- Food
実際に行ってわかった──デボン州ダートムーアの名宿「トゥー・ブリッジズ・ホテル」と本場クリームティーの魅力
デボン州ダートムーア国立公園の中心に佇む「トゥー・ブリッジズ・ホテル(Two Bridges Hotel)」は、1792年創業の歴史ある宿です。ヒースロー空港から約350km、レンタカーで3時間半ほどのドライブで到着。地元デボン産食材にこだわる本場クリームティーと、英国の原風景が息づくカントリーサイドの旅の醍醐味をすべて凝縮したようなこのホテルを、実際の訪問体験とともにご紹介します。
ヒースロー空港から約350km──ダートムーアへのドライブが旅の序章になる

レンタカーあるあるで、違う車種が貸し出されるが、運転しやすかった
ロンドン・ヒースロー空港を朝に出発し、M4・M5と高速を乗り継いでデボン州へ。ヒースローからトゥー・ブリッジズ・ホテルまでの道路距離は約350kmで、東京から名古屋へ向かうのとほぼ同じ距離感です。イギリスは日本と同じ左側通行ですので、日本人ドライバーにとっても比較的慣れやすい環境です。エクセター付近からA30に入り、ダートムーアへ。そこから先は別世界です。

トゥー・ブリッジズ・ホテル(Two Bridges Hotel)の外観
高速を降りた途端、車窓の風景が一変します。なだらかな丘陵が続くカントリーサイドから、花崗岩の岩塊(トア)が点在するダートムーア特有の荒野へ。道幅が狭くなる石積みの壁沿いをゆっくり進むと、西ダート川(West Dart River)のほとりに佇むホワイトの外壁が見えてきます。それがトゥー・ブリッジズ・ホテルです。このドライブそのものが、すでに旅の一部です。

ダートムーアからプリマスを望む
帰路はホテルから南西へ約12マイル(約19km)、20分ほどで港湾都市プリマスへ。プリマスでの一泊を加えれば、ダートムーアの静寂とデボン海岸の賑わい、対照的なふたつの顔を一度の旅で味わえます。
1792年創業──名優も愛した、古き良きイングランドの空間

1792年、サー・フランシス・ブラーによって建てられたこのホテルは、もともと「サラセンズ・ヘッド(Saracen’s Head)」という名の馬車宿(コーチング・イン)でした。ダートムーアを横断する旅人たちの憩いの場として親しまれ、20世紀初頭に現在の「トゥー・ブリッジズ・ホテル」へと改称。以来、その精神はそのままに、幾世代もの旅人を迎え続けています。

18世紀からの時を刻む重厚な客室
かつては『風と共に去りぬ』の主役として知られる名優ヴィヴィアン・リーや、王位を捨てた愛の人として知られるエドワード8世もこの宿に逗留したと伝えられており、宿の壁には幾重もの物語が刻まれています。第二次世界大戦中には一時的に男子校として使用されるという数奇な歴史も持ち、「イングランドで唯一フル・ライセンス(酒類販売免許)を持つ学校」として記録に残っています。いかにもイギリスらしい、思わず笑ってしまうエピソードです。

暖炉の右には蓄音機も
重い木の扉を開けた瞬間、パチパチと音を立てて燃える暖炉の温かな光、チクタクと時を刻むアンティークの柱時計、大切に受け継がれてきた調度品……古き良きイングランドの薫りが、旅の疲れをすっと解きほぐしてくれます。「30年以上通い続けている」というリピーターが複数いるほど、一度訪れると忘れられない場所として旅行者に愛されており、TripAdvisorでは1,813件のレビューで総合評価4.2点・「トラベラーズ・チョイス賞」(上位10%)を受賞しています。

イングランド南西部の権威あるグルメガイド「トレンチャーマンズ・ガイド(Trencherman’s Guide)」は、このホテルを「日常を忘れさせてくれる、至高の隠れ家(a guaranteed great escape)」と評しています。デボン州の公式観光サイト「Visit South Devon」もホテルを「ダートムーア国立公園の中心部に位置する川沿いの絶景ロケーション」として紹介しており、地元を代表する宿として確固たる地位を得ています。

宿泊客でなくても、スタッフは気さくにホテル内を案内してくれます。短い立ち寄りであっても、1792年から積み重なってきた宿の歴史を肌で感じられるのが、トゥー・ブリッジズ・ホテルの懐の深さです。運が良ければ、庭でのんびりと過ごすホテルのガチョウたちに出会えるかもしれません。訪れた人を思わず笑顔にさせる、このホテルならではののどかな光景です。ホテルのすぐ近くには、苔むした矮小オークの原生林「ウィストマンズ・ウッド(Wistman’s Wood)」へのウォーキングコースもあり、ダートムーア散策の拠点としても理想的なロケーションです。
プラウマンズランチとクリームティー──トアーズ・レストランで過ごす至福の昼

ホテルのレストラン「トアーズ・レストラン(Tors Restaurant)」では、昼食として「プラウマンズランチ(Ploughman’s Lunch)」をいただけます。デボン州産チーズ、自家製ピクルス、焼きたてのブレッド、チャツネ。シンプルな構成ながら、地元食材の質がそのまま味に直結するイギリス農村料理の代表格です。もともとは農作業の合間に取る昼食として根づいた文化であり、土地の恵みをそのまま皿に盛ったような潔さが魅力です。

ひとり分でもボリュームがあるため、クリームティーとあわせてふたりでシェアするのが日本人にはちょうどいい量かもしれません。プラウマンズランチで軽く食事を済ませてから、スコーンとクロテッドクリームでゆっくりお茶を楽しむ。このホテルのランチの正解は、この組み合わせだと実感しています。窓の外には愛犬と一緒にくつろぐゲストの姿も見られ、イギリスのカントリーサイドらしい温かなコミュニティの雰囲気が漂っています。
夜のダイニングを希望する場合も、同じトアーズ・レストランでヘッドシェフ・ジョシュ・チャン(Josh Chan)が率いる、AA 2ロゼット受賞のディナーを楽しめます。イギリスの権威ある格付け「AAロゼット」を2つ獲得したディナーを楽しめます。1956年から続くこの格付けは覆面調査員による厳正な審査で、2ロゼットは「地域で際立つ優秀なレストラン」の証です。その4コースのシグネチャー・メニューはデボン州の農家・漁師から仕入れた食材を用いた、フード・ドリンク・デボン「ベスト・ホテルレストラン」賞にも輝く実力派です。

ビール好きには、トゥー・ブリッジズ・ホテルと同じオーナーが運営する「ダートムーア・ブリュワリー(Dartmoor Brewery)」が醸造する「ジェイル・エール(Jail Ale)」も外せません。その名は、近郊のプリンスタウンに今も現役で存在するダートムーア刑務所に由来します。ナポレオン戦争時代に建てられたという歴史ある刑務所の名を冠した地ビールを、ダートムーアの荒野の真ん中で味わう。そんなイギリスらしいブラックユーモアも、この土地の旅の醍醐味のひとつです。
本場デボンのクリームティー──焼きたてスコーンと地元産クリームが織りなす味

男性のこぶしよりも大きなスコーン
イギリス旅行でクリームティーを味わうなら、デボン州を置いてほかにありません。そしてトゥー・ブリッジズ・ホテルのクリームティーは、その中でも特別な体験です。毎朝厨房で焼き上げられる特大の自家製スコーン。割った瞬間にふわりと広がる、バターと小麦の温かな香り。スコーンが温かいうちにいただくのが、ここならではの贅沢です。
添えられるのは、地元リフトン(Lifton)の名店「ホッグス・ボトム・プリザーヴズ(Hogs Bottom Preserves)」のストロベリージャムと、「ランゲージ・ファーム(Langage Farm)」の濃厚なクロテッドクリーム。ホテル自身が「西部随一のクロテッドクリーム」と胸を張るほどの品質です。どちらも生産者の名前が明かされるほど食材の出自にこだわるホテルの姿勢が、そのまま皿の上の信頼感につながっています。紅茶またはコーヒーとのセットで1人£9です。

小麦の素材感を活かしたからこそ、ジャムとクロテッドクリームの味わいが際立っていた
デボンスタイルでは、スコーンにまずクロテッドクリームをたっぷり乗せ、その上にジャムをのせるのが正式な作法。「クリームが先か、ジャムが先か」。コーンウォール州との永遠の論争に思いを馳せながら、ぜひ本場の味を堪能してください。肌寒い日には暖炉の火が揺れる落ち着いたラウンジで、晴れた日には西ダート川のせせらぎが聞こえるリバーサイドガーデンのテラスで。クリームティーはランチタイムからお茶の時間まで終日楽しめます。宿泊客でなくても立ち寄りで注文できるので、ドライブや散策の途中に気軽に組み込めるのも嬉しいポイントです。
ダートムーアからプリマスへ──デボン南西部を巡る1泊2日モデルプラン

ヒースローを朝出発し、昼にトゥー・ブリッジズ・ホテルでプラウマンズランチとクリームティーを堪能。午後はスタッフによるホテル案内と川沿いの庭園散歩で過ごし、夕方にプリマスへ移動。この旅程は、ダートムーアの秘境感とデボンの港町の賑わいをひとつの旅でバランスよく体験できる、おすすめのルートです。
- 1日目 午前:ヒースロー空港でレンタカーを借り、M4・M5・A30経由でダートムーアへ(約3時間半・約350km)
- 1日目 昼:トアーズ・レストランでプラウマンズランチ&クリームティー(ふたりでシェアがおすすめ)
- 1日目 午後:スタッフによる館内案内、西ダート川沿いのリバーサイドガーデン散歩(立ち寄りのみ・宿泊不要)
- 1日目 夕方:プリマスへ移動(約12マイル・約19km、20分ほど)し一泊
- 2日目:プリマス観光(ザ・ホー、バーバカン地区など)後、ヒースロー方面へ帰路

プリマスのロイヤル・ウィリアム・ヤードからの夕焼け
プリマスは、1620年にメイフラワー号が出港した歴史の港。ザ・ホー(The Hoe)からの海の眺望や、バーバカン地区の石畳の路地など見どころも多い街です。ダートムーアの深い静寂を体に残したまま、夕暮れのプリマスの港へ向かう。そのコントラストが、このルートの醍醐味だと感じています。イギリス南西部を深く知りたい方に、自信を持っておすすめできる旅程です。
Text by British Culture in Japan編集部
Link
Sponsered Link
Sponsered Link
Ranking
注目の記事ランキング
- Travel
- Food
- Food
- Food

