【Interview】ジェイク・バグ『サタデイ・ナイト、サンデイ・モーニング』後編

jake bugg photo

ノッティンガム出身で2022年にデビュー10周年を迎えることになるジェイク・バグ。レコード会社を移籍しての4枚目となるニュー・アルバム『サタデイ・ナイト、サンデイ・モーニング』ではダンス・ミュージックにも接近し、新たな側面も打ち出しています。

British Culture in Japanでは飽くなき音楽的挑戦を続けるジェイク・バグにインタヴュー! 新作についでじっくりと話を聞いた後編になります。

 

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──ニュー・アルバムは移籍第1弾となり、ジェイク・バグ第2章にふさわしい野心的なイメージチェンジになったと思います。一方で、ダンス・ミュージックを取り入れようが、あなたの芯となっているギター・サウンドの強度はまったく減衰していないように感じました。

ぼくもそう思うよ。やっぱり、ギター・サウンドはぼくの最大の武器だと思うし、ぼく自身ギター奏者として見られたい、というのがあるからね。

ギター・プレイヤーとしてのぼくは、このアルバムで少し成長したんじゃないかと思ってるんだ。若い頃は、それこそいつでもギターソロを弾きたくて、至るところにギター・ソロをねじ込んでいたところがあったと思うけど、このアルバムでは入れるべき場所に、入れるべきタイミングでより効果的にギター・パートを入れられたと思う。

そういう意味では、ぼくのギター・サウンドがとても正しいやり方で発揮されたアルバムだと自負しているよ。

──ソングライティング、レコーディングで心がけたことはなんですか?

難しい質問だね……というのも、曲作りっていうのは本当にナマモノで、曲というのは書き始めると、生命を吹き込まれて自我を持ち出すものだと思うから。

ひとり歩きを始めるから、この曲はどうなっていくのかを見守りながら、ぼく自身が振り回されたり、“この曲はどういう意味なんだろう?”って考えたりしながら、時にはパズルのピースをひとつひとつ組み合わせるように作り上げていく感じなんだ。

でも、曲そのものが自我や生命を持つことは良いことだと思っているよ。その上で、その曲というのはぼく自身を体現するものだし、聴き手はその曲をぼくの分身と捉えているわけだから、やはりぼくらしさというものがなければいけないしね。そこの駆け引きが本当に難しいなと感じるよ。

──曲を書き始めた時点では、こういう曲にしたい、という明確なヴィジョンがあるのでしょうか? 今回のアルバムの中で、思いもよらなかったような代わり映えをした曲はありましたか?

最初に想定していた曲とは全然違う仕上がりになることはもちろんあるよ。曲作りもそうだし、そこにプロデュースが加わると、どんどん進化していくものだから。

曲を書くことや、レコーディング、プロデュースは、1日に1曲ずつ仕上げていくという感じではないからね。その曲から離れて、他の曲に取りかかってみて、また前の曲に戻って……というふうに。

そのやり方が、曲を面白くする最良の方法だとも思うんだ。色々なことを試してみて、曲作り自体からインスピレーションを受けて、それをまた曲に落とし込んでいくうちに、どんどん進化して面白いものになっていくし、自分の納得のいく曲に仕上げることができるからね。

──今回のアルバムは、特にそうした実験的な作業が多かったのでしょうか?

そう思う。特に2枚目と4枚目のアルバムは、スタジオ内にバンドを集めて、ほとんどの曲をライヴ録音したからね。そういうやり方ももちろん好きなんだ。とてもエキサイティングな経験だったよ。でも、もっと違うやり方でもレコードを作ってみたいと思って、今回はさらに緻密に作り上げていった感じだね。

──いちばんの大きな違いというのはどんなところだったのでしょう?

ライヴ・バンドで演奏する時には魔法が起こることもあって、奇跡的に素晴らしいテイクが録れることもあるし、その時はすごく興奮するよ。

一方で、今回のアルバムのようなモダンなアプローチで制作したレコードについても、技術の進化に伴って色々なことができるし、そこでも自分でも想像していなかったようなことが可能になったり、まったく期待していなかったような奇跡が起こることもある。どちらにも良さがあって、ぼくはどちらもエキサイティングだと思う。

──ノーザン・ソウル、ヴィンテージ・ソウルのような「メイビー・イッツ・トゥデイ」、アコースティック・ギターとスライド・ギターがあたたかい雰囲気を醸し出す「ホールド・タイト」のように、これまでの路線に近い曲もダンス・ミュージックの躍動感との対比で、さらに引き立つようになった印象を受けました。

ありがとう。そう言ってもらえるのはうれしいし、ぼくもその意見には賛成だよ。クラシックなジェイク・バグっぽい曲ばかりを詰め込んだアルバムだったら、“またか”という感じになってしまって、曲の良さ自体にそれほど注目してくれないかもしれない。

曲自体はとても良いのに、その良さを純粋に楽しんで貰えないというか。例えばダンス・ミュージックっぽいいつもと違ったアップビートな曲を織り交ぜることで、コントラストや曲それぞれのバランスがくっきりとして、本来のジェイク・バグっぽい曲もより輝きを増すように感じたよ。

──タイトルはあなたと同郷のアラン・シリトーの代表作から取られていると考えますが、どうしてここから取られたのでしょうか?

その通りだよ。理由については幾つかあるけど、そのひとつは、やっぱりアラン・シリトーがノッティンガムの出身だということ。何年もの間、自分の故郷で過ごす時間がなかったから、自分のルーツを忘れたくないという気持ちがあったんだ。それに、ぼくの故郷にいた頃の思い出をこのアルバムに込めたいという意味もあった。

あとは、このタイトルがアルバム全体の雰囲気を的確に表現していると思ったからなんだ。幾つかの曲は、サタデー・ナイトの喧騒の雰囲気を持っているし、残りの半分は二日酔いのサンデー・モーニングのような雰囲気を持っているからね。

アルバムのタイトルを決める時は、いつも本当に悩むよ。たったひとつのタイトルで、幾つもの条件を満たしていないといけないからね。アルバム全体のテーマや雰囲気にしてもそうだし、それを一言で表現するのはなかなか難しいね。

──小説は労働者階級の日常を描いていますが、今現在においてもその小説で描かれている世界は存在すると思いますか?

そうだね。特にこの国では、労働者階級やその文化というのは、社会全体にとって大きな割合を占めているし、労働者階級の日常というのは、今でも変わらず存在しているものだから。

──こうした人々の日常というのは、あなたにとって曲作りのテーマになったりするのでしょうか? それとも、もっとパーソナルなものなのでしょうか?

特に1枚目と2枚目のアルバムに関して言えば、ぼくがどんな風に育ってきたかというパーソナルな内容の曲が多かったと思うけど、それもやっぱり社会の一部としてどうやって過ごしてきたかということだから、社会や人々の日常というストーリーからは逸脱していないんじゃないかな。

その後、何年も音楽をやってきて、ぼくの日常も大きく様変わりした。音楽を作り始めた頃とはまったく違った生活を送っているし、考え方や感じ方、ものの視点も大きく変化したと思っているよ。

だから、今初期のような曲を書けと言われても書けないし、書こうとも思わない。今現在、ぼくが感じていること、ぼくが経験したことが曲に反映されているんだと思うね。

──そろそろキャリア10年を迎えようとしていますが、その10周年に向けて、今後の目標や達成したいことはありますか?

とにかく音楽を作り続けることかな。まだまだ道のりは長いからね。地道に音楽作りを続けて、その時の自分が作れる最高の音楽を世に送り出すことだけ考えていきたいと思っているよ。

──この新作を引っ提げてのツアーやライヴの計画はありますか?

もちろんだよ。早く日本にも行きたいと思っているよ。日本が、英国以外で訪れた最後の場所だから、日本に戻ってまたプレイする日を夢見ているんだ。

今の状況ではなかなか先行きが見えないところもあるけど、まずは国内のフェスティヴァルでプレイすることから始められればと思っているよ。

このアルバムには、きっと客席がダンスしてくれる曲もあるし、今までと違った感じになるかもしれないと思ってワクワクしている。もちろん、古い曲もたくさんやる予定だから、そのコントラストを楽しみたいね。

──ここからはあなたが現在住んでいるロンドンについて話を聞かせてください。日本の旅行者におすすめしたい、パブや公園などロンドンでお気に入りの場所は?

ぼくのロンドンのお薦めは、ホランド・パークかな。日本庭園もあって、あえてロンドンの日本庭園を訪ねてみるのもおもしろいんじゃないかな?

それと、日本には最高の寿司レストランがたくさんあるだろうから気に入ってもらえるかわからないけど、ぼくのおすすめはYashinというハイ・ストリート・ケンジントン駅近くのお寿司屋さんだね。すごくクオリティが高くて美味しいよ。日本の寿司には負けるかもしれないけど(笑)、ランチは特にお薦めだね。

エリアとしておもしろいのはやっぱりソーホーかな。ナイトライフも充実してるし、美味しいお店もたくさんあるし、ショッピングにも最適のエリアだからね。

──お気に入りのヴェニューは?

ぼくの地元のノッティンガムでおすすめなのは、ロック・シティだね。バンドの登竜門的な古くて伝統のあるヴェニューで、ここでプレイしたバンドは誰もが出世街道を歩んで行くことになるから、音楽ファンにとっては興味深い場所だと思うよ。

ロンドンだったら、アレクサンドラ・パレスがいいね。このヴェニューも、おもしろいバンドや注目のショーをたくさんやっているから、ロンドンに来たらぜひ足を運んでほしいな。

──ノッティンガム出身のあなたにとって、ロンドンとはどんな街ですか?

ロンドンは、ノッティンガム出身のぼくにとっては、常に目まぐるしくて混雑している印象だけど、色々な人種やカルチャーが混ざり合っているところがとても好きなんだ。

それに、いつも何かが起こっていて、面白いことに出会える街だと思う。若い頃は便利だけどついていけないようなところも確かにあったけど、何年も過ごしているうちに、色々なことが取捨選択できるようになって、自分なりの楽しみ方ができるようになってきたかな。

ロンドンには色々な人がいて、色々な人に出会える。その幅広さや自分らしく振る舞えるところが、たくさんの人を惹きつけるんだと思う。

──ロンドンで音楽作りをすることが、あなたの曲作りに影響を与えていると思いますか?

いったんツアーに出かけるとなかなかロンドンをゆったりと満喫することはできないけど、さっきも言ったように、環境が音楽作りに与える影響は多大なものだと思うから、きっと自分の音楽にも投影されているんじゃないかな。

──ありがとうございました。最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

もちろん。ハロー、エヴリバディ。またみんなに日本で会える日が待ちきれない。早くこのアルバムを携えて日本でプレイできる日が来ることを祈っているよ。アリガトウゴザイマス。

インタヴュー・文 / 油納将志(British Culture in Japan) 通訳 / 長谷川友美

ジェイク・バグ
『サタデー・ナイト、サンデー・モーニング』

jake bugg『Saturday Night, Sunday Morning』

 

レーベル:
RCA
発売日:
Now on Sale

TRACK LIST

1.
オール・アイ・ニード
2.
キス・ライク・ザ・サン
3.
アバウト・ラスト・ナイト
4.
ダウンタウン
5.
ラビット・ホール
6.
ロスト
7.
シーン
8.
ロンリー・アワーズ
9.
メイビー・イッツ・トゥデイ
10.
スクリーミング
11.
ホールド・タイト

Link

https://www.sonymusic.co.jp/artist/jakebugg/

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