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POP Brixton取り壊し危機:南ロンドンの人気コミュニティスペースが住宅開発で消失の可能性
南ロンドン・ブリクストンの象徴的なコミュニティスペース「POP Brixton」が、新たな住宅開発計画により取り壊しの危機に直面。2015年の開業以来、地域の文化拠点として親しまれてきた同施設は、ふたつの高層住宅タワー建設のため、早ければ2026年にも解体される可能性が高まっています。
POP Brixtonとは:地域に根ざしたコミュニティハブの軌跡

POP Brixtonは、コンテナを活用したユニークな複合施設として2015年にオープン。約50のショッピングユニットと飲食店、イベントスペースを擁し、地元起業家やアーティストの活動拠点として機能してきました。
リサイクルコンテナを活用した環境配慮型の建築デザインが特徴で、地元企業の約80%がブリクストン地域の事業者によって運営されています。年間約200万人の来場者を記録し、若手起業家への低コストな事業機会を提供する重要な役割を担ってきました。
同施設は当初から“一時的な利用”として設計されており、土地所有者のランベス区評議会との契約は2019年に満了していましたた。その後、数回の延長を経て現在に至り、地域住民や事業者の間では恒久的な施設としての期待が高まっています。ブリクストン地区の再生プロジェクトの象徴的存在として、多くの人々に愛され続けてきた経緯があります。
住宅開発計画の詳細:ふたつのタワーが地域景観を一変

ランベス区評議会が承認した新たな開発計画では、POP Brixtonの敷地にふたつの高層住宅タワーが建設される予定。この計画は英国の深刻な住宅不足問題への対応策として位置づけられています。
新しい開発プロジェクトでは、合計約400戸の住宅ユニットが供給される見込みで、そのうち40%が、低所得者でも購入や賃貸が可能な手頃な価格のアフォーダブル住宅として提供される計画です。ランベス区評議会は、この地域の住宅需要が過去5年間で30%増加していることを開発の主要な理由として挙げています。
建設予定のふたつのタワーは、それぞれ20階建てと25階建てで、現在の低層建築が中心のブリクストン地区の景観を大きく変えることになるでしょう。計画によると、POP Brixtonの営業は2026年6月まで継続される可能性が高く、その後解体工事が開始される予定。建設工事は約4年間を要すると見込まれ、完成は2030年頃になる見通しです。
開発業者側は、新しい住宅タワーの低層階にコミュニティスペースや商業施設を設ける可能性についても言及していますが、具体的な計画は明らかにされていません。
地域コミュニティの強い反発:存続を求める運動が活発化

POP Brixtonの取り壊し計画に対して、地域住民や利用者から強い反対の声が上がっています。オンライン請願サイトChange.orgでは「Save POP Brixton」キャンペーンが立ち上がり、開始から2週間で1万5000人以上の署名が集まりました。
現在POP Brixtonで営業する約50の事業者にとって、この決定は事業継続に関わる重大な問題です。特に月額家賃が市場価格の約60%に設定されている現在の条件で営業を続けている小規模事業者への影響は深刻とされています。多くの事業者が代替地の確保に苦慮しており、ブリクストン地区内での同等の条件での物件確保は困難な状況です。
この問題は、ロンドン全体が直面している“文化的価値と住宅需要のバランス”という課題を象徴しています。英国では住宅不足が深刻な社会問題となっている一方で、地域の文化的拠点の保護も重要な課題となっており、両立が困難な状況が続いているのです。
英国都市開発の深刻な現実:住宅危機とコミュニティ保護の狭間

POP Brixtonの問題は、ロンドンをはじめとする英国主要都市が直面する都市開発の課題を浮き彫りにしています。住宅不足の解決と既存コミュニティの保護という相反する要求をどう調和させるかが問われているのです。
英国では現在、年間約30万戸の新規住宅供給が必要とされていますが、実際の供給量は年間約20万戸程度にとどまっています。ロンドンでは特に深刻で、平均的な住宅価格が年収の約10倍に達し、若年層の住宅取得を困難にしています。この状況を受けて、政府は住宅供給の加速を最優先政策として位置づけています。
一方で、近年ロンドンでは多くの独立系文化施設やコミュニティスペースが再開発の波にのまれています。過去5年間で、類似のコミュニティ主導型施設約30か所が再開発により閉鎖されており、POP Brixtonと同様の施設が次々と姿を消している現状があります。
都市計画専門家のデイビッド・マーティン教授(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)は「短期的な住宅供給の増加は重要だが、長期的な地域の持続可能性を考慮した開発計画が必要」と指摘。地域の文化的多様性の維持と住宅供給のバランスをどう取るかが、今後の都市政策の重要な課題となっています。
存続への最後の希望:代替案検討と政策レベルでの議論

現在、POP Brixtonの運営団体「Make Shift」や支援者たちは、施設の完全な取り壊しを避けるための代替案を積極的に模索しているところです。新開発計画の中にコミュニティスペースを組み込む混合開発モデルの採用や、近隣地域への段階的移転案などが検討されています。
一部の都市計画専門家は、住宅開発とコミュニティ施設を組み合わせた混合開発モデルの採用を提案。このモデルでは、住宅タワーの低層階や隣接エリアにPOP Brixtonの機能を移転し、住宅供給とコミュニティ機能の両方を実現できる可能性があります。ただし、現在の家賃水準の維持や事業者の移転コスト負担など、解決すべき課題は多そうです。
ランベス区評議会議会では、この問題について9月中旬に特別委員会が開催される予定。地域住民代表、事業者、開発業者が一堂に会し、妥協案の模索が行われる見通しです。
この問題は単一の開発案件を超えて、英国の都市計画政策全体に関わる議論を呼んでいます。ロンドン市長のサー・サディク・カーンも「コミュニティ施設の保護と住宅供給の両立」を重要政策課題として認識し、新たなガイドライン策定を検討している状況です。
POP Brixtonの運命は、英国の都市開発が進むべき方向性を示す重要な指標となりそうです。地域コミュニティと行政、開発業者の間でどのような合意が形成されるか、今後数か月の展開が注目されます。
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