ハシエンダからアストリアまで|ロンドンV&A博物館で「ロスト・ミュージック・ヴェニューズ」展開催

Gallery views of Lost Music Venues, a new free display opening on Saturday 30th May at V&A South Kensington, London.

ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)で2026年5月30日(土)から英国の失われた音楽会場を称える展示「ロスト・ミュージック・ヴェニューズ(Lost Music Venues)」が開幕。一般公募を含む100点以上の品を通し、40年間にわたる英国音楽の創造性とコミュニティの歴史を紐解きます。

伝説のアーティストたちの軌跡とコミュニティの誕生

Gallery views of Lost Music Venues, a new free display opening on Saturday 30th May at V&A South Kensington, London.

Photo by David Parry

1980年代、英国の音楽会場はダンスホールや映画館から進化を遂げ、ミュージシャンたちのツアー需要に応える形でコミュニティの基盤となりました。本展では、ハシエンダの会員証やザ・スミスなどの初期のギグポスターに加え、コンバースやドクターマーチンといったサブカルチャーの定番ファッションが展示されます。

Gallery views of Lost Music Venues, a new free display opening on Saturday 30th May at V&A South Kensington, London.

Photo by David Parry

また、ロンドン・アストリアのオリジナル看板(デーモン・アルバーンより借用)や、デヴィッド・ボウイやボブ・マーリーが歴史的なギグを行ったレインボー・シアターを救うための1980年のキャンペーン資料も公開されます。ジョーン・バエズによる支援のスケッチなど、貴重な歴史的一歩を垣間見ることができます。

草の根会場が育んだインディーズ音楽の黄金期

Gallery views of Lost Music Venues, a new free display opening on Saturday 30th May at V&A South Kensington, London.

Photo by David Parry

Gallery views of Lost Music Venues, a new free display opening on Saturday 30th May at V&A South Kensington, London.

90年代に入るとインディ・シーンはさらに活況を見せるようになり、レスターのシャーロット、バースのモールズ、マンチェスターのロードハウスといった「トイレット・サーキット」と呼ばれる草の根の会場ネットワークが重要な役割を果たしました。この衝撃的な名称は、会場の設備が非常に貧弱で、ステージのすぐ脇にトイレが配置されていたり、楽屋とトイレが兼用であったり、あるいは文字通り不衛生で荒削りな空間であったことに由来しています。しかし、こうした過酷な環境こそが、新進気鋭のバンドに実力を磨く場を提供し、彼らのタフさを鍛え上げる最高の実験場となったのです

Briefcase
Briefcase used by Mark Webber as tour manager, 1990s

Briefcase used by Mark Webber as tour manager, 1990s

Photograph of Pulp backstage at Jericho Tavern, Oxford, 1993 Printed photograph

Pulp performing in Jericho. Photograph by Mark Webber

展示では、パルプが地元のシェフィールドを飛び出そうとしていた時期のツアーマネージャー、マーク・ウェバー氏のアタッシュケースや、1990年にロンドンのブル・アンド・ゲートで行われたライヴで、出版契約を勝ち取るきっかけとなったブラーのセットリストが紹介されます。さらに、ノエル・ギャラガーが1994年にツアーバス内で執筆したオアシスの「ハーフ・ザ・ワールド・アウェイ」の手書き歌詞も並びます。2000年代半ばにソーシャルネットワークの普及によってコールドプレイやアークティック・モンキーズが頭角を現していった変遷や、ギグフォトグラファーの黄金期にも焦点を当てます。

音楽シーンを取り巻く課題と会場保護への取り組み

Gallery viewzs of Lost Music Venues, a new free display opening on Saturday 30th May at V&A South Kensington, London.

Photo by David Parry

第3のセクションでは、現在も音楽会場が直面している様々な課題にスポットを当てます。ロンドン北部にあり現在も営業を続けるラウンドハウスのアーカイブ資料からは、騒音苦情やライセンス法、警察との問題がいかにライヴ会場を圧迫しているかが浮き彫りになります。

また、コロナ禍のロックダウン中にアレックス・アモロスが撮影した会場の写真からは、今なお残るパンデミックの影響が生々しく伝わってきます。こうした危機に対し、会場を保護しライセンス政策の変更を訴え続けるミュージック・ヴェニュー・トラストや、北アイルランドのフリー・ザ・ナイト、リーズのノー・プレイス・レフト・トゥ・プレイ、全英規模のセイヴ・アワー・シーンといった草の根組織の尽力も紹介されます。

クラブカルチャーの隆盛と個性の実験場

Gallery views of Lost Music Venues, a new free display opening on Saturday 30th May at V&A South Kensington, London.

Photo by David Parry

 

Poster for Jamie Reid Banksy exhibition at the Arches, Glasgow. Designed by Niall Walker, 2001

Poster for Jamie Reid Banksy exhibition at the Arches, Glasgow. Designed by Niall Walker, 2001

最後のセクションでは、1990年代から2000年代にかけて英国で巻き起こったクラブ・カルチャーの興隆を探索します。ファクトリー・レコードやニュー・オーダーらが1982年にマンチェスターで創設した伝説的なクラブ「ハシエンダ」の外観看板や、HIVへの意識を高めるために開催されたクィア・ナイトのフライヤー、2015年に閉鎖されたグラスゴーのアート会場「ジ・アーチズ」での初期のバンクシー展のポスターなどが並びます。

Gallery views of Lost Music Venues, a new free display opening on Saturday 30th May at V&A South Kensington, London.

Photo by David Parry

また、1992年にオックスフォード・ストリートでオープンしたマルチジャンルクラブ「プラスティック・ピープル」のフライヤーや、最初期のスーパークラブのひとつ「ジ・エンド」のオリジナルドアも登場。クラブ文化が育んだ個人の自己表現の場として、レイ・バワリーやナオミ・キャンベルらが集ったナイトイベント「キンキー・ゲリンキー」のために、ヴィヴィアン・ウエストウッドが特別にデザインした一点物のレオパード柄アンサンブルも展示され、ファッションと音楽の深い繋がりを示しています。

ヴィクトリア&アルバート博物館「ロスト・ミュージック・ヴェニューズ」展示概要

Photographs
Photograph of White Heat indie night at Madame Jojo’s, London, 13 April 2005 Gregory Nolan London 2005 Printed photograph

White Heat indie night at Madame Jojo’s. Photograph by Gregory Nolan, 2005

ヴィクトリア&アルバート博物館で開催される注目の展示「ロスト・ミュージック・ヴェニューズ」の開催期間や入場料などの詳細は以下の通りです。

会場
ヴィクトリア&アルバート博物館
会期
2026年5月30日(土)〜2027年10月30日(土)
開館時間
10時〜17時45分(金曜日は10時〜22時)
休館日
12月24日、12月25日、12月26日
入場料
無料

Text by British Culture in Japan編集部

 

Link

https://www.vam.ac.uk/exhibitions/lost-music-venues

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