『風が吹くとき』:核戦争の恐怖を描いた英国製アニメのリバイバル上映が決定

風が吹くとき 場面写真01

クリストファー・ノーラン監督も観ていたという、核戦争の脅威を描いた英国製アニメーション『風が吹くとき』が、大島渚監督による日本語(吹替)版で8月2日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開されます。この作品は、世界的なセンセーションを巻き起こし、1987年のアヌシー国際アニメーション映画祭で最優秀作品賞を受賞。このたび日本版ポスターと場面写真が公開となりました。

『風が吹くとき』の歴史と現代

風が吹くとき 場面写真02

アニメーション映画『風が吹くとき』は、1986年に英国で制作され、翌1987年に日本でも劇場公開されました。『スノーマン』や『さむがりやのサンタ』で知られる作家・イラストレーターのレイモンド・ブリッグズが、マンガのようなコマ割りスタイルで描いた同名の原作『風が吹くとき』(あすなろ書房刊)を、自らも長崎に住む親戚を原爆で亡くした日系アメリカ人のジミー・T・ムラカミ(『スノーマン』)が監督しました。

風が吹くとき 場面写真03

本作はしかし、ブリッグズの愛らしいキャラクターと温かみのあるタッチからは想像がつかないほど、核戦争の恐怖を強く訴える物語でもあります。日本での初公開から37年を経た現在でも、SNSでは「当時鑑賞してトラウマになった」というファンも少なくありません。ブリッグズはなぜ核の恐怖を描いたのか? 原作が描かれた1982年当時は、米国とソ連(現ロシア)が数万発もの核兵器を蓄積し、軍拡競争を繰り広げた冷戦時代の真っ只中でした。

風が吹くとき 場面写真04

『風が吹くとき』が蘇る

風が吹くとき 場面写真05

図らずも、今年2024年はアカデミー賞7部門を受賞した『オッペンハイマー』も日本で公開されました。1970年生まれのクリストファー・ノーラン監督は、NHKのインタビューで、オッペンハイマーという人物を映画の題材に選んだ理由を問われると「私が育った1980年代の英国は核兵器や核の拡散に対する恐怖感に包まれていたんです」と語り、ハリウッド・リポーター誌のインタビューでは子供時代に本作を観ていたとも話しています。

風が吹くとき 場面写真06

これはブリッグズが『風が吹くとき』を描いた時期とも重なり、いかに当時、多くの人々が核戦争の脅威を身近に感じていたかが分かります。国際情勢が大きく揺らぎ、再びリアリティを増す核戦争の脅威について警鐘を鳴らすべく、唯一の被爆国であるこの日本でも『風が吹くとき』が蘇ります。

新たな日本版ポスター

風が吹くとき 日本版ポスター

このたび公開された新しい日本版ポスターは、ジムとヒルダ夫婦をメインに、背景に戦争の足音を感じさせる爆撃機と、戦争を伝えるラジオがシンプルにレイアウトされたものに。ポスターには「100年後も残したい歴史的名作」、チラシ裏面には「37年の時を経て、あのときの風はまだ吹いている」というコピーも掲げられました。

風が吹くとき チラシ裏面

映画のテーマとギャップ

風が吹くとき 場面写真07

青と黄のツートーンの背景カラーは、劇中の場面からインスパイアされたもので、本作がもつ様々な二面性──ほのぼのとした作画にも関わらず核戦争の恐怖を伝えるというテーマとのギャップの大きさ、映画前半部で描かれる夫婦のありふれた幸せな日常と後半部で描かれる原爆の被害の恐ろしさ──を伝えるものとなっています。

公開された場面写真

風が吹くとき 場面写真09

今回、新たに7点の場面写真も解禁されました。原作には描かれていないシーンもありますが、これは自らも長崎に住む親戚を原爆で亡くした日系アメリカ人のジミー・T・ムラカミ(『スノーマン』)監督の演出によるものです。

風が吹くとき 場面写真10

風が吹くとき 場面写真11

「人間性を奪う」戦争の本質

風が吹くとき 場面写真08

特に、妻ヒルダが見る白昼夢の描写では、原作では夫ジムの「良き妻」という印象が強かった彼女が、実は繊細で想像力が豊かな人物であることが描かれます。このエピソードによって、「人間性を奪う」戦争の本質が明確に感じられます。

オリジナル・サウンドトラックの再発

風が吹くとき サウンドトラック

また、本作では音楽プロデューサーを元ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズが手がけ、主題歌をデヴィッド・ボウイが歌っていることでも大きな話題を呼びましたが、オリジナル・サウンドトラックも期間限定のお得な価格にて今年3月より再発されています。ストラングラーズのヒュー・コーンウェル、ジェネシス、ポール・ハードキャッスル、スクイーズも参加した全15曲収録の「心に残る名盤」として、こちらも映画と併せて聴いてみてはいかがでしょうか。

Story

英国の片田舎で暮らすジムとヒルダの平凡な夫婦。二度の世界大戦をくぐり抜け、子供を育てあげ今は老境に差し掛かったふたり。ある日ラジオから、新たな世界戦争が起こり核爆弾が落ちてくる、という知らせを聞く。ジムは政府のパンフレットに従ってシェルターを作り始める。先の戦争体験が去来し、ふたりは他愛のない愚痴を交わしながら備える……、そして、その時はやってきた。核爆弾が炸裂し、凄まじい熱と風が吹きすさぶ。すべてが瓦礫と化した中で、生き延びたふたりは再び政府の教えにしたがってシェルターでの生活を始めるのだが……。

風が吹くとき

監督
ジミー・T・ムラカミ
日本語版監督
大島渚
原作・脚本
レイモンド・ブリッグズ
製作
ジョン・コーツ
製作総指揮
イエイン・ハーヴェイ
音楽
ロジャー・ウォーターズ
声の出演(カッコ内は日本語吹替版)
ジム : ジョン・ミルズ(森繁久彌)、ヒルダ : ペギー・アシュクロフト(加藤治子)、ロン(田中秀幸)、アナウンサー(高井正憲)
作品情報
1986年 / イギリス映画 / 英語 / 原題 : When the Wind Blows
公開日
8月2日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
配給
チャイルド・フィルム

※英語・字幕版の上映は劇場では行われません

©︎ MCMLXXXVI

Link

https://child-film.com/kazega_fukutoki/

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