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マンチェスターの文化の魅力を市長と市議会議長に聞く|音楽、アート、観光、日本との交流
マンチェスターは、フットボールと音楽の街として世界的に有名ですが、文化的な魅力はそのふたつだけではありません。グレーター・マンチェスター市長のアンディ・バーナム氏とマンチェスター市議会議長のベブ・クレイグ氏に、マンチェスターの新たな魅力と日本との交流などについてお話を伺いました。この記事では、マンチェスターの文化の歴史や現在、そして未来について、彼らの熱い思いをお伝えします。
──以前、マンチェスターを訪れた際、ラディソン ブルー エドワーディアン マンチェスターに宿泊しました。このホテルの敷地には1853年に設立されたフリー・トレード・ホールがあり、ジョイ・ディヴィジョン、バズコックス、ザ・スミス、ザ・フォール、フランティック・エレベーターズといったバンドの結成につながったセックス・ピストルズのライヴが行われたことでも知られています。また、インスパイラル・カーペッツのドラマーだった故クレイグ・ギルのマンチェスター・ミュージック・ツアーに参加し、サルフォード・ラッズ・クラブにも訪れました。マンチェスターはフットボールと共に音楽の面でもロンドンと並ぶ都市と言えますが、今回の訪日視察団の目的と狙いを文化面からご説明いただけますか?
アンディー・バーナム市長
バーナム まず、マンチェスターを訪れてくださってありがとうございます。マンチェスターの音楽について、とてもよく知っているようですね(笑)。私たちはとても明確な文化的な目標を持っています。それは、音楽をはじめとするカルチャーを通して、グレーター・マンチェスターと日本の人々をつなげるということです。特に、マンチェスターと大阪には長い間つながりがあるので、2015年の万博を機により大阪の人々との関係性を強めたいと考えています。横山英幸大阪市長や吉村洋文大阪府知事とお会いしたとき、いくつかの文化団体を連れて行きたいと伝えました。マンチェスターを代表するバンドのいくつかも、万博の年に演奏できるかもしれません。私たちは、貿易を促進するだけでなく、カルチャーを通して日本の方々とつながることも願っているんです。
フリー・トレード・ホール
──みなさんが大阪を訪れていたとき、ノエル・ギャラガーがライヴを行っていましたよ。
バーナム そうなんです。私たちは彼が大阪でライヴをすることを知らなかったんですが、気づいて、急いで観に行きました。会場はほぼ満員で、熱心なファンがたくさん集まっていると感じました。私たちは、マンチェスターの音楽は日本の方々との友情やつながりを築くのに最適なきっかけのひとつだと考えています。音楽を通じて、さらに多くの出会いや関係性が生まれるでしょう。
ベブ・クレイグ マンチェスター市議会議長
クレイグ マンチェスターは80、90年代に英国を代表するバンドやアーティストを多く輩出しましたが、現在もとても活気があります。私たちは、2023年にサウス・バイ・サウスウエストに参加した際、新進気鋭のバンドを送り出しましたが、同時にベテランであるニュー・オーダーも参加してくれて、後進のバンドたちを紹介する役割も果たしてくれました。今のマンチェスターのバンドやアーティストはとても才能豊かで、今後ますます聴かれるようになるはずです。
──現在のマンチェスターを象徴するミュージシャンを教えてください。
バーナム たくさんの名前が思い浮かびますが、一組挙げるとするならば、エイチ(Aitch)ですね。とてもマンチェスターらしいラッパーで、私たちは彼を誇りに思っています。私は市長として、若手ミュージシャンにスポットライトを当てて、次世代のスターを育たいと考えています。
クレイグ また、マンチェスターは70~80年代からインディー・ギター・ミュージックで知られてきましたが、現在の音楽シーンは多様化し、深みを増してきています。築き上げてきた音楽遺産の多くは男性によるものでしたが、私たちは女性ミュージシャンを支援し、そのバランスを変えようしています。また、多様化という点では、エイチのような若き新たな才能、王立ノーザン音楽大学が果たす役割、そしてイングリッシュ・ナショナル・オペラが2029年にロンドンからマンチェスターへ本拠地を移すように、この都市が実に様々なリスナーやファンを抱えていることが明らかになっています。マンチェスターが都市として成長するにつれて、私たちの音楽の深みも増してきました。2024年3月にはBBC レディオ6 ミュージック・フェスティヴァルもO2 ヴィクトリア・ウェアハウスで開催されます。
──70年代のノーザン・ソウルから現在に至るまで、英国のナイトライフを象徴するようにマンチェスターは人々を魅了してきたと思います。マンチェスターでは大型のエンターテインメント・飲食施設のオープンも相次いでいるそうですが、その代表例とその魅力を挙げてもらえますか。
バーナム まず、私たちの観光に付随した経済に関してですが、グレーターマンチェスターで90億ポンド以上の価値を創出しています。そこに住む人々だけでなく、英国全土や世界中から旅行してくる人々にも魅力的であることを示している数字だと思います。特に飲食業は、この10年間で大きく成長しました。10年前はマンチェスターのレストランにミシュランの星が付くなんて、多く人が思っていなかったはずです。しかし、現在では世界的に有名なレストランを数多く抱える街になりました。また、マンチェスターのナイトタイムエコノミーはとても強い魅力を放っており、バーやヴェニューは、その重要な役割を果たしています。
アヴィヴァ・スタジオ
クレイグ ご指摘のように新しい施設もオープンして、マンチェスターのナイトライフをより魅力的なものにしてくれるはずです。『コロネーション・ストリート』などを撮影していたグラナダ・スタジオの跡地にファクトリー・インターナショナルという大規模なアート施設が2023年にオープンしました。その中に音楽や演劇、ダンス、オペラ、ヴィジュアル・アートなどの大規模な展覧会やコンサートなどを開催できるアヴィヴァ・スタジオ(Aviva Studios)もあり、昨年12月にはジョニー・マーがフル・オーケストラと共にスペシャルなライヴを行って、話題を呼びました。さらに2024年4月にはマンチェスター・アリーナよりも大きい「Co-op Live」がオープンします。着席とスタンディング共に2万人を超え、英国の屋内アリーナの中で最大の収容人数を誇る施設で、マンチェスター・シティFCやハリー・スタイルズも出資者に名を連ねています。ハリーもマンチェスター近郊の出身で、施設のデザインにも関わってくれました。新たな才能たちが集まる小さなヴェニューから、国内外のトップ・アーティストが魅了する国内最大規模のアリーナまで、すべてのサイズの会場をマンチェスターが持つことになり、マンチェスターの音楽都市としての魅力は、今までで最も強くなることでしょう。
──ファクトリー・インターナショナルは、2年に一度開催されているマンチェスター・インターナショナル・フェスティヴァルをはじめ、マンチェスターの文化を牽引する役割を与えられてオープンしたと思いますが、この施設の誕生によってマンチェスターの文化面はどのように変化していくと考えていますか。
クレイグ 長い間、マンチェスターの人々は最高のアーティストや文化的な作品を楽しむためには、ロンドンやパリに出かける必要があると言われてきました。市議会がマンチェスター・インターナショナル・フェスティヴァルの設立を支援した最大の理由は、英国北部の都市の芸術や文化について人々が考えているそうした認識を変えるためです。また、もうひとつの大きな目的は、アートに関する恒久的な拠点を設けることでした。私たちは2年に一度のフェスティヴァルでは十分ではないと考え、常に発信できる場を創出したかったのです。このファクトリー・インターナショナルは、2000年にテート・モダンがオープンして以来となる、公共部門による最大の文化投資となりました。マンチェスターの歴史は産業革命と共に語られますが、私たちはカルチャーを輸出したとも語られるようになりたいと願い、新しいレガシーを築き上げている最中なのです。
バーナム 私は、英国や他のヨーロッパの都市に住む多くの人々が、マンチェスターがファクトリー・インターナショナルのような施設を本当に作り上げることができるのかと疑っていたはずです(笑)。でも、2023年10月に正式にオープンして以来、来場者の数がすぐに25万人に達し、今では50万人を超えました。その成功はマンチェスターへの信頼の表れであるとも考えます。英国だけでなく、世界ののアーティストやクリエイターのための空間でもあり、柔軟に、どんな種類の作品もファクトリー・インターナショナルで展開することができます。カルチャーに関することならば、なんでもできると自負しています。
アヴィヴァ・スタジオ
──ファクトリー・インターナショナルの名称は、マンチェスターを代表するレコード会社だったファクトリーにちなんでいるんでしょうか?
クレイグ まさに。でも、ふたつの意味を持っていると考えています。私たちの音楽的な遺産に敬意を表するとともに、マンチェスターには非常に多く織物工場を擁し、世界最古の工業団地となった都市でもあります。私たちの産業的な遺産にも触れているのです。うまいダブル・ミーニングだと思いませんか(笑)?
──マンチェスターは日本人旅行者に人気の高い湖水地方やストーク・オン・トレント、そしてウェールズを旅するのにとても適した位置にあると思います。マンチェスターをハブとした旅行に対して、何かしらの施策などは行っているのでしょうか?
バーナム 私たちは、マンチェスターを魅力あふれる英国北部を旅する拠点として周知していきたいと考えています。ウェールズや湖水地方を訪れるには、マンチェスター空港がとても便利なのですが、残念ながら日本の方々にはあまり知られていません。イングランド北部への玄関口であることをもっと伝えていき、さらなる目標として、日本からマンチェスターへの直行便を実現させたい。時間がかかるとは思いますが、英国政府観光庁と協力しながら野望のひとつとして働きかけていきます。
マンチェスター空港
──マンチェスターを起点とした小旅行でおすすめの場所がありましたら教えてください。
バーナム もし音楽に興味をお持ちならば、マンチェスターとリヴァプールという地理的にも近接した音楽の遺産を多く持つ都市を巡ることをおすすめします。両都市は音楽的にも深い関係にあることは、ザ・ビートルズとオアシスの関係を持ち出すまでもないでしょう。マンチェスターとリヴァプールの間には、あなたが言及したノーザン・ソウルで知られるウィガンもあります。また、マンチェスターは英国で最初に設立された国立公園ピーク・ディストリクトへのアクセスも良く、湖水地方と並ぶ豊かな自然を楽しむことができるでしょう。マンチェスター市内ならば、北部のヒートン・パークがおすすめです。ここでザ・ストーン・ローゼズは再結成した際にライヴを行いました。
ピーク・ディストリクト国立公園 ©VisitBritain/Jack Anstey
クレイグ 日本の旅行者の方にはハレ管弦楽団の公演をおすすめしたいですね。日本フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者であるカーチュン・ウォンが、2024年9月よりハレ管弦楽団の首席指揮者に就任します。彼はシンガポールの出身で、マンチェスターの多様性をさらに深めてくれることでしょう。また、マンチェスターは英国の大きな社会運動の発祥地でもありました。女性の参政権を求めて闘ったサフラジェット運動はマンチェスターに拠点を置いていました。まさに“サフラジェット・シティ”ですね(笑)。運動の中心人物だったエメリン・パンクハーストの家に行ったり、市内にある彼女の像を見たりすることができます。また、労働組合が発祥したのもマンチェスターです。英国の社会史に興味がある人にとっては、見るべきものがたくさんあり、その歴史をたどるには科学産業博物館に行くことをおすすめします。ほかにもウィットワース美術館やマンチェスター美術館、マンチェスター博物館もあります。さらに、そのマンチェスター博物館に、常設展として英国初となる南アジアギャラリーもオープンしました。私たちの博物館では、エキサイティングなことがたくさん起こっているんです!
ハレ管弦楽団の本拠地ブリッジウォーター・ホール
──次にマンチェスターを訪れたら、行かなくてはいけない場所がたくさんできました。
クレイグ 1日ではとても足りないので、3日のプランで来てくださいね(笑)。
協力 : 駐日英国大使館、英国政府観光庁
Link
https://www.visitmanchester.com/
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