ロイヤルメール、チェコの大富豪による買収が承認:500年の歴史に新章

ロイヤルメール

英国政府は2024年12月16日、チェコの大富豪ダニエル・クレティンスキー氏率いるEPグループによるロイヤルメールの親会社買収を承認しました。36億ポンド(約7,000億円)規模のこの取引により、500年以上の歴史を持つロイヤルメールが初めて外国資本の所有下に入ります。




買収承認の背景と条件

ロイヤルメールの親会社であるインターナショナル・ディストリビューション・サービシズ(IDS)は、2024年5月にEPグループからの買収提案を受け入れました。しかし、ロイヤルメールが英国の重要なインフラであることから、国家安全保障投資法に基づく政府の審査が必要でした。

英国政府は慎重な検討の末、以下の条件を付けて買収を承認しました:

1. ユニバーサルサービス義務(USO)の維持
2. 政府による「黄金株」の保有
3. 本社と税務居住地の英国内維持(5年間)
4. ロイヤルメールブランドの継続使用

特に重要なのは、USOの維持です。これにより、週6日の手紙配達と週5日の小包配達が保証されます。クレティンスキー氏は「生きている限り、どのような形であれUSOを維持する」と約束しています。

労働組合との合意

買収承認に先立ち、EPグループは主要労働組合とも原則合意に達しました。その内容には、労働者への配当金10%の分配や、月例の労働者委員会の設置などが含まれています。これらの措置により、従業員の権利と利益が保護されることが期待されます。



ロイヤルメールの現状と課題

ロイヤルメールは近年、手紙の配達量減少や競争激化により、業績が低迷しています。2023年には、配達基準未達成により1,050万ポンド(約20億円)の罰金を科されました。

デジタル化への対応

クレティンスキー氏は、オンライン配送の効率化のため、欧州で見られるような宅配ロッカーの拡大に大規模投資を計画しています。これにより、ロイヤルメールのデジタル時代への適応が期待されます。

財務状況の改善

IDSの2023年の利益は、ドイツとカナダの物流・小包事業によるものでした。ロイヤルメール部門の損失を相殺する形となっています。新たな所有者のもと、ロイヤルメールの財務状況改善が課題となります。

買収の影響と今後の展望

国民生活への影響

政府は「労働者と主要サービスを保護しつつ、ロイヤルメールが英国に本社を置き続けることで、雇用と税収を確保する」としています。しかし、サービスの質や料金への影響については、今後注視が必要です。

郵便サービスの未来

クレティンスキー氏は「ロイヤルメールを成功した現代的な郵便事業者にする」という使命を掲げています。デジタル化への対応や効率化を進めつつ、伝統的なサービスをどう維持していくかが鍵となります。



ロイヤルメールの外国資本による買収は、英国の郵便サービスの歴史に新たな1ページを刻むことになります。政府による条件付き承認により、当面のサービス維持は保証されましたが、急速に変化する郵便・物流市場でロイヤルメールがどのように進化していくのか、今後の動向に注目が集まります。

Cover Photo : David Wright

 

Link

https://www.royalmail.com/

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