英国政府観光庁アジア統括・ポール・ガウガー氏インタビュー|日本人旅行者に伝えたい英国の新しい魅力とロケ地戦略

Paul Gauger - VisitBritain

ロンドン、ハリー・ポッターのロケ地、湖水地方──日本人旅行者の61%がリピーターという英国。「また行きたい」と思わせる魅力は尽きませんが、実は70%もの日本人旅行者が映画やテレビのロケ地訪問に強い関心を持っているという事実は、新しい旅の可能性を示しています。2026年はハリー・ポッター25周年、くまのプーさん100周年という記念の年。『ダウントン・アビー』最終作や『嵐が丘』新作映画の公開も控え、スクリーン・ツーリズムを軸とした地方への誘客戦略が本格化しています。リピーターにこそ届けたい「まだ見ぬ英国」について、2025年4月からアジア地域を統括する英国政府観光庁のポール・ガウガー氏(Executive Vice President, The Americas, Asia, & Australia/NZ)に、日本市場の特性、2026年の注目コンテンツ、地方の魅力、そして今後の観光戦略までを聞きました。




日本人旅行者の61%がリピーター|英国が「また行きたい」と思わせる理由

A silhouette of a man in a cafe bar with Big Ben in focus in the background, South Bank, London

Photo: VisitBritain/Michael Matti

──日本には何度も訪問されているそうですね。

初めて日本を訪れたのは1998年の長野冬季オリンピックの時です。2000年代に数回訪日し、直近では2018年でした。コロナ直前でしたね。今年4月にアジア地域を担当することになり、ようやく再び訪れることができました。

ロンドンで勤務していた頃は、オリンピック関連の業務で多くの日本人撮影クルーやメディアと接する機会がありました。日本の人々や文化が大好きです。この役職に就けて本当に嬉しく思っています。

──日本、中国、韓国市場を統括されていますが、日本市場の特徴をどう捉えていますか?

日本市場の大きな特徴は、61%がリピーターであることです。何度も英国を訪れることを好んでおり、それは素晴らしいこと。私たちは日本の人々が戻ってくるための新しい理由を提供し続ける必要があります。

もうひとつ注目すべきデータは、日本人旅行者の約70%が映画やテレビのロケ地訪問に興味を持っているということ。これは非常に大きな動機付けです。お気に入りのキャラクターの足跡をたどり、スクリーンで見たものを実際に訪れることができる。『007』シリーズでもその他の大作映画でも、訪れたいと思う場所への強い憧れや思い入れを生み出すのです。

また、日本からの旅行者は個人旅行(FIT)が多く、ますます多くの人がツアーに頼らず自分で旅程を組んで旅行するようになっています。特に若い人々は、ソーシャルメディアで見たコンテンツクリエイターやインフルエンサーに影響を受ける傾向が強いですね。



2026年注目のロケ地|ハリポタ25周年、ダウントン・アビー最終作、ハムネット、嵐が丘

──2026年に特別なプロモーションは計画されていますか?

Two wizarding professors demonstrating flying on a broom in the Outer Bailey in Alnwick Castle, Northumberland

アニック城 Photo: Alnwick Castle

2026年はハリー・ポッター25周年です。新しいハリー・ポッターのドラマも2027年に配信されるので、ロケ地を訪れる良いきっかけになります。アニック城で箒の乗り方を学ぶこともできますし、今でもキングス・クロス駅では多くの人がハリー・ポッター関連の写真を撮るために並んでいます。ワーナー・ブラザーズ・スタジオ・ツアーもおすすめです。

トーキーのアガサ・クリスティ像

トーキーのアガサ・クリスティ像

そして、くまのプーさんの100周年でもあり、アガサ・クリスティの没後50周年でもあります。文学にゆかりのある場所も注目したいところです。

──映画作品では何がありますか?

『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』05

『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』 ©2025 FOCUS FEATURES LLC.ALL RIGHTS RESERVED

『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』が2026年1月16日に日本で公開されます。実際のロケ地であるハイクレア城を訪れることができ、ダウントンの舞台であるヨークシャーでは多くの村や場所を体験できます。

たびたび映像化されてきたエミリー・ブロンテの古典文学『嵐が丘』が、『バービー』のマーゴット・ロビーと『フランケンシュタイン』のジェイコブ・エロルディを主演に迎え、『プロミシング・ヤング・ウーマン』のエメラルド・フェネル監督により新たに映画化され、2月27日に日本公開されます。こちらの作品はヨークシャーで撮影されています。

クロエ・ジャオ監督の『ハムネット』も賞レースで注目を集めている作品です(ゴールデングローブ賞作品賞、主演女優賞を受賞)。シェイクスピアの息子と家族についての物語で、ストラトフォード=アポン=エイヴォンやロンドンのグローブ座を紹介する予定です。

常に映画のロケ地を見て、その場所でどんな体験ができるかを結びつけようとしています。すべての映画が日本で上映されるわけではないので、日本で人気のあるものを注視しています。

──英国政府観光庁が展開す「Starring GREAT Britain」キャンペーンのコンセプトを教えてください。

このキャンペーンの前提は、ロケ地こそが映画の主役であり、人々が自分自身をその景色の中に置くことができるということです。

Dog called Marcel Le Corgi and a Piper at Edinburgh Castle, Scotland

エディンバラ城 Photo: VisitBritain/Aurelie Four/@lecorgi

個人的におすすめなのは王室関連のロケ地です。バッキンガム宮殿からウィンザー城、エディンバラのロイヤル・ヨット・ブリタニア、エディンバラ城まで。『ザ・クラウン』も日本で人気でしたね。これらは映画やテレビのロケ地であると同時に、簡単に訪れることができる観光名所でもあります。

『ノッティングヒルの恋人』のようなクラシック作品も根強い人気があります。今でもノッティングヒルを訪れ、本屋やあのドアを見たいという人は多い。クリスマスの時期には『ラブ・アクチュアリー』も注目されます。



イングランド北部・ウェールズ・スコットランド|ロンドン以外のおすすめ観光地

──現在、「Starring GREAT Britain」以外に注力している戦略について教えてください。

Birmingham, West Midlands, England

バーミンガム Photo : VisitBritain / Sean Burns

全市場で注力しているのは、ロンドン以外の地域への誘客です。もちろんロンドンも訪れてほしいのですが、イングランド北部や中部、スコットランド、ウェールズも探索してほしい。英国は決して大きな国ではないため、鉄道での移動を推奨しています。ケンブリッジやオックスフォードなら1時間、マンチェスターやリヴァプールは2時間から2時間半。ウェールズのカーディフまでは2時間という近さです。鉄道での移動は、航空機や車と比べて環境負荷も少なく、サステナブルな旅を実現できます。

──特に日本人旅行者におすすめの地域はありますか?

A view to Castle Howard from across the Atlas Fountain in the gardens at Castle Howard

ハワード城 Photo: VisitBritain/Laurent Derossi

日本人旅行者はイングランド南西部に増えています。デヴォンとコーンウォール、南部の海岸線全体です。イーストミッドランズやピーク・ディストリクトも見逃せません。ピーク・ディストリクトは『高慢と偏見』の撮影地でもありますし、ヨーク北部のハワード城は『回想のブライズヘッド』の舞台であり、『ブリジャートン』のロケ地でもあります。

Aerial view of Conwy Castle in North Wales

北ウエールズのコンウィ城 Photo: VisitBritain/Robin Creative Media

また、ウェールズ北部はまだそれほど知られていない地域です。特にウェールズの美しさは、まだ多くの日本人旅行者に知られていない魅力と言えるでしょう。

 

Fireworks display over Edinburgh Castle during the Edinburgh Fringe 2022

エディンバラ・フェスティバル・フリンジ Photo: VisitBritain/Pinzutu

スコットランドはウイスキーで人気があります。私のお気に入りはエディンバラ・フェスティバル。実は複数のパートがあり、フリンジや文学フェスティバルも含まれます。グラスゴーも素晴らしい食事がある都市です。

──イングランド北部の魅力について詳しく教えてください。

 

A woman with her arms raised enjoying the view from Curbar Edge, Hope Valley,Peak District, Derbyshire, England.

Curbar, Derbyshire, England Photo: VisitBritain / Becky Stacey

私たちの大きな優先事項のひとつが、イングランド北部です。具体的には、イーストミッドランズ、ウェストミッドランズ、マンチェスター、リヴァプール、ニューカッスル、ゲーツヘッドなど。

A group of friends, two men and a woman take a selfie in front of a statue of The Beatles, Liverpool Waterfront, Liverpool.

リヴァプールのザ・ビートルズ像 VisitBritain/Zut Media

リヴァプールと聞いてザ・ビートルズを思い浮かべるかもしれませんが、それ以上のものがあります。リヴァプールFCもあり、美しいホテルもあり、タイタニックの歴史もある。マンチェスターには、活気ある音楽シーン、サッカーシーン、そしてLGBTQ+カルチャーの中心地であるカナル・ストリートがあります。これらの北部の都市は今、かつてない活気を見せており、訪れるべき重要な目的地として浮上しています。

Man and a woman kayaking in the river Tyne, in Newcastle Upon Tyne, Tyne and Wear, England.

ニューカッスル Photo: VisitBritain/NGI/Michael Baister

ニューカッスル、ゲーツヘッドもイングランド北部の魅力的な都市です。ヨークのような伝統的な場所には多くの歴史と遺産があり、ヨークシャーへの玄関口でもあります。

プレミアリーグも非常に人気があり、ますます多くの日本人選手が加わると聞いています。若い人々にとっても良い動機付けになると思います。

人々が「英国を知っている」と言っても、「ロンドンは知っているかもしれませんが、ウェールズには行きましたか? イングランド北部には?」と尋ねます。すると「まだ英国のすべてを見ていませんね」という答えが返ってくるでしょう。どこか有名な場所を訪れることもできますが、少し先に進むだけで、新しい思い出を作ることができる忘れられない新しい場所を発見できるのです。



LGBTQ+フレンドリーでバリアフリー|すべての旅行者を歓迎する英国の取り組み

──2014年にあなたが立ち上げられた「LOVE is GREAT Britain」キャンペーンについて教えてください。

Two men at the Richmond Tea Rooms in Manchester, holding hands and one man is kissing the other man's forehead.

マンチェスターのリッチモンド・ティールーム Photo: VisitBritain/Ben Selway

LOVE is GREATキャンペーンは、英国で同性カップルの結婚が認められた時に、愛を祝うために始めました。愛はすべて平等です。それ以来、LGBTQ+のフェスティバルやプライド・イベントを推進してきました。

ただし、プライドだけに限定したくはありません。英国はLGBTQ+の旅行者を1年中歓迎しています。博物館、ギャラリー、ロンドンのウエストエンド劇場など、文化的な提供は年間を通じて誰にでも魅力的です。

ロンドンにはオールド・コンプトン・ストリート、マンチェスターにはカナル・ストリートがあります。英国人は非常に歓迎的で多様性があり、とても安全です。もっと多くの日本人LGBTQ+旅行者を歓迎したいと思っています。

──障がいを持つ旅行者に対する配慮についても教えてください。

 

コーンウォールでジップラインに挑戦する車椅子の女性

コーンウォールでジップラインに挑戦する車椅子の女性 Photo: Hangloose Adventures

多様性と包摂性は英国にとって非常に重要なテーマです。身体的な障がいを持つ方も歓迎したい。すべての人が英国で歓迎されるという理念です。

主要な観光施設や博物館の多くは、車椅子利用者や聴覚障がい者のためのアクセシブルな提供を増やしています。宿泊施設や交通機関も、すべての旅行者のニーズに対応するよう取り組んでいます。

スタッフやツアーガイドも、さまざまな文化や背景を持つ人々をサポートするための研修を受けています。ホテルスタッフも研修を受けており、例えば同性カップルがダブルベッドをリクエストしても、誰も疑問に思いません。すべての人が歓迎されていると感じられるよう、多くのトレーニングと開発が行われています。



オフシーズンがお得|2月・3月の英国旅行とリジェネラティブ・ツーリズムとは

──今後数年間で特に注力される分野はありますか?

The aurora borealis in the remote countryside by stone house ruins at Old Gang Beck, near Reeth in North Yorkshire, England.

北ヨークシャーでのオーロラ Photo: Paul Clark/Paul Astro Images

季節の分散に非常に注力しています。地域全体への旅行だけでなく、1年を通じた旅行も促進したいのです。2月や3月など、比較的観光客が少ない時期への誘客にも力を入れています。オフシーズンに旅行すれば、宿泊費や交通費を節約できるのも大きな魅力です。日本と英国の為替レートが気になる今だからこそ、賢く旅程を組むことが重要になります。

もうひとつは、リジェネラティヴ・ツーリズム(再生型観光)です。持続可能な観光はよく知られていますが、リジェネラティヴ・ツーリズムは、国のさまざまな地域に観光をもたらし、地域コミュニティを支援するという考え方です。

タクシー運転手、レストラン、ホテル、観光施設など、地域経済全体が潤い、観光産業全体の持続可能性につながります。それがリジェネラティブ・ツーリズムの本質だと思います。

──最後に、英国文化のファンである日本の読者に向けて、英国旅行の特別な魅力についてメッセージをいただけますか?

A curry dish and naan bread on the side, served at Shababs restaurant in Birmingham

バーミンガムのShababs Balti Restaurant Photo: VisitBritain/Storyman

英国は、コンパクトな国土に都市、田園、海岸という多様な魅力が凝縮されています。文化施設も充実しており、主要な博物館やギャラリーは無料で入場できます。演劇やミュージカルを楽しむなら、ロンドンのウエストエンドは世界屈指のエンターテインメント地区として各国の旅行者を魅了し続けています。

食べ物も大きく変化しています。日本料理、韓国料理、イタリア料理、フランス料理、レバノン料理など、あらゆる料理が英国で楽しめます。インド料理も素晴らしく、バーミンガムにはバルチカレーで知られる最大のインド料理街があります。人々が必ずしも認識していない大きな変化です。もはやフィッシュ・アンド・チップスだけではありません。

ショッピングも充実しています。個性的な独立系ショップから大手チェーンまで。田園地帯は本当に素晴らしく、歴史と遺産があります。英国では、訪れた場所に特別な愛着を感じ、自分らしくいられる心地よさを体験してほしいと思います。レストラン、歴史的建造物、音楽フェスティバル、プレミアリーグ──それぞれの興味に応じて、英国ならではの体験をぜひ楽しんでみてください。

取材協力 : 英国政府観光庁

 

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https://www.visitbritain.com/en

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