スコットランド洋上風力通商使節団が日本で成果発表、日立エナジーがグラスゴーに90人雇用の新拠点

スコットランド洋上風力通商使節団

スコットランド政府および駐日英国大使館 スコットランド国際開発庁(SDI)は2025年9月16日(火)から19日(金)にかけて「スコットランド洋上風力通商使節団」の日本訪問を実施し、日立エナジーによるグラスゴーへの新拠点開設など具体的な投資・雇用創出を発表しました。大阪・関西万博の英国パビリオンや東京でのショーケースイベント、WIND EXPO特別講演を通じ、浮体式洋上風力発電分野における日英協力の成果を示しました。




日立エナジーがグラスゴーに新拠点開設、90人の雇用創出

日立製作所を訪問

日立製作所を訪問

今回の使節団訪問における最大の成果として、日立エナジーがスコットランド最大の都市グラスゴーに「英国エンジニアリング・センター・オブ・エクセレンス」を新設することが発表されました。同拠点は約90人の高付加価値雇用を創出し、電力網の強化とエネルギー転換を支える重要な役割を担います。スコットランド企業庁による170万ポンドの支援のもと、総額300万ポンド超の投資が行われ、2026年初めの稼働を予定しています。

スコットランド政府 気候対策・エネルギー担当大臣のジリアン・マーティン氏は2025年9月19日(木)に日立製作所を訪問し、平井裕秀執行役常務・グローバル渉外統括本部長と会談しました。マーティン大臣は電力網強化が洋上風力拡大や再生可能エネルギーの経済的機会最大化に不可欠であることを強調し、今回の決定が「スコットランドがビジネスに開かれているという明確なメッセージ」であると述べました。日立エナジーは世界90カ国以上で電力システム事業を展開しており、英国のエネルギー転換において重要なパートナーとして位置づけられています。



大阪・関西万博と東京でのショーケースイベント

使節団は東京および大阪・関西万博の英国パビリオンで「スコットランド洋上風力発電ショーケース」を開催し、浮体式洋上風力の最新技術、環境影響評価、係留・アンカーシステム、運用・保守分野におけるスコットランドの知見を発信しました。大阪・関西万博では、今年6月にスコットランドでの取材を行ったテレビ朝日の山口豊アナウンサーもオンラインで参加し、スコットランドの洋上風力やコミュニティと共存する再生可能エネルギーの先進的な事例を紹介しました。

WIND EXPOでは特別講演を実施し、スコットランドの大胆な洋上風力ロードマップと、競争力のあるサプライチェーン形成に向けた戦略的投資計画を紹介しました。スコットランドは世界初の浮体式風力発電所を2017年に稼働させた実績を持ち、現在も世界最大規模の浮体式プロジェクトを有しています。世界の海上風力資源の80%は水深60m以上の場所にあり、既存の着床式では建設できない海域において浮体式技術が重要な役割を果たすと見られています。



日本企業との協力関係とパートナーシップ

マーティン大臣は、住友電工や丸紅、東京電力をはじめとする日本企業の投資がすでにスコットランドの洋上風力産業を大きく強化していると述べました。使節団は多数の日本企業と面談を行い、共同研究・技術協力、長期的なパートナーシップ構築の基盤を築きました。

  • 浮体式洋上風力の技術協力と共同研究の推進
  • 環境影響評価手法の知識共有
  • 係留・アンカーシステムの技術開発
  • 運用・保守分野における人材交流

スコットランドは石油・ガス産業で培った深海技術の知見を浮体式洋上風力に応用しており、日本の洋上風力開発においても有用な経験とノウハウを提供できる立場にあります。両国の人材交流や知識共有を通じて、より早いペースでネットゼロ実現に近づくことができると期待されています。



スコットランドの洋上風力産業の実績

スコットランドは2017年にノルウェーのStatoil社(現Equinor)が開発した「Hywind Scotland Floating Wind Farm」を稼働させ、世界初の商用浮体式洋上風力発電所として実績を積んでいます。同発電所は出力6MWのタービン5基で合計30MWの発電能力を持ち、英国の一般世帯約2万世帯分の年間電力消費量に相当する発電を行っています。

スコットランド政府は2045年までに再生可能または低炭素の水素を25GW生産する目標を掲げており、洋上風力はその中核を担うエネルギー源として位置づけられています。マーティン大臣は「日本と同じように、スコットランドもクリーンエネルギーの未来に全力で取り組んでいます。この一世一代の機会を逃さず、民間投資を呼び込みながらサプライチェーンと港湾インフラを整備し、規模拡大を図っています」と述べました。浮体式洋上風力は水深800mまでの海域に設置可能であり、日本の周辺海域のような深海域での開発に適しています。



大阪・関西万博「Scotland Day」プログラム全3回が終了

大阪・関西万博「Scotland Day」プログラム全3回が終了

スコットランド政府および駐日英国大使館 スコットランド国際開発庁は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)期間中に「Scotland Day」を全3回にわたり開催しました。2025年4月17日(木)の「ゲームおよび消費者産業」、6月26日(木)の「ヘルステック」、そして9月18日(水)の「洋上風力産業」をテーマとしたイベントを通じて、多角的な交流と具体的な協業のきっかけが築かれました。

4月のゲーミングイベントでは、世界的人気ゲーム「マインクラフト」の開発に関わった4Jスタジオなどスコットランドのゲーム企業が日本の業界関係者約80人と交流し、国際分業の重要性が議論されました。6月のヘルステックイベントでは医療技術分野での協力が促進され、9月の洋上風力イベントで本プログラムは全て無事に終了しました。これらの取り組みは、スコットランドが洋上風力を核としたエネルギー転換のグローバルリーダーとしての地位を強化するとともに、スコットランドと日本の産業界が共に成長するための長期的な協力関係を築く契機となりました。



日英エネルギー協力が加速、サプライチェーンと港湾インフラに投資

今回の使節団訪問を通じ、スコットランドにおけるエネルギー移行を後押しする新たな海外直接投資(FDI)と雇用創出が発表されました。これにより、スコットランドの浮体式洋上風力関連のサプライチェーンや港湾インフラ開発がさらに加速し、スコットランドと日本の協力が実質的な成果として結実したことを示しています。日立エナジーは既に英国内で複数のHVDC(高圧直流送電)プロジェクトを受注しており、スコットランドの大規模再生可能エネルギー統合において重要な役割を担っています。

マーティン大臣は「協力こそが、世界的なエネルギー転換の鍵です」と強調し、両国の人材交流や知識共有を通じてネットゼロ実現を加速させる方針を示しました。日本の深海域における洋上風力開発は今後数十年で大きく拡大すると予測されており、スコットランドの浮体式技術と経験は日本のエネルギー転換において貴重な資産となります。今回の使節団訪問は、単なる技術交流にとどまらず、具体的な投資と雇用創出を伴う実質的な協力関係の構築につながりました。

 

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