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【2025年最新】イングリッシュスパークリングワイン完全ガイド&おすすめ8銘柄
イングリッシュワイン、特にイングリッシュスパークリングワインが世界で注目を集めています。2025年最新の業界データによると、英国ワイン産業は10年で123%の成長を遂げ、日本は第2位の輸出市場に急浮上。女性として初めて、またワイン製造者や販売業者以外で初めてマスター・オブ・ワイン(MW)の称号を与えられたジャンシス・ロビンソン氏が来日し、2025年4月に駐日英国大使館で開催されたその魅力を伝えるイベントで紹介された英国ワインの最新動向をまとめてお伝えします。
驚異的な成長を遂げる英国ワイン産業
かつて「イギリスでワイン?」と驚かれたのは今や昔の話です。英国ワイン産業は今、農業分野で最も急成長している分野のひとつとなっています。2023年のデータによると、イギリスには1,030のヴィンヤード(前年から87増加)と221のワイナリー(前年から12増加)があり、ブドウ栽培面積は4,209ヘクタールに達し、過去10年で123%増加しました。
生産量も飛躍的に伸び、2023年には約2,160万本を生産し、これは2022年から77%の増加となります。販売も好調で、特にイングリッシュスパークリングワインの販売は2018年から2023年の間に187%増加、スティルワイン(非発泡性ワイン)も117%増加しています。
品質向上の証拠:国際コンクールでの評価
英国ワインの品質向上は、国際的なワインコンクールでの受賞数にも表れています。デカンター・ワールド・ワイン・アワードにおけるイングリッシュワインの受賞数は2010年から2024年にかけて着実に増加し、特にゴールドやプラチナなどの上位メダルの獲得数が増えているのが特徴的です。
このようなコンクールでの成功は、イギリスが単なる新興産地ではなく、世界有数のワイン産地として認められつつあることを示しています。
イングリッシュワインが優れている理由
ケント州アップルドアにあるガズボーンのヴィンヤード
イングリッシュワインの品質向上には、皮肉にも気候変動が貢献しています。温暖化によって、以前は極寒だったイギリス南部が、ピノ・ノワールやシャルドネなどの高級ブドウ品種の栽培に適した冷涼気候へと変化したのです。
気候変動がもたらした好条件
ケント州トンブリッジにあるバルフォアのヴィンヤード
イギリスのワイン産地は北緯49~61度に位置し、ブドウ栽培の適正とされる北緯30~50度を超えていますが、メキシコ暖流や温暖化の影響で寒さが緩和され、ブドウ栽培が可能になっています。また、ブドウの生育期の日照時間が長いため、ゆっくりと成熟し、複雑なアロマと風味を持つワインが生産できるのも特徴です。
シャンパーニュと共通する土壌特性
イングリッシュワインの高品質を支えるもうひとつの要因は土壌です。イングランド南部のケント州、イースト・サセックス州、ウェスト・サセックス州などの主要ワイン産地では、シャンパーニュ地方と同じ白亜質(チョーク質)土壌が広がっています。
この土壌がワインに豊かなミネラル感を与え、特に高品質なスパークリングワイン生産に適しているのです。このテロワールの類似性に着目し、テタンジェやポメリーなどのシャンパーニュメゾンもイギリスに進出しています。
伝統的製法へのこだわり
イングリッシュスパークリングワインの91%は、シャンパーニュと同じ伝統的瓶内二次発酵方式(トラディショナル方式)で造られています。この製法は、冷涼産地のブドウから造られたワインに特に適しています。
冷涼産地では果汁中の糖度が低く酸が高いため、瓶内二次発酵方式に向いています。高い酸はワインの微生物学的安定性を高め、長期熟成に耐えられるようになるのです。その結果、複雑さと深みを備えた高品質なスパークリングワインが生まれます。
日本市場での人気の秘密
日本が第2位の輸出市場に
英国ワインの輸出は総売上の約8%を占め、主な輸出先はノルウェー、日本、アメリカ、スウェーデン、フィンランドとなっています。注目すべきは、日本が2024年にアメリカを抜いて第2位の輸出市場になったことです。
この背景には、日本の消費者が高品質なスパークリングワインに対する関心を高めていることや、日英間の経済連携協定(EPA)によるワイン輸入の関税撤廃などが影響していると考えられます。
日本食との相性の良さ
イングリッシュワインが日本で人気を集めている理由のひとつに、和食との相性の良さがあります。繊細なアロマと引き締まった酸味、爽やかさを特徴とするイングリッシュスパークリングワインは、刺身や寿司、天ぷらなどの繊細な和食とみごとに調和します。
特に、シーフードとの相性は抜群で、海老やスモークサーモンなどの料理との組み合わせは、多くの食通から高く評価されています。
2025年に注目すべきイングリッシュワイン
代表的なワイナリーとワイン
イングリッシュワインをこれから試してみたい方におすすめの代表的なワイナリーとワインをご紹介します。
バルフォア(Balfour)
ケント州のハッシュ・ヒース・エステートで造られるワイン。特にロゼスパークリングは、チェリーやフランボワーズ、黒コショウの香りが特徴で、ミネラル感のあるしっかりとしたふくよかなコクのある味わいで、オリエント急行やサヴォイホテルでも採用されている高級ワインです。2002年にリチャードとレスリー・バルフォア夫妻が創業し、元々はリンゴ栽培で知られていた400エーカーの広大な農園をワイン生産に転換。「ガーデン・オブ・イングランド」と呼ばれるケント州の肥沃な土壌と温暖な気候を活かして栽培しています。特に「バルフォア・ブリュット・ロゼ」は2004年の初リリース以来、英国ワインの代名詞的存在に。持続可能な農法にこだわり、自然環境との調和を重視した栽培を行っており、エステート内には訪問者向けのテイスティングルームやレストランも併設。英国の高級ホテルやミシュラン星付きレストランでも提供される洗練された味わいが魅力です。
ブラックチョーク(Black Chalk)
ブラックチョークはハンプシャーのテストバレーに位置し、スパークリングワインとスティルワインを自社醸造所で丹精込めて造っているワイナリー。創業者のジェイコブ・リードリーはシャンパーニュの模倣ではなく、独自の個性を持つワイン造りを目指している。2018年にはハッティングレイを離れ、自身のワイナリーを設立。フルーティでバランスの良い「クラシック」シリーズは鮮やかな果実味と爽やかな酸味が特徴です。リードリーは元投資銀行家でしたが、英国ワインの可能性に魅了され、醸造家としてのキャリアをスタート。テストバレーの独特な微気候と粘土質・チョーク質の土壌を活かし、シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエに加え、英国ではあまり見られないピノ・プレコースも栽培。少量生産にこだわり、すべてのブドウを手摘みで収穫し、繊細な圧搾と樽発酵を組み合わせた独自の製法で複雑な風味を引き出しています。2020年に醸造施設を建設、テイスティングルームを2022年にオープンし、訪問者にワイン造りの哲学を直接伝える場を設けています。
ガズボーン(Gusbourne)
2004年にケント州で創業し、ヴィンテージワインに特化したワイナリー。厚みのあるミネラル感が魅力で、2012年のロンドン五輪開会パーティでも提供されました。「ブリュット・リザーヴ」は複雑さと長い余韻が楽しめます。創業者のアンドリュー・ウィーバーは元整形外科医という異色の経歴を持ち、精密さと完璧さを追求する姿勢をワイン造りにも反映。ケント州とウェストサセックス州に合計60ヘクタール以上のブドウ畑を所有し、シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエを中心に栽培しています。すべてのワインは単一年のブドウのみを使用する「ヴィンテージ」にこだわり、各年の特徴を忠実に表現。冷涼な気候と石灰質土壌から生まれるワインは、鮮やかな酸味とミネラル感が特徴で、世界的なワインコンペティションで数々の金賞を受賞しています。
ハンブルドン(Hambledon)
1952年にハンプシャー州に設立された英国最古の商業的ワイナリー。豊富なチョーク質土壌と最新鋭の醸造設備、長期熟成により高品質なワインを生産しています。「クラシック・キュヴェ」は白い花やレモン、アプリコットの香りと心地よい酸味が特徴です。創業者のガイ・ソーリー卿はフランス滞在中にワイン造りに魅了され、イギリスでの商業的ワイン生産の先駆けとなりました。2011年には金融家のイアン・ケルレットが所有権を取得し、大規模な投資によって最新の設備を導入。シャンパーニュ地方と同じチョーク質の土壌を活かし、フランスから招いた醸造家エルヴェ・ジェスタンの指導のもと、伝統的な製法で高品質なスパークリングワインを生産。最低35か月のシュール・リー熟成を経て複雑な風味が育まれています。
ハッティングレイ(Hattingley)
ハッティングレイ・バレーはハンプシャーにある家族経営のワイナリーで、環境に配慮した最新設備を備えた醸造所を2010年に完成。ソーラーパワーを採用した英国初のワイナリーとしても知られています。繊細な白い果実の風味と複雑な長い余韻が特徴のプレミアムなイングリッシュスパークリングワインを生産しており、「クラシック・リザーブ」は瓶内熟成由来のヌガーや焼き立てのブリオッシュのようなクリーミーな風味と生き生きとした酸味が楽しめます。創業者のサイモン・ロビンソンは2008年にブドウ栽培を始め、現在では約24ヘクタールの自社畑を所有。醸造責任者のエマ・ライスは、革新的な手法と伝統的な製法を融合させた独自のスタイルを確立しました。特に部分的な樽発酵と熟成を取り入れた手法は、ハッティングレイの特徴となっています。環境への配慮も徹底しており、太陽光発電システムを導入し、持続可能な農法を実践。2016年には「ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、以来、国際的なワインコンペティションで数々の賞を獲得しています。
ナイティンバー(Nyetimber)
1988年にウエスト・サセックス州に設立された英国スパークリングワインの先駆者的存在。国際的なワイン大会で数々の賞を受賞しています。特に「クラシック・キュヴェ・マルチヴィンテージ」は、シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエをブレンドし、白い花のようなアロマと奥深い味わいが特徴です。同ワイナリーは南イングランドの丘陵地帯に広大なブドウ畑を所有し、伝統的なシャンパーニュ製法を忠実に守りながらも、イギリス特有の冷涼な気候を活かした独自のスタイルを確立。長期熟成によって生まれる複雑な風味と繊細な泡立ちは、世界中のワイン愛好家から高い評価を受けています。また、サステナビリティにも力を入れており、環境に配慮した栽培方法を採用。イギリス王室の公式行事でも提供される名誉を得ており、英国ワインの品質向上に大きく貢献しています。
ラスフィニー(Rathfinny)
ラスフィニーはイーストサセックスにある家族経営のワインエステートで、2010年にマークとサラ・ドライバー夫妻によって設立。B Corp認証を取得し、伝統的な製法で低介入のヴィンテージスパークリングワインを生産しています。南ダウンズのテロワールを反映したワインを造り、シャンパーニュ地方と同様の粘土質ローム土壌と白亜質の土地が特徴的。海に近い立地が霜のリスクを軽減し、温暖な気候と長い夏の日照が完璧な熟成をもたらします。元ヘッジファンドマネージャーのマーク・ドライバーが故郷に戻り、600エーカーの農地を購入したことから始まったプロジェクトは、現在では英国最大級のワイナリーに成長。最新の設備と伝統的な製法を組み合わせたワイン造りを実践しています。持続可能性にも力を入れており、エステート内の生物多様性保全や再生可能エネルギーの活用に取り組んでいます。
ローバック(Roebuck)
ローバック・エステーツはウェストサセックスのペットワース近くに位置し、2013年にマイク・スミスとジョン・ボールによって設立されたワイナリー。持続可能なワイン造りに注力し、「持続可能なグレートブリテンワイン」認証制度の創設メンバーでもあります。手摘みのブドウを使い、ブルゴーニュ産の古樽で発酵させた複雑で個性的な瓶内二次発酵スパークリングワインを生産。最低36か月の瓶内熟成を経て、最適な飲み頃になってから出荷されます。創業者のふたりは、ワイン造りの夢を追求するために南ダウンズに9ヘクタールの土地を購入。南向きの斜面と石灰質土壌で、化学的介入を最小限に抑えた栽培を実践し、シャルドネとピノ種に理想的な環境づくりを行っています。特に「クラシック・キュヴェ」は、熟した果実の風味と複雑なトースト香、ミネラル感が絶妙に調和した逸品で、英国内外のワイン評論家から高い評価を得ています。また、エステート内では羊の放牧も行い、自然な草刈りと土壌の肥沃化を促進する循環型農業を実践しています。
多様化する品種と特徴
イギリスでは90種類以上のブドウ品種が栽培されていますが、主要品種はシャルドネ(32%)、ピノ・ノワール(27%)、ピノ・ムニエ(9%)、バッカス(8%)、セイヴァル・ブラン(3%)となっています。
特に近年は、シャンパーニュでも使用されるシャルドネやピノ・ノワールが主流となっています。これらの品種は早熟性があり冷涼気候に適していることから、高品質なスパークリングワイン生産に向いています。
また、バッカスなどの品種を使ったスティルワインも人気を集めており、白ワインが66%、ロゼが20%、赤ワインが13%を占めています。
まとめ:イングリッシュワインを飲むべき5つの理由
英国ワイン産業の急速な発展と品質向上を踏まえ、2025年にイングリッシュワインを飲むべき理由をまとめます:
1. 品質の高さ:国際コンクールでの評価も高く、特にイングリッシュスパークリングワインはシャンパーニュに匹敵する品質を誇ります。
2. 独自のテロワール:気候変動と土壌条件が生み出す、繊細なアロマと引き締まった酸味、爽やかさが特徴です。
3. 日本食との相性:繊細な和食と見事に調和する風味特性を持っています。
4. 多様性:スパークリングワインを中心に、個性豊かな白ワインやロゼも登場しています。
5. 新しい発見:まだ日本では比較的馴染みが薄いため、ワイン愛好家にとって新たな発見となります。
イギリスのワイン産業はこれからも発展を続けると予測されており、品質と多様性はさらに向上していくでしょう。2025年は、イングリッシュワイン、特にイングリッシュスパークリングワインを試してみる絶好の機会です。
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