ロングボトム駐日英国大使、英国発祥の生理用品支援団体にエール

レッドボックスジャパン

ジュリア・ロングボトム駐日英国大使は、学校へ生理用品を寄付するNPO法人レッドボックスジャパンに向けた応援メッセージを発表しました。英国政府が2020年1月に開始したPeriod Product Scheme(生理用品支援制度)の経験を踏まえ、日本における月経に関する正しい知識の普及と生理用品へのアクセス保障を後押しする内容です。レッドボックスジャパンは2019年12月の創業以来、イギリス発祥の国際NGOとして全国の学校・地域・企業と協働し、すべての子どもが生理期間中も安心して学校生活を送れる環境づくりを進めています。




ロングボトム大使が強調する「月経を理由に教育機会を失うべきでない」理念

ジュリア・ロングボトム(Julia Longbottom CMG)

ジュリア・ロングボトム(Julia Longbottom CMG)駐日英国大使は2021年3月に着任し、イギリスを代表して東京に駐在する初の女性大使として活躍しています。今回のメッセージでロングボトム大使は「英国でも日本でも、月経についての理解を広げる必要がある」と述べ、未来を担う子どもたちに公平なチャンスを与えるために大人がサポートする重要性を訴えました。英国政府は「月経を理由に教育の機会を失うべきではない」との考えを掲げており、この理念が日本国内の取り組みにも通じることを強調しています。

大使は「日本でこうした障壁を取り除く活動をしているRed Box Japanの取り組みを応援しています」と明言し、月経に関する正しい知識と必要な製品へのアクセスが保障される社会を目指すよう呼びかけました。



英国Period Product Schemeが示す学校での生理用品無償提供モデル

英国政府が2020年1月20日に開始したPeriod Product Scheme(生理用品支援制度)は、イングランドの公立学校と16歳から19歳の教育機関に通う女子生徒が、必要なときに学校で無償の生理用品を受け取れる仕組みです。この制度は年齢9歳から10歳(Year 5)以上の女子学習者を対象とし、各教育機関には生理が始まっている可能性のある女子学習者数の35%を想定取得率として予算上限が配分されました。平均的な中等学校では年間約1,300ポンドの予算枠が設定され、最低でも16ポンドの予算により合理的な範囲の製品を発注できる体制が整えられています。

この制度は生理用品の提供だけでなく、学校での月経に関する話題のタブーをなくし、障壁を取り除くことにも貢献しています。英国では2025年から2026学年度も制度が継続され、イングランドの公立学校や教育省が資金提供する16歳から19歳の教育機関が対象です。Personnel Hygiene Services Limited(phs)との契約により、各学校は幅広い生理用品を選択・発注し、必要時に配送を受けられる仕組みが確立されています。製品を忘れた、購入できない、予期せず生理が始まったといった状況に対応し、生理が教育へのバリアとならないよう配慮されています。



レッドボックスジャパンの全国展開と学校との協働活動

NPO法人レッドボックスジャパンは、イギリス・ポーツマスで2017年3月に設立されたレッドボックスプロジェクトの日本支部として、2019年12月に設立されました。赤い箱に生理用品を詰めて学校に寄付することから「レッドボックス」と名付けられたこの活動は、イギリス全土からヨーロッパ諸国を中心に世界中へ広がっています。日本でも学校・地域・企業と協働しながら女性が活躍できる社会インフラ整備を推進しています。

レッドボックスジャパンは全国の小中高校へのレッドボックス提供と設置支援を実施しており、生理用品の設置方法は保健室で配布するかトイレの個室に設置するかなど各学校の方針に一任されています。沖縄県では教育庁保健体育課と連携し、2021年11月から2022年5月にかけて計4回の募集を通じて、離島を含む計200の小中高等学校やインターナショナルスクールへレッドボックスを導入しました。



英国の経験が日本の生理用品アクセス保障に与える示唆

英国Period Product Schemeは導入から5年以上が経過し、2023年から2024学年度までの管理情報が公開されるなど、制度の実効性と継続性が実証されています。一方で2022年3月時点の調査では、イングランドの学校や大学で生理用品が利用できないと回答した少女が3分の1に上るとの報告もあり、制度の周知と実施状況の改善が課題となっています。日本においても、自治体による生理用品の無償配布や学校での常備が進められていますが、全国一律の制度化には至っていません。

レッドボックスジャパンは学校への生理用品設置に加え、生理に関する啓発活動の支援や授業・探究学習との連携を積極的に行っています。ウェブサイトから学校が導入を申し込むと、担当者が折り返し連絡してスケジュールを相談し、生理用品を学校宛てに郵送する流れです。保健室やトイレに設置後の使用状況を把握することで、今後の予算化や自治体提案の参考材料として活用できる仕組みが整えられています。英国の先行事例と日本国内NPOの地道な活動が相互に影響し合い、月経タブーの撤廃と教育機会の平等化が進展することが期待されます。



月経理解の促進と子どもの公平な成長機会の確保へ

ロングボトム大使のメッセージは、生理用品へのアクセスが単なる衛生問題ではなく、教育を受ける権利と密接に関わる人権課題であることを示唆しています。英国政府が2020年にPeriod Product Schemeを開始した背景には、経済的理由や情報不足により生理用品を入手できず、学校を欠席したり授業に集中できなくなったりする生徒の存在がありました。日本でもコロナ禍を契機に生理の貧困が社会問題化し、自治体や民間団体による支援が広がりつつあります。レッドボックスジャパンは公式サイト、X(旧Twitter)、Instagram、TikTok、YouTube、LinkedInなど多様なプラットフォームで情報発信を行い、寄付金の受付と導入希望校の募集を続けています。

今回の大使メッセージは、英国と日本が共通して抱える月経に関する社会的障壁の除去に向けた国際連携の象徴といえます。英国では学校での生理用品無償提供が制度化され、2025年度も継続されていますが、日本では依然として自治体や民間主導の取り組みが中心です。ロングボトム大使が「私たち大人がどのようにサポートできるかを考えなければならない」と述べたように、子どもたちが生理を理由に教育機会を失わない社会の実現には、政府・自治体・企業・NPO・保護者それぞれの役割が求められています。レッドボックスジャパンの活動が英国大使の支持を得たことで、日本国内での認知拡大と制度化への機運が高まることが期待されます。

 

Link

https://redboxjapan.org/

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