スコットランドが誇る至宝の名画が一堂に会する『スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち』展が東京・神戸・北九州で開催

スコットランド国立美術館内観

スコットランド国立美術館は、上質で幅広い、世界でも指折りの西洋絵画コレクションを有する美の殿堂です。

1859年の開館以来、購入や地元名士たちの寄贈や寄託などによってコレクションの拡充を続け、世界最高峰の美術館のひとつとなりました。

同館とスコットランド国立肖像画美術館、スコットランド国立現代美術館により構成されるスコットランド国立美術館群には約12万点が所蔵され、その充実のコレクションを一目見ようと毎年230万人以上が訪れています。

.スコットランド国立美術館外観 のコピー

本展は、そのようなスコットランドが誇る至宝の中から、ラファエロ、エル・グレコ、ベラスケス、レンブラント、ブーシェ、スーラ、ルノワールなど、ルネサンス期から19世紀後半までの西洋絵画史を彩る巨匠たちの作品を展示。

さらに、同館を特徴づけるゲインズバラ、レノルズ、レイバーン、ターナーなどによる、イングランド絵画とスコットランド絵画の珠玉の名品も多数出品され、油彩画・水彩画・素描約90点を通じて、西洋美術の流れを紹介します。

スコットランドが誇る美の殿堂を通じて、ヨーロッパ大陸と英国との文化交流から、英国美術がはぐくまれた様子を紹介する機会にもなることでしょう。

プロローグ スコットランド国立美術館

ヨーロッパで最も壮大な景観を持つ首都のひとつであり、その街並みが世界遺産に登録されたエディンバラの中心部に位置するスコットランド国立美術館。

ここでは、新古典主義の様式で建てられた美術館の素晴らしい建物と、それを取り巻くエディンバラの街並みを描いた絵画や、館内の様子を描いた貴重な作品を紹介します。

 

Arthur Elwell Moffat

アーサー・エルウェル・モファット《スコットランド国立美術館の内部》1885年 水彩、白の不透明水彩・紙 88.5×64.4cm

メインギャラリーを象徴する赤い壁は現在でも変わっていません。

第1章 ルネサンス

フィレンツェ、ヴェネツィア、ローマを中心に芸術文化が花開いた、ルネサンスという偉大な創造性の時代を、著名な絵画と素描で紹介。

その中には、ラファエロによる祭壇画のための下絵や、レオナルド・ダ・ヴィンチの師ヴェロッキオによるとされる聖母子像に加え、パリス・ボルドーネがヴェネツィア風の豊かな色彩の織物や衣服とともに、古代神話のテーマを暗示した官能的な作品も含まれています。

宗教画だけでなく、より世俗的な作品も描かれていたことは、芸術家に求められた役割の幅広さやパトロンの興味や嗜好の多様性を示しています。

また、特異な才能を持つエル・グレコの作品も、この時代の芸術の国際的なつながりを示すものとして展示されます。

 

Attributed to Andrea del Verrocchio; and Workshop

アンドレア・デル・ヴェロッキオ(帰属)《幼児キリストを礼拝する聖母(「ラスキンの聖母」)》1470年頃 テンペラ、油彩・カンヴァス(板から移行) 106.7×76.3cm

印象的な古代遺跡の前で、幼児キリストに祈りをささげる聖母マリア。出血した指をしゃぶるようなキリストの仕種は、後に彼が磔刑に処され、血を流すことを想起させます。

背景の壮大な遺跡はおそらく古代ローマの神殿を表しており、古い宗教に対するキリスト教の勝利を象徴しています。

本作は19世紀の高名な批評家であり画家であったジョン・ラスキンが大切に所有していたことから、「ラスキンの聖母」という名で知られるようになりました。

 

Raphael (Raffaello Santi)

ラファエロ・サンツィオ《「魚の聖母」のための習作》1512-14年頃 筆と茶の淡彩、白のハイライト、黒チョーク・紙 25.8×21.3cm

ルネサンスを代表する巨匠ラファエロによる素描で、中央に聖母子、左に大天使ラファエルと魚を持ったトビアス、右に聖ヒエロニムスとライオンが描かれています。

本作は通称「魚の聖母」と呼ばれる油彩画の習作で、完成作はスペインのプラド美術館に所蔵されています。

聖母の頭を頂点とする三角形構図に配された人物たちは、ほとんど彩色されていないにも関わらず立体感をもって描かれており、ラファエロの並外れた力量がよく表れています。

El Greco (Domenikos Theotokopoulos)

エル・グレコ《祝福するキリスト(「世界の救い主」)》1600年頃 油彩・カンヴァス 73×56.5cm

右手を挙げて祝福のポーズをとり、世界を表す水晶の球体の上に左手を置くキリストの半身像で、図像的には「サルバトール・ムンディ(救世主としてのキリスト)」と呼ばれます。

時代的な隔たりはあるものの、正面性の強い人物の描き方には、若き日に故郷クレタ島で学んだビザンティンのイコンの伝統が認められます。

本作は、当時スペインで流行していた、救世主キリストと十二使徒を描いた連作中の1点だった可能性も指摘されています。

第2章 バロック

17世紀のヨーロッパでは、各地で革新的な画家たちが従来の世界観を覆そうとしました。

オランダでは、レンブラントが聖書や神話の登場人物に深い人間性を与え、見るものの共感を誘いました。

スペインでは、19歳の若きベラスケスが、日常のささやかな題材を偉大な芸術の域にまで高め、かつてないリアリズム絵画を制作しました。

ドイツのエルスハイマーは、銅板に精緻で見事な色彩の細密画を描き、ヨーロッパ中のコレクターや芸術家たちに愛されました。

また、ルーベンスやコルトーナらの習作や素描からは、この時代の主要な芸術家たちの制作過程や並外れた自由な発想を垣間見ることができます。

 

Rembrandt (Rembrandt van Rijn)

レンブラント・ファン・レイン《ベッドの中の女性》1647年 油彩・カンヴァス 81.1×67.8cm

オランダの巨匠レンブラントによる謎めいた作品。描かれているのは、『旧約聖書』の「トビト記」の物語から、結婚初夜に新郎を7度悪魔に殺されたサラが、新たな夫トビアスと悪魔の戦いを、固唾をのんで見守る場面ではないかと考えられています。

しかし、レンブラントは主題を特定するような描き方を避けており、作品の解釈は鑑賞者の想像力にゆだねられています。

女性のモデルについても複数の候補が挙がるなど、多くの謎に満ちた作品ですが、女性の期待と不安の入り混じった表情など、レンブラントの感情表現の巧みさがよく表れた作品です。

 

Sir Peter Paul Rubens

ペーテル・パウル・ルーベンス《頭部習作(聖アンブロジウス)》1618年頃 油彩・板 49.6×38.1cm

バロックを代表する巨匠ルーベンスが、工房で制作する大祭壇画のためのオイルスケッチとして直接手がけた貴重な作品。

 

Diego Velazquez

ディエゴ・ベラスケス《卵を料理する老婆》1618年 油彩・カンヴァス 100.5×119.5cm

17世紀スペインを代表する画家ベラスケスが10代の頃に描いた作品。台所や酒場の情景を描いたボデゴン(厨房画)と呼ばれるジャンルの作品で、油で熱されている卵や、周囲の陶器や金属の器、ガラスの瓶など様々な物が見事に描き分けられています。

この目の覚めるような質感描写への力の入れ具合から、独り立ちしたばかりの若き画家が、自らの力量を世に示そうとした野心的な作品だったと思われます。

日常的な台所を描いた作品ながら、本作はスコットランド国立美術館のコレクションで最も魅力的な作品のひとつに数えられています。

 

Studio of Sir Anthony van Dyck

アンソニー・ヴァン・ダイク《アンブロージョ・スピノーラ侯爵(1569-1630)》1627年 油彩・カンヴァス 121.9×96.5cm

ルーベンスの弟子で、イングランドの宮廷画家として活躍。レノルズなど後の英国肖像画に絶大な影響を与えました。

第3章 グランド・ツアーの時代

18世紀のパリでは、浮世離れした幻想的な理想郷を描いた絵画が好まれました。ブーシェによる華々しくも牧歌的な大作は、この時代のフランス絵画を象徴する作品のひとつです。

イギリスでは、肖像画が発展し、三大画家と呼ばれるゲインズバラ、レノルズ、ラムジーが活躍します。レノルズの《ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち》は、古典芸術の構図を参照しながらも、親密な魅力を備えており、後世の画家たちにも影響を与えた作品です。

また、この時代はイギリスのコレクターたちが、美術品の購入や文化的教養を深めるために「グランド・ツアー」と呼ばれる大規模なヨーロッパ旅行をした時代でもありました。

とくにイタリアは重要な土地であり、グアルディによるヴェネツィアの美しい風景画などが、熱心に収集されました。

 

Sir Joshua Reynolds

ジョシュア・レノルズ《ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち》1780年 油彩・カンヴァス 143×168.3cm

イギリスの絵画史上、最も重要な画家の一人で、ロイヤル・アカデミーの初代会長も務めたジョシュア・レノルズの代表作のひとつ。

令嬢たちの背後にある石の柱や欄干といったモティーフや、右上に見える空の表現などにティツィアーノやルーベンスといった過去の巨匠たちの影響が見られます。

また、三人の女性が並ぶ構図は「三美神」という伝統的な主題を想起させます。歴史画の様式を取り入れることで肖像画の地位を高めようとしたレノルズを象徴する作品です。

 

フランソワ・ブーシェ《田園の情景》(左から)「愛すべきパストラル」/「田舎風の贈物」/「眠る女庭師」(左から)1762年/1761年/1762年 油彩・カンヴァス(左から)231.5×91cm/232.1×93.4cm/232×91cm

フランス・ロココの代表的な画家であるブーシェの晩年の作品。何の脅威も感じさせない豊かな自然の中で、羊飼いや庭師たちが若い女性に花を贈って誘惑しています。

こうした、理想化された牧歌的風景の中での男女の戯れは、ブーシェの芸術を象徴するもので、非常に人気を博した主題でした。この3点は、どれもかなり細身で縦長の構図となっており、おそらく背の高い窓の間にかけられていたと考えられます。

第4章 19世紀の開拓者たち

19世紀に入っても、肖像画や風景画などのなじみのある題材は引き続き好まれました。その一方で、世紀半ばに活躍した外光派や、その後の印象派、ポスト印象派など、革命的な個人やグループの画家たちが登場し、大きな変革をもたらした時代でもありました。

ここでは、スコットランドのレイバーンやグラントによる華麗で伝統的な「グランド・マナー」の肖像画や、文学や物語をテーマにしたミレイの感傷的な魅力を持つ作品、コンスタブルやターナーによる革新的な風景画などの英国絵画に加えて、フランスのコロー、ルノワール、スーラ、ヴュイヤールらの印象的な絵画を展示。

また、この時代に生まれたヨーロッパとアメリカ芸術の交流の象徴として、ホイッスラーによるエッチングも紹介されます。

 

フランシス・グラント《アン・エミリー・ソフィア・グラント(“デイジー”・グラント)、ウィリアム・マーカム夫人(1836-1880)》

フランシス・グラント《アン・エミリー・ソフィア・グラント(“デイジー”・グラント)、ウィリアム・マーカム夫人(1836-1880)》1857年 油彩・カンヴァス 223.5×132.3cm

ヴィクトリア朝の社交界で活躍したスコットランド出身の肖像画家。結婚直前の娘を描いた作品です。

 

Sir John Everett Millais

ジョン・エヴァレット・ミレイ《「優しき目は常に変わらず」》1881年 油彩・カンヴァス 100.5×72cm

ラファエル前派の一員として知られるミレイの作品で、鋭い観察力に基づきつつ、非常に感傷的に描かれており、後期のミレイ作品の特徴がよく表れています。

モデルは子役俳優のベアトリス・バクストンで、ミレイが彼女の両親を説得し、1881年に3回彼女をモデルにして描きました。

本作のタイトルは、女性詩人エリザベス・バレット・ブラウニングの詩から引用したもので、当初の《スミレの花を持つ少女》から、画家自身が変更したものです。

 

Claude Monet

クロード・モネ《エプト川沿いのポプラ並木》1891年 油彩・カンヴァス 82×81.4cm ※東京会場のみ

Joseph Mallord William Turner

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《トンブリッジ、ソマー・ヒル》1811年 油彩・カンヴァス 92×122cm

Paul Gauguin

ポール・ゴーガン《三人のタヒチ人》1899年 油彩・カンヴァス 73×94cm ※東京会場のみ

 

Pierre-Auguste Renoir

ピエール=オーギュスト・ルノワール《子どもに乳を飲ませる女性》1893-94年 油彩・カンヴァス 41.2×32.5cm

描かれているのは、後に有名な映画監督となるルノワールの次男ジャンと、その乳母のガブリエル・ルナールの姿です。

しかし、本作は肖像画というよりも、母性を表現した作品とみなすことができます。ルノワールは、長男が誕生した1885年以降、こうした心温まる家庭風景を好んで描きました。

女性の頭部を頂点としたピラミッド型の構図は、聖母子像、特にルネサンスの画家たちがよく描いた「授乳の聖母子」という主題を想起させるものです。

エピローグ

アメリカの風景画家チャーチが描いたセンセーショナルな《アメリカ側から見たナイアガラの滝》は、ヨーロッパのコレクションにあるこの画家の作品中、唯一の大作です。

彼はヨーロッパで学び、各地を旅行しました。この圧倒的で記念碑的なアメリカ絵画は、本展を貫く「自然を革新的な方法で見つめる」というテーマを、新たに魅力的で国際的な方向へと導いています。

この作品は、スコットランドのつつましい家庭に生まれ、アメリカに渡って財を成した実業家が、母国への感謝の気持ちを込めてスコットランド国立美術館に寄贈したものです。

 

Frederic Edwin Church

フレデリック・エドウィン・チャーチ《アメリカ側から見たナイアガラの滝》1867年 油彩・カンヴァス 257.5×227.3cm

スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち

スコットランド国立美術館THE GREATS 美の巨匠たち

 

東京会場
東京都美術館 企画展示室
会期
4月22日(金)~7月3日(日)
休室日
月曜日(ただし5月2日は開室)
神戸会場
神戸市立博物館
会期
7月16日(土)~9月25日(日)予定
休館日
月曜日(月曜が祝日の場合は翌平日に休館)
北九州会場
北九州市立美術館 本館
会期
10月4日(火)~11月20日(日)
休館日
月曜日(月曜が祝日の場合は翌平日に休館)
後援
ブリティッシュ・カウンシル
リンク
https://greats2022.jp

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