テート・ブリテンがYBA、クール・ブリタニアの90年代を再検証する大規模展『The 90s: Art and Fashion』が10月8日開幕

10. Juergen Teller, Young Pink Kate London 1998 (c) Juergen Teller, All Rights Reserved

ロンドンのテート・ブリテンで、1990年代の英国アート・写真・ファッションを横断的に集めた大規模展『The 90s: Art and Fashion』が、10月8日(木)に開幕。約70名の参加者による100点以上の作品を擁し、『ブリティッシュ・ヴォーグ』史上初の黒人編集長として知られるエドワード・エニンフルがキュレーションを担い、英国の創造的エネルギーが沸騰した時代を多角的に再検証します。会期は2027年2月14日(日)まで。




『ブリティッシュ・ヴォーグ』初の黒人編集長がキュレーターに──本展が生まれた背景

 

17. Edward Enninful by Adama Jalloh

Edward Enninful by Adama Jalloh

本展のキュレーターを務めるエドワード・エニンフルは、18歳で『i-D』誌史上最年少のファッション・エディターに就任し、その後イタリア版『ヴォーグ』でのスタイリストを経て、『ブリティッシュ・ヴォーグ』の編集長として同誌史上初の黒人編集長となった人物です。2025年には新たなグローバル・メディア企業「EE72」を共同創業し、現在もチーフ・クリエイティブ・オフィサーとして活動しています。自身が青春期を過ごした1990年代の体験を軸に、テート・ブリテンのキュレーターチームとともに本展を構成しました。

1980年代の経済的閉塞感を抜け出した1990年代の英国では、若い才能がDIY精神のもとで台頭しました。展示の冒頭では、コリン・デイ、ナイジェル・シャフラン、ユルゲン・テラーらによる写真が並び、雑誌『i-D』や『Dazed and Confused』が牽引した“アンチ・ファッション”としてのグランジ・スタイルの誕生を追います。



YBA、クラブ・カルチャー、ブラック・ブリティッシュの声──多様な視点が交差する展示構成

 

13.Sarah Lucas, Chicken Knickers, 1997. © Sarah Lucas. Courtesy the artist and Sadie Coles HQ, London. Tate.

Sarah Lucas, Chicken Knickers, 1997. © Sarah Lucas. Courtesy the artist and Sadie Coles HQ, London. Tate.

展示はアートとファッションを横断する複数のテーマで構成されています。トレイシー・エミン、サム・テイラー=ジョンソン、サラ・ルーカスらヤング・ブリティッシュ・アーティストによるアナーキーな表現と、ジェニー・サヴィルやバーバラ・ウォーカーが描いたリアルな人体表現が並置されます。また、マンチェスターのハシエンダやロンドンのバグリーズといった伝説的なクラブ・ナイトの記録写真も展示され、アシッド・ハウスの誕生からジャングル、ヒップホップ、ドラム&ベースの台頭までが映像と写真で辿られます。

14.Sir Steve McQueen, Bear 1993 © Steve McQueen. Courtesy the artist, Thomas Dane Gallery and Marian Goodman Gallery. Tate.

Sir Steve McQueen, Bear 1993 © Steve McQueen. Courtesy the artist, Thomas Dane Gallery and Marian Goodman Gallery. Tate.

 

3.Chris Ofili, No Woman No Cry 1998 © Chris Ofili, courtesy Victoria Miro, London. Tate.

Chris Ofili, No Woman No Cry 1998 © Chris Ofili, courtesy Victoria Miro, London. Tate.

スティーヴ・マックイーンの初期映画作品『Bear』(1993年)、クリス・オフィリのターナー賞受賞作『No Woman, No Cry』(1998年)など、“クール・ブリタニア”の語りから周縁化されがちだった視点を前景化する作品も含まれます。オズワルド・ボーテング、ジョー・ケイスリー・ヘイフォードをはじめとするブラック・ブリティッシュのデザイナーの仕事も本展の重要な軸であり、90年代英国文化の多様性をより広い角度から照射する構成です。

主な参加アーティスト・デザイナーは以下のとおりです。

  • アート:トレイシー・エミン、ダミアン・ハースト、レイチェル・ホワイトリード、サム・テイラー=ジョンソン、サラ・ルーカス、クリス・オフィリ、ジェニー・サヴィル、スティーヴ・マックイーン、ゲイリー・ヒューム、ジリアン・ウェアリング、モナ・ハトゥム、ソニア・ボイス、インカ・ショニバレ
  • ファッション:アレクサンダー・マックイーン、ヴィヴィアン・ウエストウッド、ジョン・ガリアーノ、フセイン・チャラヤン、ステラ・マッカートニー、オズワルド・ボーテング、ジョー・ケイスリー・ヘイフォード、フィリップ・トレイシー、ショーン・リーン
  • 写真:コリン・デイ、ニック・ナイト、ユルゲン・テラー、デイヴィッド・シムズ、ナイジェル・シャフラン、クレイグ・マクディーン、ヴォルフガング・ティルマンス、エレン・フォン・アンワース、スティーヴン・マイゼル



マックイーンからチャラヤンへ──アートとファッションの境界を問う

1.Alexander McQueen, AW98. Photo Guy Marineau, Vogue © Condé Nast

Alexander McQueen, AW98. Photo Guy Marineau, Vogue © Condé Nast

 

12.Nick Knight, David Toole 1998, printed 2016. Image courtesy of Nick Knight SHOW Studio.

Nick Knight, David Toole 1998, printed 2016. Image courtesy of Nick Knight SHOW Studio.

 

15.Wolfgang Tillmans, Concorde Grid, 1997 © Wolfgang Tillmans, courtesy Maureen Paley, London. Tate.

Wolfgang Tillmans, Concorde Grid, 1997 © Wolfgang Tillmans, courtesy Maureen Paley, London. Tate.

本展の核心のひとつが、アートとファッションの境界を挑発的に問い直した作家たちの仕事です。アレクサンダー・マックイーンの演劇的なプレゼンテーション映像、フセイン・チャラヤンの日常物から着想を得たデザイン作品が展示されます。写真の領域では、ニック・ナイト、デイヴィッド・シムズ、クレイグ・マクディーンが概念主導のイメージを追求し、ヴォルフガング・ティルマンスが「Concorde Grid」(1997年)でミレニアム前夜の楽観と不安を記録した作品も並びます。

 

Naomi Campbell models in Vivienne Westwood AW94 'On Liberty’. Photo Guy Marineau, Vogue © Condé Nast

Naomi Campbell models in Vivienne Westwood AW94 ‘On Liberty’. Photo Guy Marineau, Vogue © Condé Nast

 

16.Yinka Shonibare, The Swing (after Fragonard) 2001 © Yinka Shonibare. Tate.

Yinka Shonibare, The Swing (after Fragonard) 2001 © Yinka Shonibare. Tate.

展示の締めくくりには、ヴィヴィアン・ウエストウッドやジョン・ガリアーノによる歴史横断的なコレクション、インカ・ショニバレやモード・スルターによる多様性と表象への問いかけが置かれます。過去と未来の狭間にあった90年代の終わりを、現在地から再考する構成です。



関連図録と入場情報──来場前に確認しておきたいこと

Eddie Otchere, Metalheadz Sunday Sessions in the Blue Note, Hoxton Square 1995-1996 © Eddie Otchere

Eddie Otchere, Metalheadz Sunday Sessions in the Blue Note, Hoxton Square 1995-1996 © Eddie Otchere

本展に合わせ、エドワード・エニンフルとドミニク・ヘイズ=ムーアが編集した図録が刊行されます。ハードカバー版は45ポンド、ペーパーバック版は32ポンドで、240ページにわたって1990年代を体験した各界の著名人による寄稿を収録しています。ジャーヴィス・コッカー、ステラ・マッカートニー、スティーヴ・マックイーン、ソニア・ボイス、インカ・ショニバレ、ヴォルフガング・ティルマンスら展示参加者自身の言葉も読めるため、展覧会の副読本として活用できます。

Jon Shard, Flesh at The Haçienda 1996. Courtesy of British Culture Archive © Jon Shard, British Culture Archive.

Jon Shard, Flesh at The Haçienda 1996. Courtesy of British Culture Archive © Jon Shard, British Culture Archive.

会場はテート・ブリテン(ミルバンク、ロンドン)で、開館時間は毎日10時から18時。テート・メンバーは全展覧会に無料で入場できます。16歳から25歳はテート・コレクティブに無料登録することで、全テート展覧会を5ポンドで鑑賞できます。チケットはtate.org.ukまたは電話での購入が可能。90年代英国文化に関心のある方はもちろん、当時の現場を知らない世代にとっても、その熱量を体感できる貴重な機会です。

Cover Photo: Juergen Teller, Young Pink Kate London 1998 © Juergen Teller, All Rights Reserved

Text by British Culture in Japan編集部

 

Link

https://www.tate.org.uk/whats-on/tate-britain/the-90s

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