ウェールズ・アーツ・インターナショナル、喜多能楽堂でSDGs芸術パネル開催

ウェールズ・アーツ・インターナショナル、喜多能楽堂でパネルディスカッション「未来を育む芸術」を開催

ウェールズ・アーツ・インターナショナル(WAI)は、ウェールズ政府の協力のもと2025年10月15日(水)に東京・品川区の喜多能楽堂でパネルディスカッション「未来を育む芸術:伝統と創造で考えるSDGsの可能性、芸術と社会の関わり」を開催しました。本イベントは「日本におけるウェールズ年(Year of Wales in Japan 2025)」キャンペーンの一環として実施され、世界初の未来世代法10周年を記念する文化交流の場となりました。




ウェールズ未来世代ウェルビーイング法とは

ウェールズは2015年に「未来世代のためのウェルビーイング法(Well-being of Future Generations Act)」を制定し、現存世代だけでなく未来に生まれる人々も考慮した立法を行った世界初の国となりました。この法律は、長期的視点・予防的視点・協働・総合的視点・すべての利害関係者の関与という5つの柱で構成されています。SDGsが掲げる環境・経済・社会の3側面に加え、ウェールズは文化を第4の要素として法に組み込んでいる点が特徴です。2025年は同法制定から10周年の節目にあたり、日本でも未来世代委員会設立に向けた動きが進んでいます。



能楽師とウェールズアーティストが登壇

ウェールズ・アーツ・インターナショナル、喜多能楽堂でパネルディスカッション「未来を育む芸術」を開催

パネルディスカッションには、能楽師・観世流シテ方の坂口貴信さんとウェールズ在住アーティストの森順子さんが登壇しました。坂口さんは能の経験をもとに演者だけでなく観客も育てる重要性を指摘し、学校教育での和楽の学びが不足している現状を例として紹介しました。森さんはウェールズ語教育の復活を通じて地域社会が創造性を育む事例を紹介し、ウェールズと日本の教育や文化の違いについて解説しました。日本の伝統芸能とウェールズのコンテンポラリーアートという一見異なる芸術が、繰り返しの鍛錬によって磨かれる点や、その過程に宿る精神性において共通するヴィジョンを持つことが明らかになりました。



ウェールズ政府関係者が法の意義を解説

フィオン・トーマス

ウェールズ政府国際関係・海外ネットワーク副局長フィオン・トーマス氏

ウェールズ大学トリニティ・セント・デイヴィッド名誉副学長ジェーン・デイヴィッドソン氏

ウェールズ大学トリニティ・セント・デイヴィッド名誉副学長ジェーン・デイヴィッドソン氏

イベントはウェールズ政府国際関係・海外ネットワーク副局長のフィオン・トーマス氏による挨拶で始まりました。トーマス氏は「ウェールズの文化や言語を紹介するだけでなく、両国のアーティストや思想家とともに学び、協力し、創造性を通じて持続可能で公平な社会づくりへと、共に成長できることを誇りに思っています」と述べました。続いて「未来世代のためのウェルビーイング法」の礎を築いたウェールズ大学トリニティ・セント・デイヴィッド名誉副学長ジェーン・デイヴィッドソン氏が、法の意義や背景について詳しく解説しました。デイヴィッドソン氏は「ウェールズが文化をSDGsの中核に据え、世界に先駆けて法律化したことが、国際的な影響を広げる意義ある行動であると言えます」と語りました。



映像作品とシアター公演を発表

イベントの最後には、ウェールズ・アーツ・インターナショナル代表のエリネド・ハーヴ氏が映像『Pethau Bychain(ペサウ・ビハイン)』の公開を発表しました。ウェールズ語で「小さなこと」を意味するこの映像では、森順子さんを含むウェールズ在住の7名のアーティストが「未来世代のためのウェルビーイング法」をテーマに、それぞれの創作活動を通じた取り組みを紹介しています。

シアター・カムリ『カルの旅』

また、ウェールズ国立劇団シアター・カムリによる話題作『カルの旅』が2025年10月18日(土)と19日(日)に『三茶de大道芸』で公演されることも発表されました。2022〜23年のウェールズ子ども文学大使を務めたカシ・ウィン氏が脚本・主演を務め、音楽・ダンス・想像力が融合した友情と希望の物語を描く無料公演となります。



芸術を通じた持続可能社会の実現へ

今回のパネルディスカッションは、これまで十分に議論されてこなかった「芸術と社会の関わり」について、ウェールズの実践事例や視点を紹介する貴重な機会となりました。ウェールズが文化を持続可能な社会の基盤として重視している点は、SDGsの3側面に加えて人間の営みに深く根ざした価値観や希望を政策に組み込む先進的な取り組みといえます。日本においても、伝統文化の継承や創造性が地域社会や教育に与える影響について再考する契機となり、未来世代へつなぐ環境づくりの重要性が共有されました。ウェールズと日本が「過去を大切にし、今を豊かに生き、より良い未来を築いていく」という共通のビジョンを持つことが確認され、今後の文化交流がさらに深まることが期待されます。

 

Link

https://www.wales.com/ja

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