donwood (b. 1968) and Thom Yorke (b. 1968) Untitled, 1997 Poster 100 x 100 cm © Stanley Donwood and Thom Yorke

展覧会では、両アーティストが初期のテクノロジーを活用した実験的な創作過程が明らかにされています。1997年の名盤『OKコンピューター』のアートワークは、コンピューターを使用して制作されましたが、“取り消し”機能の使用を自ら禁じるという制約を課していました。間違いは消しゴムで消すか、別の要素で覆い隠すしかなく、これにより“幽霊言語の視覚的印象や災害の遺物”のような独特な美学が生み出されました。

Stanley Donwood (b. 1968) and Thom Yorke (b. 1968) Get Out Before Saturday, 2000 Acrylic on canvas, 167.9 x 167.9 cm Private Collection. © Stanley Donwood and Thom Yorke

2000年のアルバム『キッドA』の制作時期には、ドンウッドは戦争写真、特に旧ユーゴスラビアから発信される報道写真に影響を受けました。雪に足跡、タバコの吸い殻、血痕が残る新聞写真の衝撃から生まれた雪景色の下には、強制収容所や暴力が絵の具で覆い隠されています。

Thom Yorke (b. 1968) and Stanley Donwood (b. 1968) Test Print – Glamour, 2000 Test print on paper, A4 Collection of Stanley Donwood. © Thom Yorke and Stanley Donwood

未公開のスケッチブック・歌詞原稿を初展示

Thom Yorke (b. 1968) Notebook featuring lyrics for Karma Police, 1995 11 x 16 cm Collection of the artist. © Thom Yorke

本展の見どころのひとつは、これまで一般公開されたことのない両アーティストのスケッチブックや歌詞原稿の展示です。ヨークは何ページにもわたって歌詞を書き、何度も書き直し、レコーディング・スタジオでは断片的なフレーズや思考を記した紙片をランダムに手に取って新しいアイデアを生み出していた過程が明らかにされています。

パンデミック期の創作転換─ザ・スマイルプロジェクトの新展開

Stanley Donwood (b. 1968) London Views (6 of 14), 2005-6 Lino cut print block, 30 x 20 x 0.4 cm Collection of the artist. © Stanley Donwood

展覧会の終盤では、パンデミック期間中に制作されたザ・スマイルの作品『ア・ライト・フォー・アトラクティング・アテンション』（2022年）、『ウォール・オブ・アイズ』（2024年）、『カットアウツ』（2024年）に使用された新しい絵画作品が展示されています。この時期、両アーティストは初めてヨークの自宅の小さな小屋で同じキャンバスに並んで作業を行いました。

Stanley Donwood (b. 1968) Meteor Oligarchy, 2007 Etched copper plate, 70 x 50 cm Collection of the artist. © Stanley Donwood

ボドリアン図書館の展覧会「Talking Maps」（2019-20年）からインスピレーションを得て制作されたこれらの作品は、これまでで最も楽観的で色彩豊かな絵画となっています。鮮やかで慈悲深い風景画は、ブリュッセルで織られた大型タペストリーとしても再現され、アシュモレアン博物館の常設音楽・タペストリーギャラリーでも展示されています。

Thom Yorke (b. 1968) and Stanley Donwood (b. 1968) Poster, 2011 53.9 x 42 cm Collection of Stanley Donwood. © Thom Yorke and Stanley Donwood

会場となるアシュモレアン博物館の歴史と特徴

アシュモレアン博物館

レディオヘッドのアート展が開催されるアシュモレアン博物館は、1683年に開館した世界最初の大学博物館として歴史的に重要な位置を占めています。正式名称は「アシュモレアン美術・考古学博物館」で、オックスフォード大学に所属し、イギリス最初の公共博物館でもあります。

博物館の設立者は、イギリスの政治家で古物収集家のエリアス・アシュモール（1617～92年）です。1677年にアシュモールが自身のコレクションをオックスフォード大学に寄贈したことがきっかけで、知識の発展に捧げる機関を建設するという条件のもとで博物館が誕生しました。

350年の歴史を誇るコレクション

アシュモレアン博物館は約350年の歴史を誇り、現在では11万点以上のコレクションを所蔵しています。コレクションは非常に多様で、古代エジプトのミイラから現代アートまで、人類の文化と歴史を時代や文化を超えて紹介しています。特に注目すべき収蔵品には、ミケランジェロやラファエロの素描、パブロ・ピカソの絵画、ストラディバリウスなどが含まれています。